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根気より呑気でたのしむ外国語

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英語をはじめ、外国語のもつ “おかしさ”、“たのしさ”、“おもしろさ” について、のんびり気楽に書き留めていく。雑考。
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#日本語

#107. ぼくもみんなも、誤訳に用心

#107. ぼくもみんなも、誤訳に用心

こちらの note でかなり更新を怠っているわりに、YouTube ではいまのところコンスタントに動画を上げている。怠惰なぼくでも続いているのは、「洋楽の和訳」というテーマが一つ、しっかりあるからだと思う。

以前洋楽の和訳について記事を書いたときにはたしか 100 もなかった登録者数も、いまではこの note のそれをも追い越して、いつの間に 3,500 を超えていた。数が増えるのは素直にうれし

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#102. 英語では、形容詞にも序列がある

#102. 英語では、形容詞にも序列がある

形容詞の序列について昨晩遅くに質問を受けた。

日本語では「青い大きな時計」と言っても「大きな青い時計」と言っても、とくべつ違和感を覚えないのだが、

これが英語だと “a big blue clock” と言わなければならず、“a blue big clock” は英語ネイティヴの耳にはしっくり来ないらしい。

ためしに Google Ngram で、“a big blue” と “a blue

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#101. ある雨の日の英語考

#101. ある雨の日の英語考

雨の日のことも好きになれたら、きっと毎日が楽しいだろう。

数年前、フィンランドの首都ヘルシンキの街を歩いていたとき、強めの雨が降っているのに、街の人たちがいっこうに傘をささないことに驚いた。

その日の雨は土砂降りで、ぼくはすぐにでも屋内に入りたくなったのだけれど、そこらにいた現地人たちは、とくべつ雨を気にしていない様子だった。

そのとき一緒に歩いていたイタリア人のロレンツォにワケを尋ねてみた

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#94. 最初から優しいなんて嘘じゃん

#94. 最初から優しいなんて嘘じゃん

高校時代に友だちから「なんかそれ、人殺しそうだね」と言われて以来、冬でも素手で過ごしてきたが、近ごろグッと冷えてきたので、たまらず手袋を買ってしまった。

道ばたで見る小学生は、こんな時期でもなぜか半ズボンだったりする。中学生のとき、体育の授業を半袖でやっていたのが信じられない。

ヒトは明らかに、年々寒さに弱くなっていく。「殺人を犯しそうだ」とかそんな見かけの問題はもうどうでもいい。ぼくはそんな

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#93. 心はときに、血を流す

#93. 心はときに、血を流す

「近しい人が亡くなった」とか、そういう類の不幸を話すと、英語ではだいたい “I’m sorry.” という応えが返ってくる。

“I’m sorry.” といえば、「ごめん」の意味で使うのがだいたいの相場だが、この意味だけしか知らないでいると、こう言われたとき「いや、あなたのせいじゃないんですけど」と心の中に「?」が浮かぶことになる。



結論から言うと、相手の不幸を聞いたとき使う “I’m

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#91. 理不尽を理不尽と思わないネイティヴ

#91. 理不尽を理不尽と思わないネイティヴ

大学時代、台湾から来た留学生と話しているとき「日本語はあまりとくくない」と言われ、一瞬困惑したことがある。

「 ...... と、とくく?(なんじゃそら)」

じつは、彼が言おうとしたのは「得意じゃない」で、外国人の日本語に慣れている人なら、彼がそう間違えた理由も、だいたい見当がつくと思う。

たぶん、日本語を勉強している多くの外国人は、「とくい」を形容詞だと考えている。

・たかい ⇒ たかく

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#89. 今日の夜ごはんに「ブリナー」はいかが?

#89. 今日の夜ごはんに「ブリナー」はいかが?

