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統制下のキューバを描く ~「夜になる前に」(スペイン・キューバ映画)🇨🇺

革命。

この革命という言葉が、20世紀初頭、もっともリアルに日常に存在していた場所。

それは南米。

たとえば、チリ。

民主的な政府が存在していたにもかかわらず、アメリカが裏で工作し、軍部の反逆を促す。これが一大クーデターにつながり、長く暗い軍部独裁が始まる。アメリカが裏で手を引いたのは、時の政府が自分たちの利益にならなかったからだ。このクーデターの日が寄寓にも、9.11であったことは意外に知られていない。

数年前、話題に上ったピノチェット将軍は、この独裁政権下で横暴を振るったのだ。

南米大陸と革命。

それを理解するには、歴史を紐解かねばならない。

大航海時代。

白人たちは利権を求め新たなる地を目指した。

それは、大航海という一見すると、たくましく、夢にあふれたイメージを持つ言葉に隠されているが、実は一方的な占領であり、殺戮であり、略奪だった。

こうしてできた征服者による傀儡政権。これを民衆が倒し共和制をしく。しかし、軍部が力をもち独裁政権を立ち上げ、それを再び民衆が倒す。こんな悪しきスパイラルにはまり込んでいくことになってしまった。

そして、キューバ。

アメリカ寄りの政治をし、民衆を圧政でくるしめたバチスタ政権。この独裁政権に拳を振り上げたのは、実は数人のメンバーたち。

フィデル・カストロ、ラウル・カストロ、そして、チェ・ゲバラ。

かれらは執念深くゲリラ活動を行い、バチスタ政権を倒す。そして、彼らがキューバという国を動かしてゆくことになった。

キューバ革命+カストロはきっと二つのタームに分けられるのかもしれない。一つは革命期、二つ目は革命後。

革命時の行動は、まさに青春美学である。若者群像劇である。しかし、革命後、ゲバラがいまだ圧制に苦しむ世界各国のために再び密林にその活動の場を移した後。キューバは再び、独裁方向へ向かう。

言論統制、文化の制限、強制収容所。

独裁を否定した革命児が、独裁を肯定してしまった。

アメリカに対抗するために、あえて親ソを選択したのだとか、いろいろあるんだろうけど、この『夜になる前に』という映画が伝えるキューバという国はとても暗い。

しかし、その困難を乗り越えたものがいるからこそ、真実の歴史として、後世に生きる者は認識することができる。

カストロ政権がいかに文化人、同性愛者、ジャーナリストたちにとって過酷なものであったか。その様子を現在に伝える、貴重な資料的な映画だといえるだろう。

カストロとゲバラ。

残ったものとキューバを飛び出していったもの。どちらが幸福だったかは知るよしも無いが、歴史を巻き戻すことが出来るなら、この二人が手を取り合って1つの国を治めていく姿を見てみたかった。そんな幻想すら抱いてしまう。

余談ではあるが、『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』という映画があった。

そこで演奏されるキューバ音楽は限りなく、人の心を、日常生活を、映し出したかのような、くさいきれで彩られている。

圧政下、おそらくひっそりと演奏され、伝承されたであろう音楽たち。

その語り継がれる音と歌詞にとてつもない、歴史の重みを感じるのだ。



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