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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2023年3月の記事一覧

詩)海豚を喰らう

詩)海豚を喰らう

初めて海豚の刺身を喰った時
「海豚の肉なんか都会のひとは食べたことねえだろ。最近はなかなか新鮮な海豚の刺身喰わせるところも少ねえからなあ!」と義母は自慢げに話した
 
大船渡線・通称スーパードラゴンはくねくねと走り 大船渡湾の内側の下船渡にある彼女の実家は海のすぐそば 塩風の乾涸びた匂いと隣の肥料工場の鼻先にツンとくる匂いが交じり合っていた 義父の大船渡弁はモゾモゾと意味は分からず「まあ飲めまあ飲

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詩)中目黒のルーシーとチャーリーブラウン

詩)中目黒のルーシーとチャーリーブラウン

ルーシーとチャーリーブラウン 中目黒駅で待ち合わせ
お決まりのように ルーシーは5分遅れてやって来て さ行きましょ とチャーリーに目で合図 
「3年ぶりだね」ずっと前に会ったきりのような気もするし昨日会ったばかりのような気もするよとチャーリーはニコニコ話すんだ
3年ぶりに中目黒のカフェ そこは木製のドアを開けると外階段から二階に上がるお洒落なところさ
ルーシーはさっと席に着く 綺麗なハンカチを膝に

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詩)帰還

詩)帰還

誰から言われたのだろう
いちばん好きなことを仕事にしてはいけない

なぜ自分は生まれ なぜこうやっているのだろう
なぜ わたしは自分を遡ってはいけないのだろう

ある選択をすることで誰かを傷つけてしまった
そこに悪意はなくとも そこにあった究極

誰から言われたのだろう
いちばん好きな人と一緒にはなれない

時間の経過が 問いかける
破綻しても愛していたのかと

匂いもせず 目にも見えず 五感には

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詩)花びんの移ろい

詩)花びんの移ろい

〈死に方も含めて人生なんじゃないですか〉

下北沢のアンティークショップ
格子柄の円柱の花びんを女房がみつける
棚からとって手触りを確かめる
いいねこれ
値段を見る 1100円
安いね
その隣にもう少し小ぶりのヴィンテージと札の付いた花びんがある
両方を手にとり
ねえどっちがいい?
う~ん どっちと聞かれたらこっちかな
ヴィンテージの方を指さす
二つを手にとって値段を比べ
上げたり下げたり

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詩)プリプリ

詩)プリプリ

二人で酔っ払い
帰って来て
女房がもう眠いとかいう
寝ていいよと言い
ねえ わたし惚けたらね
どうする?
うん オムツ変えてあげるよ
ほんとに?
ほんとに お尻も拭いてあげる
じゃあ
お尻 プリプリ!

お尻プリプリ
惚けと惚れは
似てます