140字小説 その741~745
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森の奥には廃墟の宮殿が建っていた。誰が建てたのかはわからない。粒上の小石を丹念に積み上げて作られた建物は、一つの粒が抜けても一気に崩れてしまいそうな脆さを湛えていた。だが、それにも関わらず数世紀の間厳然としてそこにあり、いまだ崩れてはいないのである。
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バーの中央には梯子段がある。客は立ち入り禁止になっている。時々、この梯子段から人が降りてくる。首に荒縄を巻きつけて、ボンヤリとした目をしている。老若男女様々で、毎回人が変わる。バーの店主に尋ねてみても、そういう