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歌謡ヘビメタ☆ジャポネ~ス/連載エッセイ vol.62

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.64(2011年・第3号)」掲載(原文ママ)。

前号掲載のエッセイを書き終えた、約45時間後、私は夏の終わりのブラジルはリオ・デ・ジャネイロの空港に立っていた。

この街は、事前に調べて言った通り、欧米の街とも、もちろんアジアの街とも異なる独特な雰囲気を有している。
ただ警戒すべきは、その『治安面』で、個人的に参ってしまったのは、空港へ着くなり現地ガイドから告げられた『オシャレな格好をしてはいけない』という『戒め』。

つまり、リオには唯でさえ『アジア系』が少なく目立つトコロに、服装面でも目立つのは…

『コチラ観光客です!! 
 悪い方々…どうかワタシを狙ってください!!』

…と言っているようなものだ…という理屈はわかるのだが…こちとら自称・『オサレ番長』(笑)。
Tシャツと短パンなんて持ってきておりませぬ…!! 

とりあえず気休め程度に、アクセサリーを外して、鞄へ忍ばせた…。

(ちなみに同行する他の男衆は…
 そうでなくても
 プリントTシャツ常備デシタ!!笑)

入国後、チェックイン時間まで市内を軽く流し、夕方前には『WFC世界大会会場』ともなっている『ホテル・インターコンチネンタル・リオ』へ到着。

チェックイン時刻を2時間近く過ぎても部屋に入れないという、『南米時間』の洗礼を早速受けながらも(!!)、なんとか入室。

その日は、『前夜祭』が企画されていたが、始まるまでまだ時間があったので(しかもココは南米…『定時』はあってないモノです!!苦笑)、ホテルの目の前にある、近年注目のリゾートビーチであるサン・コンハード海岸へ出てみる。

ビーチの砂浜では、現地の子供たちがサッカーに興じていた。

『こんな足場の悪い環境で
 鍛えられるんだもんな…
 そりゃ強くなるわ。』

同室のサッカー好きな仲間と取り留めない会話を続けながらも、視線は自然と海の方へ。
波は比較的高いが、ある一定のライン以上には押し寄せない。

ただ…どうしても三陸の海の光景が重なる…。

球の裏側まで来てしまったという『高揚感』と、地元の事が頭を離れない『焦燥感』が綯い交ぜになって、複雑な感情が、まるで波打ち際の泡沫のように胸中へ浮かんでは弾けた…。

前夜祭に集まった顔馴染みの、また初めてお会いする海外のカイロプラクターの方々は、口々に今回の震災に対するお見舞いの言葉を述べた。
そして、私が内陸部とはいえ、その震災の中心地から参加した事に、賞賛と激励の言葉をかけてくれる。

『へ~、遠く海外の人々にとっても
 かなりのインパクトがあったんだなぁ…。』

…と改めて感じ入りながらも、今回の世界大会参加の目的が、日本において我々の団体が打ち出している活動&方向性の、更なる対外的アピールであった事から、むしろ冷静に(ずる賢く??笑)対応する。
こうして私はいつもの『海外モード』を取り戻していった。

ところが『新事実』は、その翌日の大会初日、昼休憩で戻った自室にて発覚する!!

ブラジルはご存じの通り、公用語が『ポルトガル語』であり、正直さっぱり理解できない。
そこで、TVのチャンネルは、唯一英語で流されている『CNNチャンネル』に固定していた。

映像は、日本の『震災』の様子を映し出している。

『もう発生から1ヶ月近くたつのに
 未だトップニュース扱いだなんて…
 やっぱり大事なんだな…。』

…などと何気なく画面を追っていくと…『New earthquake…New earth…んん!? 「New」??』

そう…私はその時、初めて自分が不在の地元で、巨大な『余震』が発生した事を知ったのである!!

