深く「読む」技術 0

§1 はじめに

これまで文章の書き方について述べてきました。大学のレポートや論文は結局のところ2パターンを使えばこなせる。これが結論でした。
後は内容をどう考えながら文をひねり出してゆくかです。内容は世の中の出来事の数だけあります。
それで、私は2010年にちくま学芸文庫から出した『深く「読む」技術』を実
際に私がどのように書いていったかを説明することにします。

成立の過程
この本は学芸文庫から私の翻訳したアレクサンドル・コジェーウ”著『ヘーゲル読解入門』の文庫化をしたいという申し出からはじまりました。
文庫化は種々の理由から不可能になったので、それじゃ、私が何か1本書きましょうか、ということになって生まれたのです。
当時の私の文章は息が長い。なんせフランス語のコジェーウ”の文章が息が長い。それを500ページ弱翻訳したのですから、その癖が残っていたのです。
学芸文庫の編集者はそれを逐一指摘しては短い文を書いてくれました。
今度は私が大学生の受講生にその原稿を送り、何でも構わないから気づいたことを書いて欲しいと頼んだのです。
結局、
私の原稿→編集者の手→私の修正→学生のコメント→それを取り入れた修正
こうしたプロセスを経て1ページが一応のところ完成したのです。
エピソードが9つありますから、エピソード毎にこれを繰り返していったわけです。
実際には本にした原稿の倍くらいを書いたのですが、最後に最初から最後まで一本筋を通そうとなって、それに該当しないのは没にしました。今でも私もパソコンのどこかに眠っているでしょう。

編集者は、読者はわかったつもりにはなれるが、それ以上の理解に進まない、それを何とかしたい、と言うので、自分の文章に自分で解説を書きました。
最終的に「エピソード」は「第〇〇講」、解説は「補講」とことばが硬くなりましたが、やむをえません。私は原稿は書くが売り方をしらない。売り方のプロが私の原稿にどんな脚色をするかは学芸文庫にお任せしました。

以上がこの本の成立過程でお伝えしておいた方がよいだろうと思われることです。ご質問があれば、お答えいたします、



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