深く「読む」技術ーー解説9
徒労に終わった説明
曽々木で調査をしていた網野さんたちのところに新聞記者たちがやってきたので、網野さんが自分たちの調査でわかった興味深い事柄を記者たちに話したのでしたね。
当時の奥能登の曽々木は辺鄙なところで、わざわざ新聞記者がやってくるところではありません。おそらく記者たちは大学教授の網野さんたちが辺鄙な曽々木というところで調査をしていることを聞いて、新聞記事になるかもしれない、と思いながら網野さんたちのところへやってきたのだろうと推測します。
しかし網野さんの話はなかなか理解されなかったのでしたね。記者たちにとっては「百姓」が何なのか、これがなかなか理解できなかったのでした。
それでも、網野さんはおもしろい記事が出るだろうと楽しみにしていたのでした。ところが翌朝、新聞を読むと、見出しには「農民も船商売に進出」などのような誤りが書かれていたとあります。
二時間の悪戦苦闘、何回かの電話はほとんど徒労に終わってしまいましたと網野さんは書きます。
なぜ記者たちは間違いをしたのか、その理由を網野さんは百姓は農民というイメージの根深い浸透にあると見ています。
わかったつもり
ここまでが網野さんの文章からわかることです。私はそれだけではなく「わかったつもり」が新聞記者たちの間違いの根底にあると理解しました。それを整理して考察しようというのが以後の内容です。
今日はこれまでにします。
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