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最高裁で相次ぐ不当判決!今こそ考えたい【同一労働同一賃金】【働き方改革】

昨日13日、相次いで2つの重要な最高裁判決がありました。

「同一労働同一賃金」を定めた働き方改革関連法が一部施行された4月以降では初となる最高裁判決。今や非正規で働く労働者は2100万人を超え、労働者の10人に4人の割合に及んでいます。そんな非正規労働者の待遇の在り方に影響を与える可能性がある判決として注目されていました。

結果は2件とも、非正規労働者に不利な判決内容となりました。それぞれ、「ボーナスが支給されないことは不合理な格差とまではいえない」「退職金の不支給は不合理であるとまでは評価できない」とする判断が示されました。いずれも、支給を一定限度で認めていた高裁判決を覆しての逆転敗訴でした。

この記事では、この機会に「そもそも同一労働同一賃金とは?」ということをおさらいするとともに、2つの判決が出た背景について考察してみます。

☆「同一労働同一賃金」とは?

「同一労働同一賃金」とは、同一の仕事・職種に従事する労働者に対しては、性別、雇用形態(フルタイム、パートタイム、派遣社員など)、人種、宗教、国籍などに関係なく、同一水準の賃金が支払われるべきだという概念です。

男女平等もその中に含まれますが、もっと広い概念です。日本では、非正規と正社員の待遇格差がよく問題になります。昨日の2つの最高裁判決も「退職金」と「賞与(ボーナス)」に関する格差の問題でした。

国際労働機関(ILO)では、「同一労働同一賃金」の原則をILO憲章の前文に挙げており、基本的人権の一つとして位置づけています。

また、世界人権宣言の第23条には、「すべての人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する」と規定されています。

さらに国際人権法でも、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の第7条、及び「人及び人民の権利に関するアフリカ憲章」の第15条、それぞれにおいて「同一労働同一賃金」が明記されています。

まあ早い話が、「同じ仕事をさせているのに正社員はボーナスも退職金も支払われて給料も高いのに、アルバイトやパート職員は安い時給でこき使われて、ボーナスも退職金もない」みたいなのはダメだよね、という考え方です。

世界的には常識なのですが、日本ではこれから着手が始まる感じですし、今回の最高裁判決はむしろその取り組みを大きく後退させる内容であったと言わざるを得ないでしょう💢

☆「同一労働同一賃金」の歴史は古い

日本では、最近になって「同一労働同一賃金」という言葉を聞いたという印象があると思いますが、実は世界的には非常に歴史と由緒のある概念です。

なんと、その起源は1919年のヴェルサイユ条約です。

ヴェルサイユ条約において「同一価値の労働に対しては男女同額の報酬が支払われるべき原則」が提起されたのを受け、ILOは1946年の「ILO憲章」で「同一価値の労働に対する同一報酬の原則」を前文に挙げ、同一労働同一賃金の理念を重要な原則の1つとして位置づけました。

ですから、「同一労働同一賃金」は実は既に100年の歴史を持つ概念だったのです。むしろ日本では言われるのが遅すぎたくらいです。

EUは1997年にパートタイム労働指令を定めて、雇用形態を理由とした賃金格差を禁じています。やっぱりヨーロッパは凄い!住みたい!🧡

フィンランドのオーロラ

☆着手は民主党政権!

「同一労働同一賃金」は安倍前首相が始めたと皆さん思っているでしょうが、実はそれは違います。

日本における「同一労働同一賃金」の元祖は民主党政権です。

民主党政権時代に、次の条文が法改正により誕生しました。「(旧)労働契約法20条」有名な条文です。

(旧)労働契約法20条

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

…やや長い引用でしたが要は、雇用期間が無期か有期かで労働条件が異なる場合(典型例は非正規と正社員)、業務内容や責任の程度などを考慮した上で、両者の待遇格差が「不合理ではならない」と規定しています。

※2018年に改正パートタイム労働法に統合されたので、現在では労働契約法20条自体は削除されました。ですので(旧)と表記しています。

この条文を武器として、非正規労働者が全国各地で裁判を起こし、格差是正を求め始めたのです。民主党政権が労働待遇の格差是正に大きな風穴を開けたのです!

☆ちょっと脱線

話は脱線しますが、民主党は悪夢どころか、「失われた30年」のうち唯一オアシスだった3年間を提供してくれました。

✅証拠1

民主党の功績

✅証拠2

日本の凋落ぶりがよくわかる衝撃的な動画です。

「世界の一人当たりの名目GDP 国別ランキング TOP30」

最初は上位にいる日本。しかし徐々に順位を落としていき、2005年(小泉純一郎政権)で、ついにランキング外となってしまいます。

ですが、民主党政権下の2009年~2012年の間だけ、ちゃんとランキングに復帰するのです。ぜひその目でご確認ください!

…閑話休題😝

☆忖度する裁判所?

