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メン限『ウィル・レ・プリカ』先行公開

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現在制作中の『ウィル・レ・プリカ』をメンバーシップ限定で先行公開します。 キャラクター紹介のみ、全年齢・どなたでもご覧いただけます。 ※本編はR18指定の話数がございます。 ※…
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BL小説『ウィル・レ・プリカ』あらすじ&登場人物紹介【先行公開中】

※先行公開内容はメンバーシップ限定 【あらすじ】  惑星パラサイト・エデン。  十三番街で暮らすハルアキは、魂を具現化するオーパーツ〈レ・プリカ〉の使い手だ。  居酒屋サカイの手伝いをしながら、いよいよ迫る進路選択を前に、幼いころに交わしあった「いっしょに星空を見よう」という夢を思いだす。約束の相手は、最年少にして民間惑星探査団体〈ロマン〉に入団したエリート探査士、サクヤだった。平凡な自分と非凡なサクヤ。この隔たりに、なかば夢を諦めかけていたある日、惑星探査から帰還したサ

#10『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(十)君との約束が僕のすべてで。 /サクヤ  目が覚めたとき、僕はパラサイト・エデンと呼ばれる惑星にいた。――十二歳だった。廃棄郊外で倒れていたところを保護されたのだと聞かされた。ぼくの故郷は、ぼくが行方不明になっていた約二年のあいだに大規模な宇宙戦争によって人の住めない廃棄惑星となっていた。汚染物質によって立ち入ることも許されないのだと。  僕は事情を訊ねる大人たちへ、父が白い惑星で亡くなったことを必死に訴えたが、夢でも見ていたんだろうと

#9『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(九)旅立ちの日  パラサイト・エデンの十三番街を出立するまでのおよそ二ヶ月は、飛ぶように過ぎていった。  それこそ、五番街のユニバーシティへ休学届を出しに行ったり、サクヤの秘密基地に案内されて、今回の旅に使うオンボロ自動探査船と対面したり。半年ほど部屋を開けることになるから、片付けをしたり、いろいろといそがしかった。それでも決めたら早いもので、あっというまにその日はやってきた。  ハルアキはキャリーケースを片手に、居酒屋〈サカイ〉の前で三人

#8『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(八)星空計画  スーパーの生花コーナーには、いつも花がならんでいる。通年ではカスミソウにユリ。春が近づけばモモの花。秋口になればリンドウが挿され、別棚には鉢ものが並ぶ。いま時期は、年末年始の名残でキクやシキミもまだ残っている。  外気温とそう変わらない、あるいは風がないぶんだけ温かい店内は、端まで等間隔で並んだ直管蛍光灯で青白く照らされている。ハルアキは青果コーナーの特売を前に、玉ねぎの袋を買い物かごに入れた。 「ねぇねぇ、ハルちゃん。お菓

#0『ウィル・レ・プリカ』|目次

  あらすじ 第一惑星 パラサイト・エデン   原風景 /サクヤ   ハルアキ   憧憬   プロポーズ   休日   ニセモノ   カレー   星空計画    旅立ちの日   君との約束が僕のすべてで。 /サクヤ ▼表紙イラスト メイキング ▼イラストまとめ #一次創作 #創作 #小説 #BL #ボーイズラブ #同性愛 #ファンタジー #SF #両片想い #幼なじみ #生真面目 #エリート #チャラ男 #訳アリ美人

#1『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(一)原風景 /サクヤ  僕の原風景は、死と一面の白から始まった。  まだ幼いころ。十歳の誕生日を迎えたその日。ぼくは懐中時計を片手で握りしめていた。もう片方の手は、冒険家の父が握っている。どきどきしていた。誕生日はなにがいいと問う父に、ねだって、ねだって、はじめて冒険についていくことを許された日だった。  ぼくは、見渡すかぎりが白く、陰影だけで世界が表現されたようなその大地に降り立った。  そしてその大地で、父は死んだ。  はじめのうちは、

#2『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(二)ハルアキ  密集した都市型ビルの隙間を縫う風は、生活臭にまみれている。開いた隙間から一月の風がびゅうと吹きこんだとき、この街の音とにおいがいっしょくたになって頬に触れた気がした。  ハルアキは、冷たいドアノブを肘でどうにか押しこみながら、軋むドアをくぐった。  重い洗濯かごを抱えたまま、居酒屋〈サカイ〉の裏路地へ出、肩を使って開いたドアを器用に閉める。湿ったおしぼりや台所で使う手拭きがいっぱいになったかごは、見た目よりも重い。持ち直す

#3『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(三)憧憬 『三日前に帰還した民間探査団体〈ロマン〉が、本日二十時から記者会見を行うと発表し――……』  ハルアキは十三番街の路地を歩きながら、次元統括局――通称、イブリ広告塔の巨大液晶パネルを遠目に見た。最新の情報や特集を次々と流すそれは、この〈交易中央都市〉では日常の光景ともいえる。  惑星パラサイト・エデン。  それが、ハルアキが現在暮らしている惑星の名前だ。  中心は〈交易中央都市〉と呼ばれる十三の街を束ねた仮想都市に集約する。  

#4『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(四)プロポーズ  なんて騒がしい日だ。  ハルアキはややうんざりしながら、肩を落とした。  居酒屋〈サカイ〉を一階に構えるこの雑居ビルは、一階と二階の半分がサカイ夫婦の住居とし、三階から四階にかけて、合計四戸の賃貸となっている。ハルアキとサクヤが三階。クーの部屋が四階にある。  ことは一時間前。クーがサクヤの祝賀会をしようと言いだした。そこまでは良かった。こちらとしては好きにしろというぐらいで、もともと下も居酒屋で、夜中まで騒がしいのだ

#5『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(五)休日  休日の午前中。ハルアキは地下ランドリーで洗濯機を回していた。 「おはようございます。ハルアキさん」  入口を見れば、ランが洗濯かごを片手に立っている。ハルアキはちいさく会釈をした。ランは、クーから借りたのだろう薄手の長袖を上に着、下はハルアキがあげた細身のジーンズというラフな格好だった。サイズが合わずタンスの肥やしになっていたものを、そのままにしていてはもったいないからと彼にあげたのだが、見事に着こなしている。  とはいえ、いま

#6『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(六)ニセモノ   五番街の大型ショッピングモールは、迷宮と呼ばれる五番街地下通路からほぼ直通だ。ハルアキが通路の案内板を見るより早く、クーはこっち、と手を引いた。ランは慣れたように後ろをついてくる。人波のなかをすいすい進んで自動ドアをくぐると、ショッピングモールの軽快なバックミュージックが迎えいれた。ガヤガヤと聞こえる人の声。足音を吸いこむ店内。並んだ色とりどりの店舗。たくさんの世界を閉じこめたカラフルな世界は、めまいがしそうなほどに情報が

#7『ウィル・レ・プリカ』

第一惑星 パラサイト・エデン(七)カレー   居酒屋〈サカイ〉を一階に構えた四階建ての雑居ビルが、道向こうに見えた。あたりはもう真っ暗になっていたが、こうして灯りがついていると、どことなくほっとする。めずらしく、門戸の前には誰かが立っている。待ち合わせというには、ややおちつきがない。不審者かと一瞬疑ったがよく目をこらすと、室内着に半纏を着込んだ奥さんだとわかった。同じタイミングで、奥さんがこちらに気がついて、小走りによってくる。 「ハル!」 「ごめん。遅くなって……」