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泣きの概念

「僕の将来の夢は~」

小学生の頃、私の学校では毎朝スピーチが行われていた。

将来の夢・自分の好きな事・趣味について・週末の思い出等々。テーマは特に決まっておらず自由に10分程話せば良い。毎朝1人ずつ出席番号順だった。

みんなの前に立ち、1人で話すというのは緊張するものだ。

好き好んでやりたいものでもない。(私は)

それを楽しみだという生徒もいた。(1人だけ、彼は現在行方不明)

その時の担任はE先生、男の教員で社会経験が皆無。大学生面だった。
ま~それは良い。

ある日の朝。

Mちゃんという女の子がスピーチの番だった。

Mちゃんはみんなの前に立ち、そして突然泣き始めた。

E先生はMちゃんに駆け寄り、「大丈夫?大丈夫?」と声をかける。
一向に泣き止まないMちゃん。ついにE先生は

「スピーチはまた今度にしよっか! みんな! 頑張ったMちゃんに拍手!」

「は?」

なんで何にもしてないMちゃんに拍手なの?ただ泣いただけじゃん。 私は純粋にそう思った。

そして拍手が沸き起こるとE先生はMちゃんの顔を見ながら満足そうな笑みを浮かべた。

あの顔は今でも覚えている。あまりにも気持ち悪すぎて。


そして学年が1つ上がり担任が変わった。N先生という女性の方だ。字が恐ろしく綺麗で読書が趣味。球技が苦手。クールすぎる女性教員だったのを覚えている。

ある日の朝。

来ましたスピーチ、そしてMちゃんの番が。みんなはもう察していた。
「あ~~Mちゃんか 泣くぞ泣くぞ~」

みんなの前に立つMちゃん。案の定、泣き始めた。

「またこいつだけスピーチやらないよ」
と隣に座っていたS君がぼやいた。私もそう思った。先生の「大丈夫?」が始まるぞ~

ところが、、、N先生は微動だにしない。
教室の壁に寄り掛かり腕を組んでいるN先生。
Mちゃんはまだ泣いている。

時間まではさすがに覚えてないが、かなり長かったのは記憶している。
そしてとうとうN先生が口を開いた。

「あんたそれで終われると思ってるの?」

「おーー」(私の心の声)

「女が泣くのは卑怯よ 何分でも待つわ 早くスピーチ始めてくれる?」

「おーーー!!」(私の心の声)

そうだよね!? E先生のことを思い出す。なんで泣いたらスピーチしなくて良くなるんよ。しかもそれで頑張った? 何にも頑張ってないじゃん。
真面目にスピーチ内容を考えてきた生徒が評価されるべき。

私の中にあった引っ掛かりが綺麗に取れた瞬間だった。

Mちゃんは察したようだ。N先生に泣きは通用しないということを。

突然泣き止み、そして週末に家族でドライブに行った思い出を話し始めた。

私は唖然とした。開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。

こいつ、、、やはりわかっていたのか。女の私が泣いたら男のE先生は容易く手玉にとれるということを。

N先生はMちゃんの本質を見抜いていた。慧眼すぎる。

私は正しい指導方法だと思った。泣いても何も解決しないということを小さい頃にちゃんと理解させるべきだ。


(本業ではなく)今の私はサッカーの指導者をしているが(非常勤的な)、子供が泣くと一定の距離を取る。必要以上に話しかけない。(もちろん大怪我して泣いてるとかは別ですよ!)

そして伝える。

「泣き止んだら試合出ようか」

すると子供はすぐに泣き止み、私に近寄って来る。

「コーチ いける」



今でもN先生とは年賀状のやり取りをしている。今さっき棚を整理していたらN先生のハガキが出てきた。そしてこのエピソードを思い出した。私の泣きの概念を変えた出来事だった。

もう一度ハガキを見たが、あまりにも達筆すぎて。ちょっと怖い。


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