ヘーゲル先生(Globe)

1946年宮城県生まれ 東北大学建築学科卒 早稲田大学大学院仏文研究科修 ミユンヘン大…

ヘーゲル先生(Globe)

1946年宮城県生まれ 東北大学建築学科卒 早稲田大学大学院仏文研究科修 ミユンヘン大学東アジア研究所専任講師等を経て、 現在、NPO法人日本論文教育センターGlobe代表理事 著書:英語論文講義(駿台文庫) 深く「読む」技術(ちくま学芸文庫)翻訳:ヘーゲル読解入門(国文社)

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記事一覧

深く「読む」技術ーー解説10

問題点の大まかな考察 ここでは問題点を五つに絞っています。どれも結構長いので、要点だけを取り出します。  ①記者たちは百姓すなわち農民という通念から脱却できない…

深く「読む」技術ーー解説9

徒労に終わった説明 曽々木で調査をしていた網野さんたちのところに新聞記者たちがやってきたので、網野さんが自分たちの調査でわかった興味深い事柄を記者たちに話したの…

深く「読む」技術ーー解説8

百姓円次郎の願書 円次郎の父はもともと船商売を専業にしていた。 松前まで行くといって水子たちと出かけたが、数年たっても帰ってこない。 残された円次郎は父親が借りた…

深く「読む」技術ーー解説7

⑴ 百姓は農民か はじめに「百姓」の読みと意味を記します。これは以下のように読まれ使われます。  ①「ひゃくせい」  ②「ひゃくしょう」 ①「ひゃくせい」の基本義…

深く「読む」技術ーー解説6

§ 訓練の力 上には本の小見出しに合わせて「訓練の‥‥」と記しましたが、これは「練習の‥‥」で構いません。 スポーツなら練習するのは当たり前と誰もが思っているで…

深く「読む」技術ーー解説5

大学ではできない訓練 大学の授業に対しては文句を言いたい人がたくさんいると思います。それはよくわかります。P16L6に記したように、日本の大学では学生に顔をむける教員…

深く「読む」技術ーー解説5

第一講 知識を理解に変える⑴ 百姓は農民か この章は網野義彦先生が書いた『日本の歴史をよみなおす(全)』(2005年、ちくまプリマ―ブックス/ちくま学芸文庫)の第一章…

深く「読む」技術ーー解説4

〇原則の詳しい説明 少し休みました。文庫の小見出しではP14の「自分を組織しなおすには」が説明されている箇所を扱っているのでした。 そこでは「ひとりの人間として感じ…

深く「読む」技術――解説 3

少し間が空きました。このノートと並行して別の原稿を書いており、それがやたら体力を食うやつなので、いったん、休止となりました。 表題も上のように変えました。 ○自…

深く「読む」技術 2

§1 日本の英語教育で自己理解が問題にならないのはなぜか これは面倒な問題ですねえ、全国の在り方を視野に入れて話すとなると、勢い統計的な数字に頼ることになるでし…

深く「読む」技術  1

§01 外国語を習得する際の自分の保ち方 冒頭から身の保ち方の問題が出てきますね。12ページの小見出しの下にある2行です。 「ドイツ語とは異質の言語である日本語を学ん…

深く「読む」技術 0

§1 はじめにこれまで文章の書き方について述べてきました。大学のレポートや論文は結局のところ2パターンを使えばこなせる。これが結論でした。 後は内容をどう考えな…

おしゃべり教室

§8 よくあるレポートの書き方 3行作文の次に、大学でのレポートや論文の書き方でよくある型を説明しましょう。よくあるのですから簡単な型です。 あまりにも当たり前な…

おしゃべり教室

おしゃべり教室

§7 3行作文(続) 前回利用した3行からなる作文を「3行作文」と呼ぶことにしましょう。名前を付けておいたほうが後々便利だからです。 3行作文の特徴 3行作文は、文章…

