hoco

幻想文学、神話が好きです。 物語を作って紹介していきたいと思います。

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最近の記事

「ウグイス」 第1話

 あらすじ  あるウグイスの物語。ウグイスの歌が上手く歌えないウグイスがいる。  なぜ歌えないのか、という問いに答えを見出すべく探求する過程で、  内的な経験と自然の中で生きていくという厳しさを描いた話。 雪が溶け、沢の水かさが増えはじめた。ある日をさかいに水の流れがキラキラとまぶしく光輝くようになった。おひさまの光が暖かくなってきたのだ。 風はやわらかくなり、まるはだかだった木々は我さきにと一年で一番明るくてきれいな色の葉っぱで着飾りはじめる。やがて、はだかの木々が春色の

    • 「ウグイス」第2話

      トントントントンと小さな鼓動が、ウグイスの胸を何度も速く打っていた。 ウグイスは、何も考えず、そんな自分の心臓の音を聞いていた。 やがて、その音がゆっくりと静かになってくると、ウグイスはあたりを見渡し、そしてぶるりとひとつ震えた。ここがまだとても寒いことに気がついた。そして、なぜ自分がこんなところにいるのかが思い出されてくると、さっきまで速く動いていた心臓のあたりが、ぢくりと痛んだ。そして、そこからまるで血がにじみだしてくるように、熱く、胸がじわじわと苦しくなり、口の中には苦

      • 自然の中でいること

         自然という言葉から想起されるものは、人によって様々だろう。 私にとっては、自然とはこの世になくてはならない重要なものであり、また、最も畏れるものでもある。 自然から学ぶことは日々新しく、無駄がない。 けれども、正しく学ばなければ容赦なく身を危険にさらすことになる。 そんな自然の中で生きているものたちは、今や自然から大きく離れた私たちに今なお色あせない普遍の真理を見せてくれる。 自然は私たちを無言で受け入れ、声を上げることもなく搾取され、破壊され、縮小しているが、それが自然の

        • 「ウグイス」第20話

           子リスが目を覚ますと、すぐにウグイスがいないことに気がついた。出かけたのかな?子リスは、どんぐりの山をよじのぼると、巣穴から顔を出した。あたりは一面真っ白で、太陽の光がキラキラと反射していて、まぶしかった。冷たい風が、子リスの顔に吹きつけた。とてつもない寒さだった。 「お父さん!」子リスはさけんだ。リスは、子リスの横から顔を出し、外の寒さとまぶしさに顔をしかめた。 「これはなに?」子リスは聞いた。「雪だよ。ものすごい寒さだろう。これで世界は一度死ぬんだよ」リスは言った。 「

        「ウグイス」 第1話

          「ウグイス」第19話

          小さなウグイスなら、なんと言うだろう。その幸せな世界には、小さなウグイスは存在するのだろうか。ぼくは?ぼくはどうなんだろう。そもそも、いったい、誰がそんな世界にいることができるのだろう? ウグイスは、それからじっとそこにとどまり、そこから少しも動かずにいた。とても、とても長い時間がそれから過ぎ去っていった。その間に、何もかもが遠ざかっていった。見上げれば見つけられた、星も、月も、もうとっくにいなくなってしまった。ウグイスもまた、いなくなりかけていた。右の羽が先の方から少しずつ

          「ウグイス」第19話

          「ウグイス」第18話

          「おい!何やってんだよ!」不意にリスの声がした。ウグイスは、はっと目を覚ました。「ぼくはいったい…」とわけがわからずにリスを見た。 「まったく、どこにでも飛んで行けるとろくなことないぜ!」リスは、くりくりの真っ黒い目で、真っ直ぐにウグイスを見ていた。ウグイスは、申し訳なさそうに頭を垂れると「ごめんよ。心配かけて」と言った。リスがそれきり何も言わないので、ウグイスは再びリスを見上げると、そこにはなんと、あの小さなウグイスがいた。驚きのあまり、ウグイスはしばらくの間、声も出せずに

          「ウグイス」第18話

          「ウグイス」第17話

           ウグイスは、翼を広げ、ふわりと宙へ舞い降りた。冷気が、一瞬でからだ全体にくまなく染み広がるのを感じた。ウグイスは、寒さで凍ってかたまってしまいそうな羽を、何度も何度も必死で羽ばたかせ続けた。羽や、くちばし、目、そして、小さな心臓が、羽ばたくごとに、ちくり、ちくり、と少しずつ凍っていくようだった。なんて寒さだろう!ウグイスは、リスの巣穴から離れるごとに、こわくなってきた。それでも、ウグイスは、あの空洞の木へ向かって飛び続けた。夢で見た、夢じゃない小さなウグイスに会いたかったの

          「ウグイス」第17話

          「ウグイス」第16話

           そんなある夜のことだった。ウグイスは不思議な夢を見た。小さなウグイスが、空洞の木の入り口にとまっていたのだ。小首をかしげたり、中をのぞいたりしている。すると、突然、何かに驚いて、急いで飛び立つ姿が見えた。ウグイスは、必死になって追いかけようとした。その瞬間、ウグイスは目を覚ましてしまった。 ウグイスは、いてもたってもいられず、急いで巣穴の外へ行こうとした。巣穴から顔を出したとたん、突き刺さるような冷たい風が、びゅう!とウグイスの顔に吹き付けてきた。ウグイスは一瞬で凍りつき、

