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分かてコンクリートの新芽

俺はゴーストタウンのコンクリートジャングルにいた。
「人気のないビル街にいた」んじゃねえ。
文字通りだ。この町はビルが森みてぇに増えるしそこらには化け物もいる。
もっと正確に言おう。建物同士が互いを混ぜこぜにした「子ビル」を作って、そこいらに「入居者」を模倣して混ぜたキメラが居着いてやがるんだ!
だからここいらに踏み込むなら武器は必須だ。


キシャアア!
…BANG!
雄叫びのした方へ銃を撃った。死体を見るとネコとヘビとのキメラだ。両方ともどこかのペットだろう。こんなのばかりだ。全く、地元だからって俺を派遣しやがって。この有様で土地勘なんて当てになる訳ねえだろ!酷い仕事だ。
だが今日は特に酷かった。
「シンジ…」
俺の名を呼ぶ声が聞こえた。直感的に分かった。
この「シンジ」は…俺のことだ。
畜生!
俺は反射的にそう叫んで声のした方向にしこたま銃弾を撃った。
声の主は死んだ。その姿を見た。
…俺の直感は当たってしまった。
ヒトとイヌのキメラだ。しかしヒトには見覚えがある。
その顔は確かに、俺の母親だった!
クソが、実家まで取り込まれやがったのか。偽物とはいえ最悪の気分だ!
だが次の瞬間、気分はもっと最悪になった。
「おいお前!…『シンジ』!…お前、俺だろ!」
俺はもう攻撃する気力もなかった。
…「シンジ」が飛んできた。そう、そいつはどこかのオウムと…俺とのキメラだった。
「良かったぜシンジ、流石に自分を撃つ気にはならねえよな」
俺は絶句した。勘弁してくれ。
「そんな顔するなよ!儲け話を持ってきてやったんだぜ!…元凶の建物を叩くのさ。そうすりゃ俺らは成仏、お前はボーナスがっぽり…」
何か言い返そうとした途端、ズシンと音がした。
そちらを見た。…鬼の銅像みたいな奴が立っている。デカい。あんなペットいる訳ねぇ。
「来やがったな。ありゃ特別なキメラだ。ってことは、奴らの直属だ」
ズシン。足音が響く。
「とりあえず走れ。さもなきゃ死ぬぜ?」

【続く】

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