おしゃべり教室

§6 どうすれば文章が書けるか:最も単純な型:四ステップで一まとまり 前の文章を例に型に整理してみます。 ⑴願望ーーーーーーーーーーーーーー提題   ⑵その理由…

深く「読む」技術ーー解説10

問題点の大まかな考察

ここでは問題点を五つに絞っています。どれも結構長いので、要点だけを取り出します。
 ①記者たちは百姓すなわち農民という通念から脱却できない。何があったから研究所の人たちはこの通念から脱却でき、誤解をふくむ記事を書いた記者たちは何が欠けていたから脱却できなかったのか。
 ②「百姓」ということばが使えないのは「言葉狩り」をする側の問題としても考える必要がある・購買者や視聴者には

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深く「読む」技術ーー解説9

徒労に終わった説明

曽々木で調査をしていた網野さんたちのところに新聞記者たちがやってきたので、網野さんが自分たちの調査でわかった興味深い事柄を記者たちに話したのでしたね。
当時の奥能登の曽々木は辺鄙なところで、わざわざ新聞記者がやってくるところではありません。おそらく記者たちは大学教授の網野さんたちが辺鄙な曽々木というところで調査をしていることを聞いて、新聞記事になるかもしれない、と思いながら網

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深く「読む」技術ーー解説8

百姓円次郎の願書
円次郎の父はもともと船商売を専業にしていた。
松前まで行くといって水子たちと出かけたが、数年たっても帰ってこない。
残された円次郎は父親が借りた借金の取立てに苦しむ。
円次郎は、蝋や油の商売でその日暮らしはできるようになったので、借金の50年年譜にしてもらえないかと、代官に願い出る。

曽々木はもっぱら塩を作るだけの、まことに貧しい村と思っていたが、その一人が松前まで行く廻船交易

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深く「読む」技術ーー解説7

⑴ 百姓は農民か
はじめに「百姓」の読みと意味を記します。これは以下のように読まれ使われます。
 ①「ひゃくせい」
 ②「ひゃくしょう」

①「ひゃくせい」の基本義は「もろもろの人」の意です。
②「ひゃくしょう」の基本義は「農業に従事する人。農民」の意です。

この二点をしっかり頭に留めておいてください。①の「ひゃくせい」は今では殆ど使われないでしょう。
私の経験として高校の漢文の先生の指摘を書い

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深く「読む」技術ーー解説6

§ 訓練の力

上には本の小見出しに合わせて「訓練の‥‥」と記しましたが、これは「練習の‥‥」で構いません。
スポーツなら練習するのは当たり前と誰もが思っているでしょうが、勉強となると「練習」が使われることはあまり聞いておりません。それで「訓練」をもちいているのですが、内容はスポーツで言う練習と何ら変わりがありません。
要は整った論文を書くためにも練習が欠かせないということです。これは小学生なら可

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深く「読む」技術ーー解説5

大学ではできない訓練
大学の授業に対しては文句を言いたい人がたくさんいると思います。それはよくわかります。P16L6に記したように、日本の大学では学生に顔をむける教員がごく一部だからです。
でも、大学教員の方にも学生に対して文句を言いたい人が多い。というよりそれが普通です。
空き時間に教員室で休んでいるとドイツ語の先生がプンプンしながら帰ってきました。まだ半分も時間が残っているときです。
どうした

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深く「読む」技術ーー解説5

第一講 知識を理解に変える⑴ 百姓は農民か
この章は網野義彦先生が書いた『日本の歴史をよみなおす(全)』(2005年、ちくまプリマ―ブックス/ちくま学芸文庫)の第一章「日本の社会は農業社会」の冒頭にある一節「百姓は農民か」の内容から、興味がわいた箇所を取り上げて検討したものです。

