見出し画像

ぐん税ニュースレター vol.45 page02 -FP通信-

日銀は今年3月の金融政策決定会合で2016年から続いていたマイナス金利政策解除を発表しました。
この決定だけでなく、データを都合のいいように解釈して事実をねじ曲げるような日銀植田総裁(もとい財務省)の発言には呆れるばかりで記事にする気すら無くなっていたのですが、このあたりの話はほどほどに、金利の仕組みの基本と私達の生活への影響を考えてみたいと思います。

短期金利

まずマイナス金利とは何かですが、これは民間銀行が日銀に預けているお金に対してマイナス1%の金利を課すことです。マイナスの金利ですので民間銀行は日銀にお金を預けていると利息を払うことになるので、それよりも民間企業にお金を貸し出した方がよいということになります。こうすることで世の中に出回るお金の量を増やして経済を活性化させるという金融緩和政策です。日銀(や各国の中央銀行)が決められるこの金利は政策金利=短期金利と言います。日銀はこのマイナス金利を解除し、短期金利を0~1%にするとしています。現在の円安要因の一つとされている日米金利差とは日本円と米ドルの政策金利の差のことです。

長期金利

一方の長期金利は、10年国債の利回りで決まります。国債の利回りはその需給で決まりますので、買う人が多ければ利回りは低下し、売る人が多ければ利回りは上昇します。日銀はこれまで国が発行した国債を自分で買い入れることでこの長期金利をコントロールしていました(日銀が長短金利操作をすることをイールドカーブ・コントロール=YCCと言います)。日銀はこれまでこの長期金利の上限を徐々に引き上げ、昨年10月の金融政策決定会合では1%の上限で抑えていた長期金利が1%を超えることも容認するとしました。(5月29日時点で1.075%をつけて2011年12月以来の高水準を更新しました)

金利の影響

一般的に金利が高いということは個人であれば利息がつくので預金し、企業であれば利息を払いたくないのでお金を借りづらくなります。こうした影響は世の中に出回るお金の量を抑える効果があります。つまり金利を高くするということはインフレを抑え込むために有効な金融政策であり日本以外の各先進国は過度なインフレ状態にありますので、これを抑制するために政策金利を引き上げているわけです。冒頭の話に関わりますが、日本は実態としてデフレ下にあるのに今回金利を引き上げるというおかしな政策をとっていることになります(政府財務省および日銀は正常なインフレと言い張っています)。日本がなぜデフレなのかは少々脱線するのでここでは置いておきます。

実質賃金の低下が続いている状況下で、預金による金利のメリットを享受できる個人または家計はほんの一部でしょう。それよりも現在の日本経済の状況下では、お金の規模と経済効果からして企業の投資が縮小することのデメリットの方がはるかに大きいと思われます。誰かの支出は誰かの収入ですので企業が投資しなくなると下請け・孫請けなどの取引先に行き渡るお金が減り、そうしたところで働く個人の消費も落ち込み、やがて経済全体の規模縮小に繋がります。

変動金利と固定金利

個人レベルでもほぼメリットがない今回のマイナス金利解除ですが、残念ながらデメリットなら大いにあります。それはローンの金利です。とりわけ住宅ローンで説明されることが多いですが、住宅ローンの金利には変動金利と固定金利があります。
変動金利は短期プライムレートという金融機関が企業に融資する際の金利を基準としており、この短期プライムレートが短期金利と連動しています。よって今回のマイナス金利解除は変動金利の利子が高くなることを意味します。住宅は高額な商品ですので、この利息を払うことへの影響は大きいと言えます。
固定金利は長期金利、つまり10年国債の利回りを基準にして決まります。上述のとおり、この利回りの上限も撤廃されているので、こちらも利子が上がっていくと見られています。

日銀がマイナス金利の金融緩和をしていた時は変動金利を選ぶ人が7割以上だったのですが、今では逆転し固定金利を選ぶ人が7割近くになっているというデータもあります。
これは今後日本円の金利が高くなるという憶測が広がっているということです。金利がまだ低い今のうちに固定金利にしておこう、ということですね。

今後の金融政策と金利の動向については誰も断言できませんが、こうした金利の仕組みと世の中の動向や市場の憶測を考えることで預金やローンなどの資産管理の参考にしていただければと思います。

(余談)
日銀の本店は上空から見ると「円」の形をしています。

©Google Earth

ファイナンシャルプランナー 原


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?