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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2022年9月の記事一覧

詩)嗜 大船 日本酒バー

詩)嗜 大船 日本酒バー

歌うたいは 孤独
どうしたら 慰められる
あんなにも笑い 打ち解け
飲みながら 分かち合い
感じた この夜の最後

男は今日も なにか 
よくわからないものに
囚われていた
どうしようもなく
分かち難い 
感情の先

女は過去に 囚われていた 
どうして いつまでも
昨日の亡霊に付き纏われる
そう思いながら
明日がどうしても
昨日の影になる

酒場は今日も大盛り上がり
いろいろな人生が聞こえ
いろ

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詩)してもらうんです

詩)してもらうんです

してもらうんです
初めて川に入るのです
少し流れの早い清流は
冷たくとよとよとうねっております
足を入れることが
出来なくて
川の前で石の上
裸足の親指だけ濡れている

してもらうんです
隣の子が手を繋いで
黙って繫がりながら
川に入りました
受けいれたのです
一緒に入ります
そうやって
してもらって
ここにあるものを受け入れ
生きていくのです

してもらうのです
生きる最期の時
自分では排泄も出

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詩人・作家の万里小路譲さんから詩集評いただきました

詩人・作家の万里小路譲さんから詩集評いただきました

詩人で作家、山形県詩人会副会長の万里小路譲さんから詩集「声をあげずに泣く人よ」への本格的詩集評をいただきました。
私たちは今ここにいて、この世のことを知っているように思っている。果たしてそうだろうか。むしろ知らないのではないか。氏は詩集から巻末詩の「天国への扉」を白眉と評価 し、冒頭の「断絶」と結び、身勝手な経済成長に身を任せ、環境破壊に手を貸した人間と「どんな知識も 美しい詩集も 人生そのものも

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詩)死化粧

詩)死化粧

弟の死顔は苦悶の暴悪大笑面であった
歪み  叫び  裂け  はみ出し
十一面観音の裏の顔
妻と二人だけの秘密にした 顔の上に写真を被せてもらった 死顔は穏やかな写真となった

「なんやその態度は!ええ!」少し身体が大きくて動きの鈍い店員に 客が怒鳴り続ける声が店に響く
立ち食いうどん屋の店内で 店員が立ちつくしていた

「お客さん帰ってくれるか。」
「なんやおまえ、客に向かって帰れっ言うんかあ!」

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