ガクモン言葉の島で笑って
尊敬しているゼミの教授が、講義の中で、
口を酸っぱくしながら、社会の定義を説く。
ゼミも、1つの社会だ。
全員が違うテーマで2年間、個々に研究を進め
深く深く掘り下げて、卒業論文を完成させる。
「ねぇ、野枝的にはどう思う?」
アナーキスト・伊藤野枝研究の子に問いかける。
「待って、もうポトラッチ始まっちゃうよ」
交換論を学ぶ私に、同期がジャブを打ってくる。
「大丈夫。ぜーんぶ包摂していこうな」
ネパールのヒエラルキーを研究する彼を励ます。
私達は、研究している理論や、対象なんかを、
スキマいっぱい散りばめながら、会話を進める。
学問を深める私達にしか通じない言葉を、
みんなと一緒に歩んだからこそ使える言葉を、
そんなガクモン言葉を、緻密に織り交ぜる。
この暗号は、全員の研究を把握しなければ、
決して成立しないように、編み込まれていく。
だから、ガクモン言葉は、君のおもろい研究を
心から尊敬している暗号みたいなものなんだ。
真面目なゼミ中には決して伝えきれない程の、
研究している本人が気づいていない位の、
小さく、細かく、深く、高いガクモン言葉達。
これからも、そんなガクモン言葉を散りばめて、
研究への尊敬を基盤とした暖かく逞しい社会が、
豊かに醸成されていきますように。
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