相合傘の男

今日、奇妙な人間を見た。

台風が迫っていたその日は、灰色の空から大粒の雨が降っていた。目的の駅に着いて傘を差しバスに乗り換える道中に、その男が見えた。ひとりで傘を差しているのに、まるで相合傘のような差し方をしている。左半身はずぶ濡れ、右半身は傘の中。竹素材の持ち手に桃色のビニル。人混みでも一際目立つ色である上に歩くスピードの遅い彼を、歩行者は不審そうに追い越していく。はっきりとは見えなかったが傘

もっとみる