          「ウグイス」第16話

          「ウグイス」第15話

           季節はぐんぐんと変わっていった。ある朝、カッコーが鳴いた。すると、それを境に、虫たちが勢いよく鳴き始めた。セミが鳴き始める頃には、山や野原ではどこでも大合唱となった。夏がきたのだ。草木も、いきものも、そして、空の雲までもが、大きくなり、増えてゆき、そして、広がっていった。 まるで、こわいものなど何もないんだ、と言わんばかりのエネルギーが、暑さに比例するように増していった。ウグイスは、あまり歌わなくなった。今は、自分が歌うよりも、他の鳥の歌声に耳を澄ましている方が楽しい季節だ

          「ウグイス」第15話

          「ウグイス」第14話

           その日以来、ウグイスは毎日空洞の木へ通い過ごしたけれど、あれから小さなウグイスに会うことは二度となかった。もう、忘れてしまったのかしら?それとも、またね、と言ったけれど、本当は二度と会いたくはなかったとか? ウグイスは、色々と考えたけれど、結局何もわからないのだった。 ウグイスが小さなウグイスのことを思うと「それって本当?」と言った小さなウグイスの顔が何度も思い出された。 「それって本当?」ウグイスは、つぶやいてみた。 小さなウグイスの笑った顔が、目に浮かんだ。 もちろん、

          「ウグイス」第14話

          「ウグイス」第13話

          「ほけっきょ、ほけっきょ、ほー、ほっけっ!」いつものように木の空洞で練習をしていたウグイスは、ふと、ウグイスの歌じゃないのも歌ってみようかと思いついた。どうせ誰も聞いていないんだ。なんでもいいだろう。 そう考えると、ウグイスは大きく息を吸って「ほほほけっ!ほほほけっ!きょっけー!」と鳴いた。そして、自分の自由な歌に思わず笑い転げた。 「あはは!へんなの!次はどんなかな?」そう言うと、ウグイスはそれから自由に思いつくままに歌い続けた。最初はぎこちなくて、つっかかるようだった歌は

          「ウグイス」第13話

          「ウグイス」第12話

           ウグイスは、はっとして目が覚めた。あたりはもうすっかり夜になっていて、月明かりが、静かに穴の中へ一筋差し込んでいた。ウグイスののどは、すっかり元に戻っていて、もうウグイスを苦しめてはいなかった。穴のすみでは、リスがすやすやと眠っているのが見えた。リスのかたわらには、しなびた薬草らしきものがころがっていた。ウグイスはふと、自分のそばに何かがころがっているのに気づいた。見ると、それは干からびたきのこだった。ウグイスは、干からびたきのこをまじまじと見つめた。きのこには、小さな穴が

          「ウグイス」第12話

          「ウグイス」第11話

           ウグイスは訳がわからず「すみません。わからないんです」と申し訳なさそうに言った。 「ん?決まってないの?」ウグイスの高さまで縮んだ、白くて高いものが、ウグイスの顔をのぞきこんだ。その顔は、どこかで見た、知った顔だった。さっきは顔がなかったのに…。その顔は知った顔だったのに、それが誰なのか、どこで出会ったのかをウグイスにはどうしても思い出せなかった。 「それでは、ここから下をのぞいてごらんなさい。そして、あなたが見えるものから、あなたが選びなさい」白くて高いものは、そういうと

          「ウグイス」第11話

          「ウグイス」第10話

           ウグイスは、まぶしい光を感じて目を覚ました。そこは一面に広がる、まぶしい雲の上だった。なんてすばらしい開放感!ウグイスは、心もからだもこんなに軽く、何もない、空っぽの感じは初めてだった。そよそよと風が吹いた。風は、キラキラと七色に輝き、楽しそうな笑い声のようにそよいでいった。ウグイスは、首に、からだ全体に、その気持ちいい風を感じて思わず微笑んだ。 懐かしいような、くすぐったいような、変な気分だった。雲の上って、こんなところだったんだ。ウグイスは、かつて見上げていた雲が、今は

          「ウグイス」第10話

          「ウグイス」第9話

          「ケケケケ」 何かが聞こえた気がした。気のせいだろうか。ウグイスは、にわかに聞こえた声に意識を引き戻された。そして、耳をすませてみたが、待てど何も聞こえてはこなかった。そして、ふたたびウグイスの意識は遠のくのだが、そうすると、また、あの声が聞こえてきた。一体、なんだろう?ウグイスは、真っ暗いまぶたの裏で思った。 すると、「ケケケケ、ケケケケ」と今度は、ウグイスのすぐそばで、その声がはっきりと聞こえた。ウグイスは、なんとか仰向けになると、その声のする方を見上げた。目の前には、見

          「ウグイス」第9話

          「ウグイス」第8話

           先に目を覚ましたのは、リスだった。リスはあくびをしながら、ぐるりとあたりを見やると、縮こまるように隅で横になっているウグイスに気づいた。 なにやらウグイスの様子がおかしい。よく見ると、具合が悪そうに苦しそうな顔をして、うんうんとうなっていた。 「おい、大丈夫か?」リスは、あわてて近寄ると、鼻先でウグイスのほほをそっとなぞった。ウグイスは、大丈夫、と答えたかったが、喉が詰まっていて声が出せなかったので、うんうん、と苦しそうにうなっただけだった。 リスは、心配そうに何度も鼻を近

          「ウグイス」第8話