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ゆらゆら海ブドウ

「割烹着、欲しいなぁ」

昼下がりの商店街を歩いていると、君が呟いた。

え、エプロンじゃなくて?なんで??
サザエさんのフネが着てるやつだよね??

頭の中がハテナで埋め尽くされていく数秒の間、
「じゃあ作るよ!」なんて勝手に口走ったから。

そうと決まったら、生地探しへ。

素材論の先生が「キッチン周りは麻が最適!」と
言っていたので、リネンコーナーに一直線。

麻は、ミイラを何千年も保管できるくらい水捌けが良くて、防臭・抗菌効果もあるんだってさ。

そんなん勉強したら、リネン一択ですよね〜

布地が決まれば、教科書との格闘タイム。

見返し、中表、ぐし縫い、ノッチ。
なんだ、ちゃーんと頭に入ってるじゃん。

君に似合う優しい空色とろみリネンと、
後ろに付けた海ブドウ色の揺蕩うリボン。

リボンは、教科書に一切載っていないけれど、
唄うように料理する君の姿が忘れられなくて、
これからも見惚れていたくてちゃっかり付けた。

「えぇ、嬉しい。何食べたい??」
そう、そのクシャッと笑った顔が見たかったの。

1人では、まだ何も作れないと思っていたけれど、
やれば出来るって、そっと教えてくれたのは、
紛れもなく、君なんだから。

クローゼットが私の服でいっぱいになるくらい、
春夏秋冬ぜーんぶ私が作った服を纏えるくらい、
頑張っていっぱい作りたいな。

これが、私なりの、愛の伝え方なのです。

君の丁寧な包丁捌きと穏やかな横顔が1番の好物デス

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