(旧)労働契約法20条は民主党政権下で法改正により作られましたが、施行日は2013年4月で、自民党政権に移行した後でした。

だから、とは断言できませんが、裁判所はせっかくのすばらしい条文を非正規労働者のために積極的に活かそうとはせず、むしろできるだけ企業側の有利に解釈・運用しようとする裁判例が多く出てしまいます。

✅「労働条件の相違は、両者の業務内容及び責任の相違等に基づく合理的なもの」(メトロコマース)

✅「定年後再雇用として新たに有期労働契約を締結するものであり、「期間の定めがあること(嘱託社員であること)」を理由として労働条件の相違を設けているわけではない」(長澤運輸)

などなど😭

☆最高裁判決の受け止め

今回の最高裁判決も、その延長線上として捉えることができると思います。せっかくリベラル系の党が頑張って立法しても、裁判所が立法の趣旨を没却し企業の味方をしてしまうのでは労働者の権利は守られません。私のみならず、福島みずほ党首(社民党)もご立腹です💢

最高裁判決は国会における立法趣旨と異なっている、という非常に重く受け止めるべきご説明をされています。ぜひ動画をご視聴ください!🙇‍♀️

また、山添拓議員(共産党)が鋭いご指摘と力強い宣言をされています!

ぜひとも縦横無尽に動いて暴れまわっていただきたいと期待します😝

労働事件を数多く手掛け、ブラック企業被害対策弁護団代表も務める佐々木亮弁護士も、強い懸念を示しています。

今回の事案でボーナスや退職金を支給しなくてもよいのであれば、事実上(旧)労働契約法20条(改正パートタイム労働法9条)を適用できる場面がなくなってしまい、結局はアルバイトやパート、派遣労働者にボーナスや退職金が支払われることなどなくなってしまうのではないかと危惧します。

判決のあと、原告の50代の女性と弁護団が東京都内で記者会見を開き、それぞれ以下のように語っています。

✅原告となった女性

「4割が非正規と言われる中で少しでも格差を無くそうと法律はできたはずです。同一労働同一賃金(という理念)の下、少しずつですが、非正規にもボーナスを払うという流れにある中で、裁判所がどうしてブレーキをかけるのか理解ができません。本当に悔しいし残念で言葉がみつかりません」

✅弁護団の鎌田幸夫弁護士

「パートタイム・有期雇用労働法や同一労働同一賃金の(厚生労働省の作成による)ガイドラインの考え方からしても明らかにおかしい。時代の要請、実態、政策の流れに対して、ある意味では大きく遮る、流れに反するような判決だと思う」


まるで「正社員は有為な人材だが非正規は有為じゃない人材だから、不合理な格差ではないのだ」と読めなくもない最高裁が示した理論には多くの専門家からも疑問の声が出ています(有為人材確保論、とも言われます)。

これではまさに差別意識そのものです。このような差別を克服しようと努力してきたのが世界の趨勢であり、民主党政権下の立法であったわけですが、最高裁は一気に時を戻し、人類が積み上げてきたすべての努力を水泡に帰してしまった感があります。

ベッドでお菓子を食すエモい女の子

☆悲観ばかりしても仕方ない

参考までに、現在の最高裁判事は15人全員、第2次安倍政権下で入れ替えられたメンバーである、という事実はぜひ伝えておきたいと思います。中にはあの加計学園の弁護人だった人も

まあこの話をしだすと本題から逸れて長くなるので、興味ある方はググってみてください😝

2件とも高裁では一部勝訴の判決でした。それぞれ正社員と比較して「ボーナスの60%」「退職金の25%」の支払いを命じる判決が高裁の判断でした。ところが最高裁がわざわざそれを覆して、労働者側の全面逆転敗訴となってしまったのです。ただならぬ悪意を感じざるを得ません。

不当判決

ただし最高裁判決と言っても絶対的なものではなく、あくまでも「このケースにおいては、退職金やボーナスの不支給が違法とまでは言えない」と認定された、というだけの内容です。「払わないことが正しい」と言っている判決ではありませんし、今後いかなる企業も払わなくてよいというわけではありません。

最高裁自身も、判決理由中で「ボーナスや退職金の不支給が違法と認定される可能性」について言及することで企業側にも一応は釘を刺しています。ですのであまり悲観し過ぎても仕方ありません。

また、(旧)労働契約法と現在の改正パートタイム労働法では条文の書きぶりや要件等が異なっているため、今回の最高裁判決がそっくりそのまま今後も基準になるかどうかは不透明です。(今回の事件は(旧)労働契約法が適用になる事件でした。)ですので現行法の解釈については、これからじっくりと裁判例が積み重ねられて形成されていくのです。

とはいえ、いつまでも時代錯誤な不当判決を出させておくわけにもいかないので、山添拓議員の仰るように政治を動かす必要はあると思います。いつもの結論で恐縮ですが、政権交代ですね😝

☆まとめ

✅世界では「同一労働同一賃金」は100年前から言われており、常識になっている

✅日本における「同一労働同一賃金」の元祖は民主党政権!

✅今のままだと非正規労働者の権利が十分には守られない虞が高いので政治を動かす必要がある(政権交代!)

とりあえず、「アルバイトや契約社員はボーナスや退職金なんかなくて当たり前」と思っている人がいたら、それは時代錯誤も甚だしいですし、世界的にはむしろ非常識であり得ないことなんだと教えてあげてくださいね。

そもそも諸外国では非正規労働者そのものが少ない、という側面にも注目してほしいです。参考画像をどうぞ。

派遣会社の事業所数

人材派遣会社の事業所数を表したグラフです。一目瞭然、日本は断トツ世界一です。日本は人身売買大国だったのです!💢これも新自由主義の度が過ぎた、なれの果ての一側面です。そもそも、4割が非正規って異常でしょう。

本当の意味で働き方改革をするためには、とりあえず政権交代による政治改革が必要なのです。声を上げましょう!またねー🧡


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