この本が書かれてから19年後の現在でも、「百姓は農民か」と訊かれたら、それは当たり前でしょう、と答える人が圧倒的に多

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深く「読む」技術ーー解説4

〇原則の詳しい説明
少し休みました。文庫の小見出しではP14の「自分を組織しなおすには」が説明されている箇所を扱っているのでした。
そこでは「ひとりの人間として感じ考える自分」(P15L1)が最も大切な点でした。その自分を豊かにするためには「自分を意識する機会を人為的につくればよい」(P15L3)とあります。
これだけでは意味が読み取れなくてもおかしくはありませんね。なにしろこれも原則を別の言葉で

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深く「読む」技術――解説 3

少し間が空きました。このノートと並行して別の原稿を書いており、それがやたら体力を食うやつなので、いったん、休止となりました。
表題も上のように変えました。

○自分の保ち方
●この点の核心を欠点として表現するなら
「感じ考える人間として生きている自部とは別のところに、それも学問や日本文化の名のもとに、頭だけで何やら得たいの知れない領域をこしらえ、その領域で考える自分を本来の自分であると錯覚する危険

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深く「読む」技術 2

§1 日本の英語教育で自己理解が問題にならないのはなぜか
これは面倒な問題ですねえ、全国の在り方を視野に入れて話すとなると、勢い統計的な数字に頼ることになるでしょう。
では、大都市圏だけに限ったらどうなのか。それでも大阪と東京とではだいぶ違いがあります。
ネットでよく言われることは、幼稚園から英語を勉強を始め、大学受験まで英語漬け、という子どもの状態です。
これは典型的な子どもの英語学習ですので、

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深く「読む」技術  1

§01 外国語を習得する際の自分の保ち方
冒頭から身の保ち方の問題が出てきますね。12ページの小見出しの下にある2行です。
「ドイツ語とは異質の言語である日本語を学んでいるうちに自分が変わってきていることに、学生たちが気づいていないのです。」とあります。
一度読んでください。次にドイツ語を英語に変えて、自分ならどうだろうと考えてみてください。
中学生なら新しい言語を学ぶことで嬉しくてしかたがない人

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深く「読む」技術 0

§1 はじめにこれまで文章の書き方について述べてきました。大学のレポートや論文は結局のところ2パターンを使えばこなせる。これが結論でした。
後は内容をどう考えながら文をひねり出してゆくかです。内容は世の中の出来事の数だけあります。
それで、私は2010年にちくま学芸文庫から出した『深く「読む」技術』を実
際に私がどのように書いていったかを説明することにします。

成立の過程
この本は学芸文庫から私

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おしゃべり教室

§8 よくあるレポートの書き方

3行作文の次に、大学でのレポートや論文の書き方でよくある型を説明しましょう。よくあるのですから簡単な型です。
あまりにも当たり前な型だから名前もないのでしょう。

それは次のような順番をたどります。

①提示された論題がこれまでどのように論じられてきたかを調べる
②その内容を要約する
③要約する過程で、まだ扱われていない点を見つける

ここまでくれば、残るのは自分

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おしゃべり教室

§7 3行作文(続)

前回利用した3行からなる作文を「3行作文」と呼ぶことにしましょう。名前を付けておいたほうが後々便利だからです。

3行作文の特徴
3行作文は、文章が書けないで困っている人や、どう書き出せばいいのかわからないでいる人に、ヘルプを出しているのです。
その理由は簡単です。どう書き出せばいいのかわからないということは、最初の1文字や最初の1文が思い浮かばないから困っているわけですね

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おしゃべり教室

§6 どうすれば文章が書けるか:最も単純な型:四ステップで一まとまり

前の文章を例に型に整理してみます。

⑴願望ーーーーーーーーーーーーーー提題  
⑵その理由ーーーーーーーーーーーー理由提示 
⑶理由を具体的に根拠付ける例ーーー理由の根拠提示    
⑷理由とその根拠から生まれる結論-結論・冒頭に戻って⑴の正当性主張

⑴の願望は希望でも願いでも構いません。とにかく自分の方で親に何かしてほし

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