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2020年3月の記事一覧
ギターゲット編最終章
青年は一人で気持ち良さそうに歌っていた。
目をつむりながら歌ってはいるものの、約1.5mほど隣に僕がそっと座ったことは気付いているだろう。
彼は歌い続ける。
夜の静寂の中聞こえるのは彼の声だけ。
僕は今日の朝に買ったギターをそっと取り出し、彼の奏でる声の音階を探した。
音階がわかり、彼のメロディをギターで追いかけると、目をつむりながら少し笑っていた。
ギターで徐々にリズムをつけていく。
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初めて降りた駅
どこからか聞こえてくる美しい歌声。
僕は引き返して声の方へ。
彼は広場のベンチで目をつむり、歌っていた。
伸びきった爪、ボロボロのサンダル、敗れたジーンズ。
若きホームレスと僕のセッションは、ごく自然と、始まっていた。