おしゃべり教室

§7 3行作文(続)

前回利用した3行からなる作文を「3行作文」と呼ぶことにしましょう。名前を付けておいたほうが後々便利だからです。

3行作文の特徴
3行作文は、文章が書けないで困っている人や、どう書き出せばいいのかわからないでいる人に、ヘルプを出している
のです。
その理由は簡単です。どう書き出せばいいのかわからないということは、最初の1文字や最初の1文が思い浮かばないから困っているわけですね。
3行作文はその1文字や1文が出されています。だから困る必要がないのです。

提題と年齢との関係
3行作文は誰でも使える簡単な物事の表明方法です。でも年齢との関係はやはり考慮しておかなければなりません。ディズニーランドの件を例に少し検討してみましょう。

小学2年生の場合
ねえ、ねえ、ディズニーランドに連れてってよう!
だって今年はいっぺんも行ってないじゃないか。
去年は2回も行ったんだよ。

この例は小学2年生が話すのであれば、おかしくありませんね。しかし同じ内容を二十歳の大学生が語るとしたらどうでしょう。
上の3行文をそのまま大学生が語るのは変ですね。
じゃあ、言葉遣いをもっと大人びた表現に変えたらどうでしょう。

二十歳の大学生の場合
ねえ、ディズニーランドに連れていってくれませんか?
今年は一度も行ってないですから。
去年は2度も連れていってくれたではありませんか。

何ともヘンテコな文章ですね。もっと整った文章を書ける人がいるかもしれませんが、今はこの文章を利用して考えてみましょう。一体何が変なのでしょうか。
大学生でもディズニーランドに行くことを楽しみにしている人はいるかもしれません。でも、そういう人が上にように話すでしょうか。
おそらく母親にこうお願いしているのでしょう。でも話すのは二十歳の大学生です。
自分の希望を真っ先に話し出すよりは、まずはじめに、今度の祭日はどうなっているの? と母親の状況を考慮する文が出てくる方が年齢相応の配慮が含まれたことばになりますね。
弟や妹がいるなら、その子たちのことを先に考えるのが、これまた自然な在り方です。たとえば、「弟はしばらく楽しいところへ連れてってもらってないけれど、お母さんそんなに忙しいの?」などと話し始める。

このように考えていくと、二十歳の大学生が前回挙げた3行作文を自分で言うことは、おそらく普通はないのではありませんか。
3行作文は型は同じ内容は個別
3行作文は型は同じでも、内容は人により年齢により、違ってきます。当然、文章も違ってきます。
これまでの話は大学教授のボヤキから始まっていました。レポートの課題は出しているでしょう。ということは3行作文の最初の提題の部分はすでに教授が出しているということです。
小学3年生なら、3行作文の型を身に着ける練習をする意味があります。なぜって、最初はなかなか書けないからです。
それで、最初の文について、私とおしゃべりします。おしゃべりをしているうちに、だんだん子どもの頭のなかが整理されて、どう書けばよいのかがわかり始めます。
でも、大学生がレポートを書くとなると、話は変わってきます。出された主題について、これまで書いた自分のノートでは足りず、図書館で調べる必要が出てくるでしょう。
ネットで調べることも可能ですが、ネットの記事は案外内容が薄い。ネットの記事は百科事典のようなものです。大学生の書くレポートの材料としては不足です。
百科事典で調べたことを基礎に、専門書に手を出す必要が出てくるでしょう。一旦そんなことを始めると、途端に疑問百出です。教授には質問攻めが始まります。
それでこそ大学での勉強です。教授には学生がこうなるよう導く必要があるわけですね。教える方も教えられる方も苦労の連続です。
本当にわかろうとすると、簡単なやり方はないのが実情です。

今日はここまでにしましょう。なお、4行作文は3行作文に作り変えました。4行目はダメ押しでしつこいと思われかねないからです。家庭でのお母さんとのやり取りでこの「しつこさ」が出てきたら、お母さんが指摘するでしょう。


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