「彼と彼とが、眠るまで。」第十四話
第一部 記録/安寧の学園(十二)
アイはどうにか身体に鞭を打って立ちあがった。冬だというのに蒸されるような熱気を感じながら、園内をひた走る。さいわい、レクサスやレヴ、イナサやほかのクラスメイトたちは大きな怪我もなく、幾人かは転んでひざを打ったとか、ガラスの破片で腕を切ってしまったとか、そういういたって軽いものだった。そのことに安堵したとき、おだたしい雨音が外壁を打った。急激に降りはじめた黒い粒は、吹き抜ける窓から廊下を汚した。滝がそこかしこにあるのではないかと思うほどの嵐