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夏の終わりの同窓会。(ほしまるの夏。最終回)

高校2年の夏の終わりのこと。

ちょうどその年の春休みに、小学校5年・6年と同じクラスだった源基(げんき)くんが、お父さんの海外転勤先から帰国して
新学期から都立高校に編入したということは母から聞いていました。

ある日、夏休みの部活帰りに 乗り換え駅で地下鉄を待っていると、背の高い若い男性が近づいてきて呼び掛けました。

「ほしまる、やっぱり ほしまるだよね?
久しぶり!」

「おー!源基くんだよね?久しぶり!

帰ってたんだよね。 母から聞いてたよ。」

「おー、うちの母親からも聞いてた。

帰国してソッコーで おばさん(私の母)のところに電話したんだってね。」

源基くんのお母さんと私の母は PTA役員をきっかけに親しくなり、

中学から 海外に行った源基くんのお母さんとは時々連絡を取っていました。

「久しぶりに会おうぜ?

懐かしいし。積もる話もあるもんな。

みんなにも会いたい。」

「うん、じゃあ、また連絡するよ。」

そう話して 駅で別れました。

後日、相談して せっかくだから夏休み中に 同窓会をしようということになりました。

男子の連絡は、私と一緒に学級委員をしていた 幼なじみの潤にお願いして

私は女子に連絡をしました。

男子と女子合わせて25人くらいになったのかな。

その中には、小学校の頃、源基くんのことが好きだった 晶子ちゃんがいました。

潤と、あと卒業後も何度か会っていた

千明ちゃん そして 武くん 忠志くん 他手伝ってくれる子たちで 集まって

打ち合わせをしたり準備していました。

その頃に晶子ちゃんから 何度か電話がありました。

「ねぇ、ほしまるちゃん。

源基くんって、彼女 いるのかな?」

源基くんのことについては私自身はよく知らなかったけれど、

晶子ちゃんが気になって仕方ないんだな、ということだけは理解しました。

「その日、源基くんに告白しようと思う。」

同窓会の直前に 晶子ちゃんからは

そう言われていました。

告白しやすい流れを作ってほしい、とも。

さすがにみんなで会っている時には

それはむずかしいから

帰りとか 、またお店に行くことにしようか?とか そういう感じでしか言えません。

みんなで会おう、と言っている時に

自分のことしか考えていない 晶子ちゃんにも 多少私も内心イラっとはしていました。

夏休み中の小学校、懐かしい教室を借りての同窓会。

食べ物や飲み物を調達して

久しぶりに再会したクラスメイト達と話に花を咲かせました。

千明ちゃんと潤、そして 私は 時々場所を変えて、

まんべんなくみんなと話しました。

源基くんのお帰りなさい会 を兼ねていたので、源基くんもとても嬉しそうでした。

途中から駆けつけてくれた小学校5年・6年の担任の 湊川先生も 久しぶりに見る生徒との再会を喜んでいました。

「ほしまる、潤。ありがとうな。

先生、今日のこと忘れないよ。」

この時、先生がなんであんなに泣いていたのか、この時は理解できませんでした。

「あの時さ、もしかしたら 湊川、病気の兆候でもあったのかな。」

後になって 潤はそう話していたけれど。

実際のところはわかりません。

ただ、私も、クラスメイトも湊川先生に会ったのはこれが最期でした。

湊川先生が先に帰るのを見送って、

借りていた教室を片付け始めた頃。

晶子ちゃんが私のところに駆け寄りました。

「お願い。ほしまるちゃん。協力して。」

そばで見ていた千明ちゃんが、見かねてこう言いました。

「あのさ、晶ちゃん。
ほしまるちゃんになんでもお願いするのっておかしいよ。」

晶子ちゃんは、泣きそうな顔でした。

「...もう。何をすればいいの?」

「ほしまるちゃんから 誘って。」

もうここまで来ると、さすがに私も意味がわかりません。

そんなことは何も知らない 潤と 源基くんが

私のところに来ました。

「千明とほしまる、時間あったら、帰りに ファミレス行かない?
武と忠志たちはこれからバイトだって。」

「あ、うん。
