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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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#眠れない夜に

【詩】夜行性の詩

【詩】夜行性の詩

夜にだけ小説を書きたくなるような
そういう不定形の生だったとしても。
昼に満たされていたことを忘れ去り、
棚に上げるように劇的に、夜が去ってゆくのを惜しんだのなら、世界一の不幸者になって、僕は、無造作に、欠け落ちた詩を描く。
たとえ、本の形をした物語しか知らなかったとしても。
四等星みたいに綺麗な小説が描きたい。
恒星が周囲を燃やすようにきみたちを、傷つけていたい。

【詩】吐瀉物の詩

【詩】吐瀉物の詩

すぐ頭上を走ってゆく電車も、
嗚咽して俯いている自分の身体も、
ぜんぶがぜんぶ、このわたしの今いる空間とは関係がないみたいで。
知ってる。あなたたちも、きっと、どこに行けばいいのか、分からなかったのね。
ぐるぐる、叫ばないまま泣き喚いて、迷走するように逆流して、ただ高架下のアスファルトを少し溶かすくらいの影響力。
どうしてか、信号機の緑があたたかく、やさしくて、寒いってわたしの代わりに、終電とか、

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【詩】朝陽

【詩】朝陽

猫に生まれ変わったってことにして、
朝陽のなか、眠りについている。
車道の上で、灯火をぼんやり映す街灯のように、漫然と突っ立ったまま、けれども切実に誰かに認められたいと思っていて、
だからこそ、また夜を越してしまったんだ、きみは。
そうして、今まで流れてきた何万、何十万という藍色の空の数だけ、きっと、知ってゆく。
たぶん、きっと、ひとりでも生きていけること。
友達だけがいつの間にか、朝陽に火葬され

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【詩】夜の湖

【詩】夜の湖

映らない。
僕の姿はなにも映らない。
曇った夜に見た湖は、なにも透き通ってなんかいなくて、それは、津波のように暗く淀んでいて、けれど、それでも湖の名残であるみたいに、水面は緩やかに凪いでいた。
自分の存在を確かめられなくなったら、簡単に死んだような気分になれるから、
僕は、夜の湖で、生きたくないけれど、死にたくもないまま、観念的な自殺をする。
夜景と認められないこと、かわいそうって言える人になりた

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【詩】都会の星

【詩】都会の星

躊躇うという感情。こんなにも鍵穴の形をじっと見ていたことなんて、いままでなら、ありえなかったかもしれない。煤けたみたいな色をした新宿駅に夜がやってくるように、公団住宅にも、白夜じゃない夜がやってくる。僕がこうして昼間中、ずっと仕事をして、燃料を補充するように食事をして、夜、魂を一旦放棄するように眠りにつく以前、それは僕が、人間じゃなかったころのことだけれど、僕は瞬いても瞬いても消えない星で、けれど

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【長編詩】masturbate

【長編詩】masturbate

        ※

無為にしたくないと思いながら、あっという間に、泥のように形を無くし、けれども完全に溶けきることのない多色の沈殿物のような、、、それを、そういうものを日々と呼んで、僕は、なんだか、毎日、吐けないのにむりやり吐こうとしているみたいだ。体内に溜まった毒素をひたすら嫌悪するだけの生活。舞台に、(指をさして)きみとかきみとかきみとか、そういうきみたちが観客の舞台に、僕が立ったことは一度

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【詩】夜想曲の詩

でたらめに、歌をうたって、
醜悪な自己嫌悪、洗い流されて、
白いタオルと、微かな石鹸のにおいのするわたしの身体
淡い住宅街の灯りを見つめながら、音楽を聴いて
それだけでわたしは、夜を明かしてしまう
浅い眠りについて
生きてしまう
健やかな寝顔、誰も苦しいと信じてくれない
できるなら、夢にまで苦しさを持ち込みたかった
そう思いながら、朝陽が、住宅街の灯りよりも、さらに眩しく射し込んでくる。

【詩】星屑の詩

ただ怠惰なだけだよ、謙虚さっていうのは。
自分で自分に価値を見いだせないからこそ、他人に、その価値を見いだしてもらおうとしているのだ。いつしか現れるかもしれないきみが、「あなたは、この世界にたったひとりだけしかいないんだよ」と言ってくれること、虚ろに、けれども、それでも確かに待ち望んでいるように、殺風景な部屋のなか、僕は、意味もなくずっと夜空を見つめていた。
なにもしなくても綺麗と言ってもらえる、

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【詩】縺

文章のふりをした順列みたいな悪夢だ。
よく眠るのはつまり、なかば仮装するような調子で、生から逃げたがっているということ。死は、いつでも同じ場所で光っている三等星みたいなものだと思っていた。それなりの輝き、よだかのように悲劇的でも鮮烈でもないけれど、その脇で光っていることが赦されるくらいの、それくらいの担保された輝き。そういう風に、生きているかぎり軽々しく憧れられるものだと思っていたからこそ、僕は生

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【詩】惰眠

言葉のせいだ。ただ空っぽなことにも、知らないうちに名前がついていた。つまり、肌に触れるだけの夜風みたいな無害さは、優しさじゃないってこと。知っているのなら、誰か早く教えてくれればよかったのに、と思って、けれどもすぐに、僕には友達なんてひとりもいないことに気が付いた。僕以外の全人類、いつか起きるために眠っているけれど、僕だけはずっと起きながら眠っているみたいだ。夜に、誰もいない道路の縁石を歩きながら

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【詩】田無駅

「分からないことは、分からないまま天国まで持ち込んで、また考えようね。」
わたしたちはきっと、夜と朝を、この世界と別の世界を、決められた法則に従いながら、絶えず行ったり来たりしていて、そして、ずっと鉄道の小さな車窓から、踏み入ることのない地形を眺めている。
通学路だろうがなんだろうが関係なく、
精神年齢10歳のまま、どこへでも行ける気がしていたのに、それなのに、いつの間にか、知識ばかり増えていって

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【詩】感覚花火

弾けて、弾けて、言い訳さえも弾けて花火になれよ。
正しいものぜんぶが破裂して、すばらしいもの、すばらしくないもの、きっとそれぞれ色は違うけれど、すべて同じように花火だったらいい。どこかの誰かの恋だとか、愛だとか、きみが考えていること、ぼくが考えていること、くだらないことのなにもかも、ぜんぶぜんぶ着火して、閃光を噴いて、儚いだとかありきたりなこと、呟きながら死んでくれ、死んでくれよ。その死んでくれが

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【詩】流れ星

酔ってるから吐いちゃうのかもしれないね、夢に、自分に。今日も都内の高架下で、きみの夢が吐瀉物になってゆく。きみは苦しくて仕方ないような顔をしているけれど、そうなってしまうのもあながち間違ってないことなのかもしれないね。吐瀉物を避けて歩くこと、同じように色んな人が夢に対して眉を顰めること、きっと、誰の夢も、叶わなければただの吐瀉物みたいなもので、だって、誰もきみの吐いた海に足を突っ込みたがらないから

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【詩】六等星の詩

自分を信じるということは、ぼくにとって、ただ自分の心臓の音を聞くことでしかなかったよ。
研ぎ澄ますみたいに心音を聞いて、
すると、きみもみんなも優しい顔をする、
からだのなかで血液が巡り続けるだけのことが、どこまでも価値があるものらしかった、きみはきみのままでいいと言って、今日も嘘みたいな言葉が冷たい空気に混じっていた、一等星しか見えない都会で、誰かが、星が綺麗だねと言った、つまりは、ぼくたちのい

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