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登場する弁護士のモデルは宇都宮けんじ先生!宮部みゆき【火車】社会派ミステリー

ぜひ読んでほしい社会派ミステリー小説です!

宮部みゆきさん『火車』(新潮文庫)

かしゃ、と読みます。

☆あらすじ

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性、栗坂和也に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになります。

ふとしたことから、栗坂和也は、婚約者である関根彰子が過去に自己破産をしていたことを知ってしまいます。

そのことを問いただされた彼女は、「いろいろと深い事情があって、すぐには話せない。少し時間をくれ」という趣旨のことを言ったのですが、翌日には失踪してしまったのです。

当初、どうせ友人の世話になってるとかですぐに見つかるだろ、と高をくくっていた本間俊介。ところが、調べていくうちに予想もしない事態に巻き込まれていく…!

☆火車とは?

山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作小説です。

犯人当てをしたりトリックを解いたり、といったタイプのミステリーではありませんが、重厚な社会派ミステリーで、宮部みゆきさんの濃密な筆致による人間模様を堪能できます。

タイトルの『火車』は、宇治拾遺物語などにも登場する日本の妖怪です。悪行を積み重ねた末に死んだ者の亡骸を奪うと言われています。また、家計や経済状況が苦しい様子のことを「火の車」と言いますね。まさにこの小説のタイトルにふさわしい言葉です。

「火車の、今日は我が門を 遣り過ぎて、哀れ何処へ、巡りゆくらむ」
とは、拾玉集に収められた和歌です。作中にも登場します。

本書が出版された1992年には、まだYouTubeもTwitterもインターネットも利用されてはいませんでした。それどころか携帯電話すら一般人の持ち物ではありませんでした。ですから、情報収集の手段がちょっとまどろっこしく感じるかもしれません💦

また、今の基準からすると、個人情報の扱いが緩く感じられる場面もあります。

ま、古き良き時代の話ということで😝

☆宇都宮けんじ先生がモデルの正義の弁護士が登場!


関根彰子の行方を捜す過程で、彼女が自己破産の手続きをするときにお世話になった弁護士、溝口悟郎を二度ほど訪ねるのですが、実はこの溝口弁護士は、都知事選の候補者である宇都宮けんじ先生がモデルなのです。

宮部みゆきさんは『火車』の執筆にあたり、宇都宮けんじ先生に取材をしているのです。(ちなみに宮部みゆきさん自身、法律事務所で事務をしていた経緯があり、破産事件などに携わっていたようです。)

作中でも、「現代のクレジット・ローン破産というのは、ある意味では公害のようなものでもあるのですよ」のセリフや、クレジットやローンの仕組みを丁寧に説明する描写などから、多重債務者に寄り添い、社会を変革しようとする宇都宮けんじ先生の姿勢が表れています。

『火車』が出版されたのは1992(平成4)年です。宇都宮けんじ先生は既にこの頃には、社会的弱者に寄り添う社会派弁護士として認知されるほどの活動をしていたわけです。

☆自己責任論の嘘


作中、宇都宮けんじ先生(をモデルとする正義の弁護士、溝口先生)が、

自己破産した関根彰子が決して金遣いの荒いだらしない女性なんかではないと、誤解を解こうとして30ページ以上(文庫版)に渡ってクレジットやローンなどの仕組みを主人公に説明する場面があります。

ミステリー小説としてはかなり異例なのではないかと思います。

社会悪について延々と解説がなされるわけですね。

その中で、次のような説明をしています。

主人公の本間俊介は、交通事故で妻を亡くしています。

相手のトラック運転手は居眠り運転でした。しかし、居眠り運転に追いやったのは、そういう勤務状態においた雇い主にも責任の一端はあります。

また、大型トラックと普通自動車が一緒に走行するような道路に、衝撃を受け止める中央分離帯を作らなかったのは行政の責任です。

道路が狭いのは自治体の都市計画が悪いからですし、地価が途方もなく高騰している(当時)からでもあります。

このように考えていくと、一件の交通事故にも様々な要因や改善点が多々あります。

仮に、今ここで、それらを全部棚上げして、

「でも結局は、事故を起こすのは、そのドライバーが悪いからだ。被害者も加害者も同じことだ。まともな人間なら事故など起こさない。事故に遭うのは、そのドライバーに欠点があったからだ。現に事故に遭っていないドライバーはたくさんいる」

と言われて納得できるか、と問いかけます。

多重債務者をひとまとめにして、「人間的に欠陥があるからそうなるのだ」と断罪するのは易しいことだが、それでは問題は何も解決はしない。社会の仕組みそのものを変える必要があると、そのように説くのです。

1992年当時の辞書には、まだ「自己責任」という言葉は掲載がありません。そして宇都宮けんじ先生が都知事選に初出馬するのは2012年ですから、この当時はまだ、自分が選挙に出るなんておそらくは考えていなかったものと思われます。

しかし、そのご主張は、およそ30年経った今も当時もまったく変わっていません。「自己責任」という言葉が生まれる前に、既に宇都宮けんじ先生は「自己責任論の嘘」を喝破しています。

社会的弱者にとことん寄り添う姿勢は昔からお持ちだったのです。

不覚にも、ミステリー小説のこの部分を読みながら涙してしまいました😭

優れた小説は、時にノンフィクションよりも鋭く世の中を抉り出せる場合があります。『火車』は、そんな小説の可能性を私に教えてくれた1冊です🔥

☆まとめ

本人の「自己責任」にしてしまうのは問題の矮小化。それでは社会問題は何も解決はしない。

宇都宮けんじ先生は、「自己責任」という言葉が生まれる前から「自己責任論の嘘」を喝破していた!

『火車』のように、優れた小説は時にノンフィクションよりも鋭く世の中を抉り出せる場合がある!🔥

コロナ禍は、自己責任を声高に主張する新自由主義に基づく日本社会の脆弱性を顕わにしました。今こそ、社会的連帯と支え合いを重視する優しい社会へと転換する必要があると思います。1992年に書かれた『火車』を読んで、私はますますその意を強くしました。

社会的弱者やマイノリティーに優しくできる社会は、社会的弱者やマイノリティーだけでなくあらゆる人にとって生きやすい、未来に希望が持てる社会だと思います。

このままだと、自己破産の過去を持ち失踪した関根彰子さんは、明日のあなたの姿かもしれません😱

30年以上もブレずに社会悪と闘い困っている人に親身に寄り添い続けてこられた宇都宮けんじ先生の姿勢と、そこに着目してすばらしいミステリー小説にまで昇華させた宮部みゆきさんに、心よりの敬意を表します🙇‍♀️古い小説のはずなのに、その問題意識は今なお、むしろ今だからこそ通用する先見性を感じました。ぜひ多くの方に読んでほしいです🧡


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※アヤ先生のワンポイント雑学🙇‍♀️

✅宇都宮けんじ先生は幼少の頃は野球選手になってたくさん稼いで親を楽させたいと考えていた!

✅宇都宮けんじ先生はどちらかというと猫より犬派!🐶

✅宇都宮けんじ先生の時代、東大の学費は月にたった1000円だった!

…犬だけにワンポイント雑学、なんちゃって😝💕

この雑学が、あなたにとって大吉でありますように💖

女の子と犬


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