ハンス

魔の山からど田舎へ、どでかいオイヌサマと奇妙な本を崇める無能ルンペン。

ハンス

魔の山からど田舎へ、どでかいオイヌサマと奇妙な本を崇める無能ルンペン。

マガジン

  • オイヌサマ

    ぼくの神さま物語

  • ビュッヒャー

    無能中年を作るもの

最近の記事

何モ考エナイ者

「走らないと、ダメになる。。。」 ぼくは、呟く。 「走る」っつたって、マラソンのように、恐ろしく長い距離を止まる事なく走るわけじゃない。 たった、5km、ただ、タラタラ走っては歩いたり、ダッシュしては喘いだりだ。 けれど、その汗だく息も絶え絶えの意味不明な行為は、名目上「イヌのため」とまるでぼくが強要されているかのようだが、実の所、他でもない「ぼくのため」なんだ。 ぼくのように思いつき行動型で気分の浮き沈みが激しい「迷惑者」は、走るべきなのだ。 この「イヌのため」である

    • 宙ヲ滑ル者

      「ああァ、行きたくないなァ〜」 ぼくは、ぼやく。 散歩のことだ、あの闇のメスとの。 ヤツはいつもぼくの帰り(というか散歩)を待ち侘びている。 そう、ポウくんとはまるで違うのだ。 ぼくの車の音を知っていて、ぼくが家に着くとすでに出入口に張り付く、ぼくを確認し、飛び跳ねる。 釣り上げられたサバみたいだ。 まあ、ぼくみたいな鬼軍曹は、ピタリとシットしない者には扉を開けてやらんのだ、ゆえに次の瞬間、ヤツは任務を遂行する。 ポウくんと暮らすようになってから、ぼくの一日は散歩

      • ザ・ロード コーマック・マッカーシー

        THE ROAD Cormac McCarthy 「あの子が神の言葉でないなら神は一度もしゃべったことがないんだ」 火を運ぶ者。。。 ウェルカムトゥディスクレージータイム イカれた時代にようこそ! パパと息子は行く、死んだ世界を。 この世界は全て灰色だ。 全ては死んだ、しかし!人類は生きていた! ああ、北斗の拳だね、ぼくは思った。 「越境」で心臓に風穴開けられ、躊躇していたこれ。 実はさこれ、映画で見たんだよね、冷たい世界にゾッとするんだ、怖いんだよ。 ぼくら極

        • 犬物語 ジェイムズ・ヘリオット

          Favourite Dog Stories James Herriot 「ヴィス・メディカトリクス・ナトゥラエ(vis medicatrix naturae)」 ヤサシイ。。。ヤサシイ。。。 ぼくみたいなハンパにひねくれた者はこう言う本ばかりを読んだらいいさ。 なぜか、「イヌ」と一緒にいると、みんなやさしくなる。 イギリスのヨークシャー。 農場ばかりのど田舎の獣医ヘリオット先生。 「獣医になりたいと思った時、ほんとうになりたかったのは犬の医者だった。そうすれば一生を

        何モ考エナイ者

        マガジン

        • オイヌサマ
          38本
        • ビュッヒャー
          50本

        記事

          惑う星 リチャード・パワーズ

          BEWILDERMENT Richard Powers 「世界はぐるぐる回ってて、僕はそれに満足してるってこと。」 まただ、また雪が降ってきやがるんだ。 雪は嫌いだ。 ポウくんを思い出す。 これは母を亡くした少年と、そのお父さんの話だ。 この少年ね、アスペルガーかADHDとの疑いがあるという。 「熊は昔、どこにでもいたんだ。パパ、僕らに見つかる前は。僕らがすべてを奪った!僕らが孤独な思いをするのは自業自得さ。」 環境戦士のロビン少年は激しやすい。 ぼくはこのお父さん

          惑う星 リチャード・パワーズ

          踊ル者 〜ツァラトゥストラはこう言った

          ALSO SPRACH ZARATHUSTRA Friedrich Nietzsche 「嘔吐!嘔吐!嘔吐!」 「否!否!三たび否!」 ニーチェくんは、あいも変わらずディスってる。 そう、ぼくみたいなんだ。 ポエム表現多発、歌は長いでわかりにくいったらない。 ただ、ぼくは元気付けられる。 ぼくは都合よく彼にたくさんの「金言」をいただいたけど、これは「ぼくにとっての」徳であって、誰にとってもいいわけじゃない。 ただ、彼が口を酸っぱくしていうように「ぼくの」徳であることが大

          踊ル者 〜ツァラトゥストラはこう言った

          禿ゲ散ラカス者

          「…で、その半ズボンの奴ときたら、脚がツルツルなんだッ!」 隣人は少し興奮気味にいう。 どうも先日久しぶりに電車に乗ったら、半ズボンの若い男がいた、と。 で、その脚がね、毛が全くなく、ツルツルとしていた、と。 最近、ニンゲンのオスは「変に」美意識が高く、脚の毛を処理するとな。 へーーーーーーーー。 ぼくは思う。 まあ、ぼくにとってはどうでもいいことなんだ。 というのも、そんな美意識がぼくにとって何の意味があるんだい? 風呂に浸かりながら、ぼくは己の脛を見る。 ヒョロリ

          禿ゲ散ラカス者

          視ル者

          「いつもおんなじがいい。」 ぼくは思う。 ぼくみたいな者はそうなのだ。 ぼくはポウくんと暮らすようになって、全てが変わった。 今までの独りよがりな世界がぶっ壊れたのだ。 ゆえに、はじめの頃は、正直、辛かった。 けれど、ぼくは「視」ることを学んだ。 うちには昔から何らかの動物がいた。 犬もいたし、猫もいた。 金魚もメダカもいたし、ヒヨコもいた。 けれど、よく在ることだけど、ぼくは「子ども」で他者の責任を担う能力に欠けていた。 どこの家庭もよく在るように、動物の世話はママひ

