「ウグイス」第20話

 子リスが目を覚ますと、すぐにウグイスがいないことに気がついた。出かけたのかな?子リスは、どんぐりの山をよじのぼると、巣穴から顔を出した。あたりは一面真っ白で、太陽の光がキラキラと反射していて、まぶしかった。冷たい風が、子リスの顔に吹きつけた。とてつもない寒さだった。
「お父さん!」子リスはさけんだ。リスは、子リスの横から顔を出し、外の寒さとまぶしさに顔をしかめた。
「これはなに?」子リスは聞いた。「雪だよ。ものすごい寒さだろう。これで世界は一度死ぬんだよ」リスは言った。
「死ぬってなに?」子リスは再び聞いた。リスは、少し考えて「いなくなるってことさ」と言った。
「ウグイスは死んだの?」子リスはさらに聞いた。
「どうだろうね」リスは、まぶしそうにあたりをぐるりと見回した。さっきまでのひどい吹雪は、もうすっかりおさまっていた。天も地も、真っ白だった世界には再び太陽の光が差して、見えなくなっていた世界を再び照らし出していた。なだらかに降り積もった雪の上を、光の粒が風でころころと転がっていった。
「それじゃあもう、ウグイスには会えないの?さよならも言わなかったね」
 子リスはまた、リスに聞いた。リスは、だまって森の方を見つめていた。そして、しばらくしてからこういった。
「そんなことはないさ。ウグイスとおまえはもうすっかり心がつながっているからね。会おうとすれば、いつでも会えるんだよ」
子リスはそれを聞くと、驚いて目を大きく見開いてリスを見た。「どうやって?」子リスは興味津々だった。
「目を閉じて、ウグイスを思い出してごらん。ウグイスはそこにいないかい?」子リスは、言われるがままに、ぎゅっと目をつむると、うー、となにやらうなりながら、ウグイスを思い、集中していた。リスは、そんな子リスをやさしく見つめていた。すると、突然「いた!」と子リスがさけんだ。子リスは、目を閉じたまま、うれしそうに言った。「本当にいたよ!こんなところにいたんだね。ウグイスがいたよ!小さなウグイスと一緒にいるよ!」それを聞いたリスは驚いて聞いた。
「ウグイスは何か言っているかい?」子リスは、再び目をぎゅっと閉じると、すぐに「ずっと友達だよ、って言ってる」と言った。リスの目から、ふいに涙がぽろりとこぼれた。子リスは目をつむったまま、うれしそうに笑っていた。

#創作大賞2023


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