第2章・第3話:最悪の知らせ/新当主アルセラ ―引き継がれる宝―

そこからの彼女の行動は早かった。
 自室から出ると、部屋の前で待機していた侍女長のノリアさんへと語りかけた。

「ノリアさん。ご心配をおかけしました」
「お嬢様!」
「もう大丈夫です。必要なことを初めましょう」
「かしこまりました」

 泣くのをやめ明確に行動を示し始めたアルセラの姿にノリアさんも安堵しているのが分かる。そして間を置かずにアルセラは指示を下す。
 
「ノリアさん。館の者たち全員に旅

もっとみる
ありがとうございます! 今後の励みとさせていただきます!
5

ガンガァクス攻略 −その5−魔兵の襲撃

竜の仔の物語 −第三章|2節|ガンガァクス攻略

−その5−魔兵の襲撃

 手はず通り、中庭へは挟撃の心配の少ない経路を進む。充分警戒して進むも敵の気配はまるでなく、むしろ魔窟内は不気味なほどに静まり返っている。

 「静かすぎる。」ラウが呟く。

 「ああ、そこがかえって不自然だってぇの。」クリクが鼻白む。皆、多少の罠や待ち伏せは承知の上で進んでいる。

 広い中庭の中腹まで来ても敵の姿がまるで

もっとみる
ありがたいことじゃ
7

第2章・第3話:最悪の知らせ/本当の名前 ―ひな鳥は目覚める―

私から突きつけられた強い言葉に彼女は怯えたような表情を浮かべた。そして弱々しく顔を左右に振った。
 そうだ、彼女も納得はできないのだ。でもアルセラは涙を浮かべながら堰を切ったように語りだす。

「――でもどうして良いかわからない! 何も教わってきてない! お祖父様もお祖母様も居なくて、お母様も亡くなられて、お父様しか居なかった――でも必要なことを教わる前にお父様は逝ってしまわれた――」

 力尽き

もっとみる
ありがとうございます! 今後の励みとさせていただきます!
5

第2章・第3話:最悪の知らせ/ルストからアルセラへ ―最後の一線―

樫の木の両開きの扉――飾り気は少ないが年季が入っていてその歴史の古さを感じさせる。
 それをそっと開きながら室内へと足を踏み入れるが、あかりは灯っておらず、カーテンも引かれていて薄暗かった。
 だが、その室内には一人の少女が横長のソファーにて覇気なく腰を下ろしていた。
 私はドアを開ける際にノックをする。
 
「失礼――入るわね」

 そう声をかけるが、ノックにも声にも少女は反応を示さなかった。そ

もっとみる
ありがとうございます! 今後の励みとさせていただきます!
2

ガンガァクス攻略 −その4−ウルフェリンクの神話

竜の仔の物語 −第三章|2節|ガンガァクス攻略

−その4−ウルフェリンクの神話

 「奥にウォー・オルグがいる。」ラウがシチリの剣を構える。

 「・・では、陣形を試す良い機会だな。」マールの指揮のもとに進み始める。敵の数からして、各個撃破も可能ではあるが、ここは事前の作戦通りに、皆の役割を試すことになる。

 まず先頭はドミトレスとラウ。彼らが壁役となりパーティを押し進める。後方ではメッツがボ

もっとみる
ベラゴアルドはいつでもそこにあるぞ
9

第2章・第3話:最悪の知らせ/侍女長との対話

私がそう疑問を口にしたときだ。ドルスさんも戻ってきていた。
 
「隊長」
「ルドルス3級」
「報告だ。屋敷の周囲の生け垣の一つに不自然に枝が折れた箇所があった。その先の花壇や芝生にも本来であればありえない足跡があった。館の裏、この寝室に近い位置から最短を抜けて壁をよじ登ったんだろう」
「二階家ならその筋のもんならロープも使わずに壁をよじ登れるからな」

 ダルムさんの出した補足に私も頷いた。
 

もっとみる
ありがとうございます! よろしければコメントもお願いします
3

第2章・第3話:最悪の知らせ/執事の苦悩と後悔

私は執事長であるオルデアさんへと問いかけた。
 
「失礼ですが、ご領主様の昨日のご様子をお聞かせいただけますか?」

 オルデアさんが私の顔を見つめながら言葉を発し始める。そこには主人とともに過ごした苦難の日々がにじみ出ていたのである。

「旦那さまはこの1年、ずっと御苦労なさっておられました」
「隣接領地との諍いですね?」
「はい――」

 オルデアさんがかすかに視線を下へと落とす。
 
「あの

もっとみる
ありがとうございます! 今後の励みとさせていただきます!
4

『半透明』第二章/第二話

*2020/2/19初稿

 学園が襲撃を受けてから二日経った。二度目のこととあって学園側の対応も慣れたもので、復旧は既に終わっていた。授業も通常通りに行われ、二日前に襲撃を受けたことは見る影もなかった。

 恐ろしいことが起こったという空気だけが残った学園で、今日はベリルとフローラが一緒にランチをする日だった。
 昼休みになりベリルは待ち合わせ場所に着いた。フローラはまだ到着していなかった。フロ

もっとみる
ステキな文章をもっと書きます(≧∇≦)
1

第2章・第3話:最悪の知らせ/アルセラの涙

そこに居たのは数人の使用人たち。簡素な装いの小規模な邸宅とは言えあまりにも少ない人数だ。驚く私たちをよそにしてダルムさんが叫んだ。
 
「おい? ラルドのやつはどうした?」

 聞き慣れない名前が出てくる。その言葉に女官の一人が答え返す。

「代官様ですか? それが昨夜より姿がお見えになられなくて――」

 メイド服姿のメイドの一人が発した言葉に私は問いかけていた。

「どなたのことですか?」

もっとみる
ありがとうございます! 今後の励みとさせていただきます!
6

ガンガァクス攻略 −その3−深部へと

竜の仔の物語 −第三章|2節|ガンガァクス攻略

−その3−深部へと

 その日、ガンガァクス要塞、魔窟前広場の中腹には戦士たちの人混みが出来ている。

 サンザシと呼ぶにはあまりに成長した巨木を囲むように、小さな魔法使いに注目している。ブゥブゥが巨木から杖を手に入れるという噂を、彼らは聞きつけたのだ。魔法に触れる機会の少ない魔窟の戦士たちが物珍しげに彼を見つめるなか、要塞からは遠巻きに眺めるピー

もっとみる
物語に飢えたらまた逢おうぞ
15