深く「読む」技術 2

§1 日本の英語教育で自己理解が問題にならないのはなぜか
これは面倒な問題ですねえ、全国の在り方を視野に入れて話すとなると、勢い統計的な数字に頼ることになるでしょう。
では、大都市圏だけに限ったらどうなのか。それでも大阪と東京とではだいぶ違いがあります。
ネットでよく言われることは、幼稚園から英語を勉強を始め、大学受験まで英語漬け、という子どもの状態です。
これは典型的な子どもの英語学習ですので、架空の事例かもしれませんが、この状態を事実として受け止め、考えてみます。

幼稚園から英語漬けで英語は身につくか
結論から入れば、NO!です。大学に入る前に英検1級を取ったり、英語は話せるから授業は英語でやってくれと要求する学生もいるそうです。
ですが、こういう生徒学生に自分で内容を英語で考えて、そして英語で話してくれと要求すると、シーン!
おかしいですね。では、何がおかしいのでしょうか。数千の英単語、数千の文法事項、それが全然生かされていない。
勉強の仕方が悪いのでしょう。

外国語は1年で習得可能
私の経験は大学生しかありませんが、高校生でも可能なはずです。
基本単語1000と基本文法を1年で身に着けることは、さほど困難なことではありません。
フランス語教師と日本語教師を合わせて15年ほど続けてやっとわかったことですが、簡単に言えば教師が教壇から降りればよいのです。

外国語習得の1サイクル
並びあった席の二人組で教科書にある仏文を言う。片方は教科書をみないでそれを聞いて反復する。
数行のまとまりからなるお話をそのようにして繰り返したら、今度は数行全部を一気に話をする。できたら、逆をやる。
それができたらもう頭に入っている仏文を見ないで書きとる。最後に書き取りのテストをする。
ただ、学生の助力も必要です。恥ずかしがって学生が話そうとしなければ失敗になります。
教師は何をしているかというと、最初にテクストの仏文と文法を一通り説明する。次いで、お話一つ毎に読んできかせる。
それから学生たちの格闘が始まるのです。躓いているグループがあれば、手助けする。教師は室内を回りながら、学生たちの動きを見ているわけです。
このやり方で大学の語学教科書を2ページくらい進むことができます。

自己理解に至るには
でもこれでは自分の身の持ち方を変えるところまでは進んでいませんね。日本の大学での経験は長くないので、学生たちがどう変化するかを見届けるところまでは行きませんでした。
高校の段階で、生徒の方から勉強の仕方を変えるよう、教師に要求してもいいのではないかと思っています。
でなければ、いつまで経っても、身の持ち方が変わるところまで、学生たちは行かずに終わっています。

自分が変わるということは?
これまで色々の言語を習得した人々に出会ってきました。ですが、学んだ言語とその文化を身に着けていると感じたのは、日本ではマイナーな言語を身に着けた人々でした。
アラビア語やヒンディー語のような言語を身に着けた人々です。あの人たちは何を話すにつけ、自分の言葉を話していたのです。

それに比べるとフランス語を話していた人たちは惨憺たるものです。洋服もフランス風にスラックスの方を裾ヒロにして意気揚々としていました。
ですが、学があり過ぎるのか、フランスの作家などについては滔々とはなします。ですが、で、それで、その人はどんなことをやった人なんですか、と訊くと、なにやらはっきりしない返事になります。
何語を学んでも、自分の言葉を話せるようになりたいものです。

今日はテクストの説明に入らずに終わりました。次回は入ろうと思います。

                 NPO法人日本論文教育センターGlobe
                 今野 雅方

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