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超短編小説「夜行列車」

ブルートレイン

そう呼ばれた
夜行列車に乗った事がある
小さい頃の遠い記憶だ


母は鹿児島出身

お盆休みに数回
小さな私を連れて
夜行で帰省したことがあった

母がなぜ寝台列車を選んだのか
今となっては確認しようがない
電車好きの私はとても嬉しかった


夜の新大阪駅
いつもと違う雰囲気

見慣れないカラフルな
乗車口案内札が
私の心をよりワクワクさせた


私たちの席は
開放2段式B寝台

列車名はたしか
明星だったと思う

細かなことは
もうほとんど覚えていない

暗闇の中
流れ行く光を目で追ってみたり
通路に出て補助席の景色を眺めたり


朝起きると
熊本駅だった

たくさん線路があって
たくさん草が生えていて

異世界の風景画を見るように
私は寝台側の
小さな窓にしがみついていた


西鹿児島駅に到着

昔ながらの駅で
派手な南国の広告看板と
お土産屋さんが並んでいた

駅前ロータリーに
火山灰が
2,3センチほど積もっていた

健康気にせず
マスクなしで
灰を蹴ってはしゃいでたっけ

初めての軽石を手に持って
驚いたこともあったなぁ


感染が収まり
日本が日常を取り戻したら
亡き母の故郷へ訪れるつもりだ



九州新幹線さくらに乗って



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