          オシマイノ者 〜ツァラトゥストラはこう言った

          ALSO SPRACH ZARATHUSTRA Friedrich Nietzsche 「ふさわしいときに死ね!」 と、ニーチェくんは吐き捨てる。 「うん、ぼくは、『神』を道づれにできたあかつきには連れ立ってあと10年ちょっとは生きたいのだけど。。。。」 ニーチェくんは、唾を飛ばす。 唾を飛ばしてディスりまくってる。 多発するビックリマーク!!! 彼の唾シャワーで目も開けられない。 「おしまいの人間」「賎民」「善くて義しい者」「市場の蝿」… 呼び方はなんだっていいけ

          オシマイノ者 〜ツァラトゥストラはこう言った

          回ル者 〜ツァラトゥストラはこう言った

          ALSO SPRACH ZARATHUSTRA Friedrich Nietzsche ぼくの頭ん中にとつじょ「永劫回帰」という呪文が降って沸いたとさ。 ぼくは、ニーチェを、読めない。 ここに「ツァラトゥストラはこう言った」岩波文庫の上下巻がある。 読んでみる、早くも、上巻の30ページほどの「超人と『おしまいの人間』たち」のあたりで脳髄が機能不全に陥ったようだね。 奇妙なことに、上下巻ともページをペラペラすると至る所に線や絵が書かれておる。 どうも、ぼくは重度の記憶

          回ル者 〜ツァラトゥストラはこう言った

          木曜日だった男 チェスタトン

          THE MAN WHO WAS THURSDAY: A NIGHTMARE Gilbert Keith Chesterton 「汝らは我が飲む杯より飲み得るや?」 キミの見たこと考えたことは、本当に「正義」かい? よく見たまえよ、彼は本当に「悪魔」かい? キミ、「聖書」読んだことある? ぼくは、もちろんないさ! 「真実は、たとえ足枷をかけられていても恐ろしいものだ。」 無政府主義。。。爆弾魔。。。裏切り者。。。 おいおい、なんか政治的な物語なのかい?ぼくには向かな

          木曜日だった男 チェスタトン

          落選スル者

          「きっとぼくの神さまがその職場は良くないと言っているのだろうて」 二通の「不合格通知」を手にし、ぼくは薄く微笑む。 ぼくは、職歴が多い。 愛しいポウくんのためにこの4年間、低賃金肉体労働をしている。 毎日炎天下でおよそ信じられない量の汗をかいては国籍不明な肌の色となり、上腕二頭筋が恐ろしいほど発達したという。 「早く帰れる」「休みが取りやすい」「家から近い」という条件が、特殊な子供を持つぼくにぴったりの職場だった。 ぼくの汗と涙の結晶はポウくんの胃袋に消えてゆく、苦しく

          落選スル者

          小サキ者

          「山がでっかいなァ。」 ぼくらは毎日散歩する、雨の日も、風の日も。 ぼくと、ポウくん、いつも一緒に歩いた。 リルと一緒に散歩する。 毎日5km、半分走って、半分歩く。 彼女はしばしばトッチラカッてはいれど、ぼくの隣を歩こうと気遣ってくれるようになってきた。 ぼくは遠くを見ている、偉大なお山どもが霜降り模様の蒼くどでかい動物が横たわっているみたいに前方を塞いでいる。 霜降り柄がポウくんのタテガミみたいだ。 いくつかの三角に突き出た頭頂もまるでポウくんの耳みたいに見える。

          小サキ者

          アホウドリの迷信

          「僕はとつぜん父が正しかったことを知った。僕は美しかった。」 ・大きな赤いスーツケースを持った女の子 レイチェル・クシュナー ・オール女子フットボールチーム ルイス・ノーダン ・足の悪い人にはルイス・ノーダンの歩き方がある アン・クイン ・アホウドリの迷信 デイジー・ジョンソン ・アガタの機械 カミラ・グルドーヴァ ・野良のミルク/名簿/あなたがわたしの母親ですか? サブリナ・オラ・マーク ・最後の夜 ローラ・ヴァン・デン・バーグ ・引力 リディア・ユクナヴィッチ 翻訳家

          アホウドリの迷信

          胡乱ナ者

          「写真なんかいったいなんの役に立つってんだッ!!!」 ぼくは毒づく。 ぼくは奇妙な幻想小説が好きだ。 けれど、幻想をもたらす写真の奇妙さが嫌いだ。 病気なんですか!? 更年期障害かなんなのか知らないけれど、この得体の知れない「不安」にはもううんざりだ。 ぼくが昔居座った、「ハイデガーおじさんの小難しい世界観を垣間見る会」を思い出す。 ぼくはその本を読んだことがない、ってな完全に場違いなぼくの発言がみんなの視線を独り占めしたってもんさ。 けれど、ぼくのブヨった脳髄にこ

          胡乱ナ者

          悪童日記 〈映画〉

          監督 ヤーノシュ・サース 「僕らは鍛えたから強い」 ずーーーっと昔にこの映画を見た。 予告編のベートーヴェンがいいね。 そん時もすげえ映画があったもんだ、といたく気に入った。 アゴタ・クリストフ三部作を読んだついでに、また観てみた。 いやあ、すごい映画があったもんだ。 小説を読んだ後によくある違和感がないよ。 わりと想像通りの世界観、話も原作に忠実だしね。 この「僕ら」、全くの素人俳優だというから恐れ入るよ。 なんとも言えないぎこちなさが動物っぽく不気味でサイコー。 「

          悪童日記 〈映画〉