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STORY

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不慣れながらも 少しずつ書いていく予定の 小説(主に短編)のために作りました。
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#読んでくれてありがとう

大切な鏡 :夏ピリカ応募

大切な鏡 :夏ピリカ応募

「その鏡、すごい年季入ってるね。
それほど大切なものなの?」

会社内の化粧室でメイクを直していると、同期が興味津々で尋ねる。

「まぁ、そんなとこかな」

恵理子は、一言だけ答えると鏡を大切そうにポーチにしまった。

この鏡については秘密。

この同期に限らず、他の誰であっても話すつもりはない。

あの夏の夜の、恵理子の大切な思い出だからだ。



中学2年の夏だった。

恵理子は友人たち大勢

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今日も、わたしは あの人の帰りを待つ。

今日も、わたしは あの人の帰りを待つ。

あの人が、わたしの元を去ってから5年になる。

この町の風景も、そして この店も 大きく変わったことはない。

変わってしまったのは、わたし自身なんだろうか。

わたしはあの人のことが今でも大好きだ。

でも、その思い出は 少しずつぼんやりとしたものになっている気がするのだ。

いつかまた、あの人に会える日が来るんだろうか。

ただ、わたしはあの人の言葉を信じている。

「必ずまた戻ってくる。だか

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輝きを探し求めて。(2000字のドラマ)

輝きを探し求めて。(2000字のドラマ)

今日も、仕事は滞りなく 定時に終わった。

「お先に失礼します」

挨拶をして、友季子は足早にロッカーへ向かう。

心の中で お気に入りの曲を口ずさみながら、
素早く制服から 私服に着替えて、髪を軽く整える。

ようやく友季子にとって、仕事を終えたあとの ささやかな楽しみが始まろうとしていた。

友季子の家は、職場から20分ほどのアパートだ。
このまま帰れば、自分の部屋で のんびりできる。

しか

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