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指示待ち社員が自律性を持つために必要な要素をコーチングと経験学習から考える

よく職場において問題視されることとして、指示待ち社員の存在があります。職場におけるコーチングの役割として、このような指示待ち社員に自律性を持たせ、自立できるようにすることがあるのではないでしょうか?そこで、このように他人に依存している社員が自立できるようになるための考え方について書いてみたいと思います。

依存から自立、そして相互依存へ

GROWモデルの生みの親として有名なジョン・ウィットモア卿(Sir John Whitmore)が、こちらのTED Talkにて、子供が経験学習をする過程を紹介しています。その中で、小さな子供が、冬に外に遊びに行きたいと言った時に、親は外は寒いからコートを来ていきなさいと予め注意をせず、経験をする機会を与えるべきだと言っています。予め注意をしないことによって、子供は、自分の意思によって外に出ます。そして、冬の外は寒いということを身を以て経験することになります。そこで、自分の意思でコートを着ないで外に行き、その結果、寒い思いをし、そこから、冬に外に出る時は、コートを着ていかなければいけないということを、自らの経験を基に学習できると話しました。さらに、このような経験が、もし1日に3回あったとしたならば、1年で1000個もの経験学習ができるとも言っています。

また、自らの意思によって何かを実施し、自己責任によって結果を受け止め、そこから学ぶということをすることで、人は、依存(Dependent)から自立(Independent)し、さらに、自立している人同士が、互いに助け会うことで、相互依存(Interdependent)へと人間性が成長できるとしています。このように、自ら決めた行動の結果に対し自己責任を持つことの重要性を認識することが大事であるからこそ、それを促進するコーチングが広く使われるようになったと語っています。

このことから、コーチングとは、自らの意思で物事を決定させ、そこからの学びを促進し、それを繰り返すことで、自律性を高め、依存関係から自立できることを支援する手法であると言えます。

「依存・自立・相互依存」それぞれのステージに対する心構え

マネジメントの真髄をうまく表現している名言として、山本五十六の以下の言葉があります。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

この言葉は、3つの文からできており、マネジメントの観点から考えると、これらは、まさに、「依存」、「自立」、「相互依存」のそれぞれのステージに対しての心構えを表していると言えます。つまり、依存している人に対しては、やり方を見せ、やらせて見て、それを褒めることによって、自立を促し、自立している人に対しては、話を良く聞き、やりたいことを任せてやらせ、チームにおいて重要な役割を自ら担えるようになった人に対しては、感謝をし信頼することで、相乗効果を高めることができると言えると思います。

経験学習を促進する動機付けの法則

人が成長することに対して、モチベーションが高まる要素として、3つの心理的な欲求があると提唱した理論に自己決定理論(Self-determination Theory)というものがあります。この自己決定理論は、心理学者であったエドワード・デチ氏(Edward Deci)とリチャード・ライアン氏(Richard Ryan)によって、1985年に出版された「Self-Determination and Intrinsic Motivation in Human Behavior」という本にて紹介されました。

この理論では、人が成長するためには、以下の3つの要素を感じていることが必要だとしています。

自律性(Autonomy)

自らが、自身の行動や目標を決められると感じていること。

能力(Competence)

自らが、目標を達成するために必要な知識やスキルを持っていると感じられること。

関連性(Relatedness)

行う行動が、皆の役に立つというような関連性を感じられていること。

この理論から考えられることは、指示待ち社員になってしまう原因として、1. 自分が何をやりたいのか、もしくは、何をやって良いのかがわからない(自律性の欠落)、2. その能力に自信がない(能力の欠落)、3. 仕事がどのように全体に関係しているかわからない(関連性の欠落)ということが挙げられるということです。

これに対し、コーチングで利用されるGROWモデルは、目標(Goal)を聞き出すことにより、業務との関連性を見つけ出し、現状(Reality)を鑑みた選択肢(Options)を考え出すことによって、現時点の能力でできることを認識し、自らの意思(Will)で実行することを決めることによって、自律性を高めることができるため、動機付けを促進する上で有効な手段であると考えます。

面白いことに、先ほどの山本五十六の名言も、「やってみせ」から始まる文で、能力の不安を解消させ、「話し合い」から始まる文で、自律性を認識させ、最後の「やっている」から始まる文で、感謝と信頼から周りと関連性があることを伝えるというように、正に、この自己決定理論を踏襲し、モチベーションを高めるためのマネジメントの名言になっていると思います。


現在、GROWモデルといったコーチングおよび内省や経験学習のフレームワークを活用した、目標およびアクションマネージメントシステムを開発しております。製品に関するご意見を募集しておりますので、何かございましたら、以下よりお気軽にご意見お寄せください。


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