あまり信じてもらえないのだが、ぼくは朝ごはんは絶対食べないし、なんならお昼も食べないときがある。

夜こそしっかり食べるけれども、それ以外は別に必要性を感じない。

「よく生きていけますね」と言われたときは、「日中は光合成をしているので」と真顔で答えて相手の顔を引きつらせるのがルーティンである。



最近は日本語としても浸透しているが、英語で「朝とお昼の間に食べる食事」を brunch(ブラン

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#80. モノだっていつか歩き出す

#80. モノだっていつか歩き出す

意思を持たないモノがひとりでに動き出すような奇跡は、現実世界じゃまだ起きないが、言葉の上ではこういうミラクルがしょっちゅう起こる。

英語の世界では、モノが勝手に動き出すのだ。



すこし大げさな言葉を使ったが、英語では、無機質なモノを表していたはずの名詞が、形も変えず、勝手に「動詞化」することがある。

たとえば、ヒトの「目」を表す eye は、そのままの形で「~を見る,凝視する」という意味

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#79. 考え方の違いってことで

#79. 考え方の違いってことで

ついこの間の話だが、職場に着くやいなや、「いやでもそれは絶対違うと思いますよ」という怒鳴り声が耳に入ってきた。

どうやら二人の同僚(といってもどちらとも話したことはない)がなんらかの件でもめている。

デスクで今日やるべきことを確認しつつ、しばらく二人の口論に耳を傾けていたが、結論から言うとそれは、両者の価値観が根本的に違うがゆえに着地点を見つけられない水掛け論だった。

(ぼくと彼らのプライバ

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#78. スマートな痛み

#78. スマートな痛み

和製英語としてずいぶん前から定着し、英語学習の序盤で意味を訂正される言葉の一つに smart がある。

日本語の「スマート」は「シュッとした,細身の」というような意味なのに対し、英語の smart は「賢い」という意味である。

イギリスでは、身なりや外見などに対して「おしゃれな,小ぎれいな」という意味で使われることもあるが、やはり「痩せている」というニュアンスはない。



ここまでは、ある

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#77. おれたちソーシャル・モンキーは

#77. おれたちソーシャル・モンキーは

最近こんな本を読んでいる。

インターネットが登場してから、政治家や作家、専門家だけでなく、一般人でも、なにかを書いて大衆の目に触れさせることが可能になった。

いままでならば、編集の手がさまざま入ってから読まれていた「書き言葉」も、ネット上では多くの人が、他人の編集を介することなく、各々が自分の思ったことを、思ったように吐き出している。

この note もある種、そういった恩恵のひとつの形と言

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#76. 感動のある毎日に、退屈はない

#76. 感動のある毎日に、退屈はない

目の前で見たことや聞いたことに対し、「感動」をしなくなってきたら、それは人間的に腐ってきた証拠かもしれない。

幼いころは、身の回りで起きることすべて、新しく、感動的だったはずである。

いまでも時々 SNS のタイムラインに流れてくる、「生まれて初めて雨を見た女の子の動画」を観ていると、いろいろと思うことがある。

満面の笑みで手を前に伸ばし、体全体で雨を感じようとする様子がこの上なく可愛い。

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#73. 舐めてかかろう

#73. 舐めてかかろう

仕事していたら、近くに座るアメリカ人の同僚ふたりがいきなりアメを舐めはじめた。

(シャーベットペロ:税込み 32 円)

となりの席と後ろの席から、ゲラゲラした笑い声とともにやたら甘い香りが漂ってくると思ったら、こんな駄菓子をペロペロしながらふたりが雑談に興じている。

このふたり、絶対大学時代も周りを気にせず図書館でベラベラしゃべっていたようなタイプだな。(偏見)

特別な場合をのぞいて基本は

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#70. 「オムレツ」はむかし「オレムツ」だった

#70. 「オムレツ」はむかし「オレムツ」だった

毎日言葉に関わっていると「コミュニケーション」という日本語をよく耳にするのだが、これをよくよく聴いてみると、「コミニュケーション」と言っている人が多いのに気づく。

元となった英単語である communication のつづりを見れば、「コミュニ」の方が正しいのだが、どうも「コミニュ」派の方が優勢であるようにすら感じる。

これと同じことは「シミュレーション」にも言える。simulation のカ

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