幸い、同室者が携帯電話を海外でも繋がる設定にしていた為、大急ぎで各方面へ連絡。
停電はあるものの、無事である知らせが続々と届き、また今回は津波が発生していない事に胸を撫で下ろす。
しかし、その日は空き時間を見つけては部屋へ戻り、代わり映えのしない画像を流すCNNチャンネルを睨み続けていた…。

さて今回の世界大会では、リオの治安を考慮してか、WFC側が公式の夕食会を設けていた。

初日は、『リオで№1のショーハウス』の呼び声が高い、『プラタフォルマ1』。
実はココ、『ブラジル音楽好き』なワタクシが、事前にチェックを入れていた施設で、夕食会の事がなければ、自分自身で行こうかと思案していた場所。
地元の事は気になりつつも、せっかくなので数百人の大会参加者とともに、バスへ分乗して会場へ向かった。

最初は、レストランスペースにてブラジル料理(主に…肉!!)とワインを堪能。

(同テーブルの方々には内緒で
 実はワタクシ…
 チリワインをほぼ独りで
 1本空けちゃいました!!)。

その後、お腹も満たされたホロ酔い気分で、ショースペースへ移動。
ステージに近い席を、他の一般客に負けじとナントカ確保し、いざ、ショーが開幕!!

上演される舞踊は、『いかにもブラジル』といったものから、カポエラやカンドンブレーなど、実に多様&ハイレベル!! 
途中からは、カメラで撮るのも忘れて、ノリノリで身を乗り出し見入っていると、やがてステージに緞帳が…。

『楽しい時間はあっという間だなぁ…。』

…などと思っていると、ステージ袖からナニやら陽気なオッチャンが登場して『観客イジリ』を始めた!!

どうやら1番最後に上演される出演者全員参加の『大サンバショー』の準備の為の『幕間』らしく、オッチャンは早口のポルトガル語で、観客の出身国の名前を挙げては、該当者がいると、その国の言葉で挨拶をしていた。

そして、割合早いタイミングで、『ジャポネ~??』という問いかけがあったので、私は迷う事無く、『イエ~!!』とテンション高く応じた。
するとオッチャンは、ニカッと笑い、『コンニチワ~!!』と親指を立てる。

そう…この時すでに私は『ロックオン』されていたのである…このオッチャンに!!

その後、一通り『観客の出身国イジリ』が終わると、オッチャンは再び早口でナニやら捲し立て始めた。

『ナニが始まるんだろ~なぁ~…。』

…とただステージを眺めていると、突然…オッチャンが…

『ジャポネェェ~~ス!!!!』

…と叫び、私を指差したのである!!

『えっ…えっ?? ステージに上がれ…と??』 

私は訳が分からないまま、ステージに飛び乗り、手渡されたマイクを握る。
そして、戸惑う私の耳に届いたのは、場内の音楽隊が奏でた、耳馴染みのある『アノ曲』のイントロだった…。

不思議な事に、その瞬間、自分が、今このタイミングで、この場所に立っている意味が分かった気がした。
自分は…自分のありのままでいれば良いのだ。
自分ができる事に精一杯向き合っていくしかないんだ。
そう…『今』を受け入れよう…!!

オッチャンの軽快な『前振り』に続いて、万感の思いを込めて私は歌いだした…。

『♪上を向ぅいて~…歩こぉうぉうぉうぉう♪』

気合が入り過ぎて、『1オクターブ上』で歌い始めたのはご愛嬌である。

けれども、途中でキーを下げるのも格好悪いので、ヘビメタ張りに高音を響かせてサビを歌い切ったのも…まぁ、ご愛嬌である。

そして、予想以上の盛り上がりに気を良くした音楽隊が、2番の演奏を始めるも、歌詞が分からなく、仕方ないからマイクを客席に向けて、観客を煽ったのは…ギリギリご愛嬌と言えなくもないのである。

万雷の拍手の下、ステージを降り立った私は、単なる『ウケ』を稼げた以上の、不思議な満足感に包まれていた。

今…ココで…この曲を歌った事…それだけで私自身、今回のブラジル出張の意味が、そして今後、活動していく方向性が掴めた気がした…。

ただ…翌日から世界大会会場で…

『日本から凄いのが来ているらしい…が…
 彼は本当にカイロプラクターなのか??』

…という話題が駆け抜けた事が…日本のカイロ界にとって有意義であったのかどうかは…定かでない!!(爆)


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