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四号車、暗黒専用車両
いつの間にか目の前に枯木が座っていた。
座るのだから本当の木ではないのだろう。だが細く奇妙に歪んだ灰色の体躯は人型でありながら明らかに人ではない。枯木と表現するのが最も良いように思えたのだ。
私は呆気に取られた。ほんの少し考えて、私はついさっきまで仕事帰りの電車の吊革に掴まっていたことを思い出した。夢か。そう思いたかったが、五感すべてに奇妙な現実感があった。そもそも私は、立ったまま眠るな
狩りは一途に恋の矢の如く
「鳥」は光を遮り、灰を落とした。街に死を振り撒いた。だから嫌われた。
街の人間は誰も「鳥」を見ようとしなかった。でも私は見ていた。ずっと見ていた。何故だか飽きなかった。
だからだろうか。その人が現れたとき、私ははじめ彼を鳥だと思ったのは。
「『鳥』が好きかい」
彼は私にそう声をかけた。だから人間だとわかった。
見てて飽きないの。
私はそう答えて彼を見た。彼が纏った長い襤褸は鳥の尾羽のように長く、そ
分かてコンクリートの新芽
俺はゴーストタウンのコンクリートジャングルにいた。
「人気のないビル街にいた」んじゃねえ。
文字通りだ。この町はビルが森みてぇに増えるしそこらには化け物もいる。
もっと正確に言おう。建物同士が互いを混ぜこぜにした「子ビル」を作って、そこいらに「入居者」を模倣して混ぜたキメラが居着いてやがるんだ!
だからここいらに踏み込むなら武器は必須だ。
キシャアア!
…BANG!
雄叫びのした方へ銃を撃った。
うろくずの姫はひとり心泣く
彼はどうしてもその女の声が欲しかったのだ。
彼は闇夜に紛れて、書院造の建物の中の女を見た。細い指も長い髪も彼は興味がなかった。彼は素晴らしい躯を持っていたからだ。魔女の元に足繁く通ってかき集めた。十の山に君臨する大猿の顔。百の社に祀られる蛇神の尾。千の話に語られる人喰い虎の腕と脚。万の配下を従える大化け狸の腹鼓。
だが声は。声だけは。
─
あの時魔女は確かに彼に言った。
彼女は…その化け物は、
ニセモノ竜騎兵と最後の晩餐
毒竜は怒り狂い、生贄の娘を投げ出すように吐き出した。
生贄は生贄でなかった。その右腕に噛みついた瞬間に分かった。こいつは人形だ。
人間共め!どんな小細工を使ったか知らないが、この俺を人形などで欺こうとは。彼は住処の泉がある洞窟の外を睨み付けた。光が差し込んでいる。
毒竜は娘に目もくれず、洞窟の外へと飛び出して行った。小賢しい人間共を引き裂いて、この俺を騙そうとしたことを後悔させてやる。
外の光は久
「魑魅魍魎」が読めないヨーカイ
爽やかな朝。私は学校の門をくぐる。
いつもの友達が挨拶してくる。白い肌、黒い肌様々な見た目だ。我が学園もグローバル化の波を受けているのか?そうではない。
次に来たのは真っ赤な肌のリンだった。背は180センチ、角も二本生えている。
「おっはー!ユリエ」
「おはよう!…どう、そろそろ馴染んできた?」
「うん、もう大変だった!急に身長でっかくなっちゃって服全部買い換えないといけないし。そもそもこいつのせ
安楽椅子のレジスタンス
「お願いします、どうか主人の死の真相を…」
目の前の婦人はさめざめと涙を流す。
「…婦人、お分かりでしょうが」
俺は棚の上に置かれた国家元首様の像にちらりと目をやる。
「『真相』なんて言葉は…その、よくない」
「あら…!ごめんなさい」
婦人は途端に青ざめた。慣れてない客はだいたいやってしまう。こういうときのフォローもプロの仕事だ。
「珈琲でも飲みますか?」
俺は国家支給品陳列棚へ向かうと、
「おっ
メカニカル・ピルグリム
「おい、そちらに何かあったか」
「いやダメだな…もうガラクタしか」
薄暗い部屋で、二人の泥棒が仕事をしていた。
泥棒。そう泥棒だ。だがそれを咎めるものはいない。とうの昔に滅んでいたからだ。
「こちらもダメだ…このバッテリーはもう切れてるし、この記憶媒体は旧式すぎる」
「おっ!こりゃまだ動きそうだぜ」
一人の男が映像端末を見つけて電源を入れる。
『ロボットの生み出す新しい社会。低燃費で人間に代わる新
マネー・竜ダリング!
「親分…どうしやす?これ」
昔々あるところに二人の男がいました。髭面の親分とのっぽの手下。職にあぶれて泥棒に身を落とし、今日は彼らの初仕事。夜の闇に紛れてどうにか街の貴族のお屋敷からこっそり宝を盗んだはいいのですが、彼らは大切なことを忘れていました。
「そうだよなぁ…売り払おうにもどこで売りゃいいんだ」
親分はたっぷり蓄えた髭を扱きながら考えていました。
目の前のお宝にはしっかり貴族の家紋が刻みつ