あのさ。晶子ちゃんも行きたいって!」

「おぅ、晶子も来いよ。5人でお疲れ様会だな。」

そう言うと、潤も源基くんも、袋にごみを入れ始めていました。

「ここからは、晶子ちゃんが頑張らなきゃダメだよ。」

私は片付けに取りかかりました。

小学校を出て、みんなと別れ

潤と源基くん 晶子ちゃん そして千明ちゃんと私は ファミレスに向かいました。

何も話さない晶子ちゃん。

千明ちゃんは さすがにちょっとイライラしていました。

ファミレスに着いて席につくと

晶子ちゃんは さりげなく源基くんの隣をゲット。

さすがにここで 潤もなんとなく察したようでした。

「ほしまる。なんかあるの?」

「さぁね」

こそこそ話ながら 冷静を装って

メニューを見る私たち。

パフェにしようか?

うーん、でも 結構食べたもんね、飲み物かなぁ?

そんなことを話していると

晶子ちゃんがたまらずに 声を発しました。

「あ、あの、源基くん。」

「はい?」

「源基くん、彼女っているの?」

源基くんは 訳も分からずキョトンとしていました。

数秒の沈黙の後に、源基くんは平然と答えました。

「彼女って俺の?恋人?いるよ。」

しーん。

「えっ、え、いつから?」

「付き合うってなったのは、ほんの2ヶ月くらいだよ。

都立高校入ってからだし。」

さすがに私も知らなかったとはいえ

晶子ちゃんがかわいそうになり、

話に割り込みました。

「へー。源基くん それよりさ、お母さん元気?」

「うちの母親? あ、そういえば、こんど、彼女をは母親に合わせようと思ってさ。」

ヤバい、この流れでは晶子ちゃんをさらに傷つけてしまう...

晶子ちゃんを見ると下を向いていました。

そうだよね、これ以上は。

私がそう思っていると、潤が余計な一言を投じました。 

「源基ってさ、小学校の時 モテてたよね?

源基は誰が好きだったの?」

(おーまーえはー! なんで更に話を広げるかな?)

無言で潤を見ると、平然とした顔で笑っています。

「小学校の頃?俺?」

そう尋ねる源基くんに うんうん、と頷く潤。

気づくと、千明ちゃんも興味津々。

これで晶子ちゃんじゃなかったら最悪だ、

どうしよう?

そう思っていると。

「あ、俺、ほしまるのこと好きだったよ。
小学校の時の、昔のことだけどね。」

...はい?

思わず固まってしまいました。

この展開でまさか 私の名前。

しかもこの展開だとなんか私が 意図せず源基くんから 軽くフラれたみたいな気がするのは気のせい...?

そんなことを考えていると、また潤は笑いながらこう言いました。

「そうなのかー。

なんか今のタイミングで ほしまるが フラれたみたいになってるな。ウケる。」

千明ちゃんもつられて笑い、

晶子ちゃんも 笑っていました。

晶子ちゃんの思いは叶わなかったけれど、

帰りには晶子ちゃんから ありがとう、としきりに言われたのを覚えています。

あんなに私のことを笑っていた潤。
ずっと私にとっては  友だちでした。

そんな潤との思い出は また別の機会があれば。

(同級生、先生の名前はすべて仮名です)

☆☆☆

☆あとがき☆

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

第1回第2回第3回 に続き 今回 計4回に渡って
毎週月曜日に更新してきました。

noteを始めたばかりの頃は 毎日更新していたこともあったのに
マイペースに不定期更新することに慣れていると、
毎日更新したり、1日に幾つも記事を投稿する人は改めて本当にすごいな、と思います。

なかなか時間が取れず、タイムラインすらまともに追うこともできないでいますが。

これからも マイペースでも 更新して
そしてnoteに来たときには 少しずつ皆さんのところへうかがいますね。

まだ9月とは思えぬほど 肌寒い日が続いています。

体調を崩しやすい時期ですから、どうか皆さんお身体お大事にお過ごしください。

それでは、また。

☆ほしまる☆

☆☆☆

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