「ウグイス」第8話

 先に目を覚ましたのは、リスだった。リスはあくびをしながら、ぐるりとあたりを見やると、縮こまるように隅で横になっているウグイスに気づいた。
なにやらウグイスの様子がおかしい。よく見ると、具合が悪そうに苦しそうな顔をして、うんうんとうなっていた。
「おい、大丈夫か?」リスは、あわてて近寄ると、鼻先でウグイスのほほをそっとなぞった。ウグイスは、大丈夫、と答えたかったが、喉が詰まっていて声が出せなかったので、うんうん、と苦しそうにうなっただけだった。
リスは、心配そうに何度も鼻を近づけては、ウグイスのにおいをかいだ。
そして、「ちょっと待ってろよ。今、薬草を取ってくるからな」と言うと、滑るように穴から飛び出して行ってしまった。リスがいなくなると、ウグイスはますます不安になってきた。このまま一人で死んでしまうのかしら。ウグイスがそう思ったとたん、「それは、お前が選んだことだ」とまたフクロウの声が聞こえた気がした。ウグイスは、ますますおそろしくなり、喉はますます締めあがっていった。
じっとしていられなくなったウグイスは、よろよろと立ち上がると、あてもなく巣穴の中をはいずりはじめた。そして、突然、何かにつまずきあっけなくコロンと横に倒れてしまった。もう、起き上がる気力もなくなってしまったウグイスは、首をめいっぱい伸ばすと、くうくうと鳴いて誰かに何かを求めた。誰に?何を?遠のく意識の中で、ウグイスはぼんやりと思った。

https://note.com/hoco999/n/n982d1e1e8c22

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