深く「読む」技術ーー解説5

大学ではできない訓練
大学の授業に対しては文句を言いたい人がたくさんいると思います。それはよくわかります。P16L6に記したように、日本の大学では学生に顔をむける教員がごく一部だからです。
でも、大学教員の方にも学生に対して文句を言いたい人が多い。というよりそれが普通です。
空き時間に教員室で休んでいるとドイツ語の先生がプンプンしながら帰ってきました。まだ半分も時間が残っているときです。
どうしたのかと尋ねると、「学生が勉強しない!」という返事が返ってきました。

こうしてみると、お互い様ですね。学生は勉強したい気持ちがないわけではない。しかし受講する全科目を納得いくまで勉強することはできない。当然、勉強しないままに授業に出る。
教員とて教えたくないわけではない。でも、授業についてくる学生が非常に少ない。自然、熱意が消えてきます。
ではどうすればよいのか。今の大学の授業形態を変える以外にないでしょう。それには金が必要です。なにしろ教員の数を倍にしなければならないからです。しかし倍にしたところで質の良い教員が必要な数だけ集まるわけではない。
簡単な手はなく、ないままに学生は一年過ぎれば学年が一年上がり、いずれ卒業する。卒業してからもっと勉強していればよかったと思う。あるいは大学のことなどは念頭から消えて、仕事に邁進する。

何かが足りない
それは何でしょう。なぜ勉強するのかについて自分なりの答を出していないことです。「あっ! これはやらねば!」となってみずから勉強を始める。
そうなって初めて、勉強する内容が心に入ってくる。
教員は学生がそうなることを待っているのです。
今でも思い出すことがあります。フランス語の授業の最後、だから二年の最後ですね、先生が「単位は落としませんから。学部に行ったら勉強してください」と言ったことです。
その先生は当時の私たちのような不勉強な学生を教えるにはもったいない先生でした。立ち居振る舞いにスキがない。学生は「単位は落としませんから」という予想外のことばに、我に返ったのでした。

大学の授業に対する不満に関しては、これで充分ではないかと思います。次回は次の段落に進みます。
基本的に一段落毎に進めていくことにしましょう。今日の段落は強いて説明しなければならないことがなかったので、授業への不満を取り上げて、どう考えればよいのかを綴りました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?