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げん(高細玄一)「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行中!
2021年5月21日 17:14
昨日 美しい人に今日 老いを感じたうなだれた芒(すすき)から雨の滴が落ちるからす瓜がぽつんと一つなっている言葉にはしなかった ただの一度も赤銅色の月をただ眺めるように燕の舞い 鳩の唄 紫陽花のしずく美しい人
2021年5月20日 17:30
あの時、オレは新聞配達をしながら大学に通う、貧乏学生だった嵐電(嵐山電鉄)でオレは一人の女に出会った西陣織の織工で、自分の宇宙を持っている、不思議な女だった>織工に休みはないの、365日働くのよ。そうやって織り上げた反物も、たったひとつの傷でキズモノ扱いになる。それでも織工は黙って受け入れるしかないのよ、反物の運命を愛も恋も語らず 俺たちは嵐電の駅から駅の間、語り続けた高橋和巳『
2021年5月18日 19:04
夏草大きな手術をして一年半。ああ、俺は生きていると、初めて実感を以て思ったのは、N城址の夏草の茂みの中に足を踏み入れ、そこを歩いている時だった。往年のつわ者どもの夢が、大きい夢も、小さい夢も、一つ残らず、みな、生きている俺にしがみついて来たからだ。井上靖の最晩年の詩集「星蘭干」1990年半袖のセーラー服が眩しい 薔薇の季節左に曲がる線路の先には光る海がある野あざみは迷った山道で鮮やかに咲
2021年5月14日 20:53
機械―それから空と海 私が美しいと感じることができるのは これだけあの晩 彼女はそうつぶやいた花火の音が木霊していた誰もが去年と同じように 花火を見て同じように 歓声をあげているそのときに人の声と雑踏から逃れるように川辺に向かった暗い川面にはせり出した樹が影を落としていた火の玉が一つ 樹の周りを 飛び回り昔 ここであったという 戦いが連想された鉄
2021年5月12日 19:20
1989年4月16日川崎球場は異様な緊張に包まれていた地元ロッテオリオンズ対熱血・仰木監督率いる近鉄バッファーローズ前年の1988年10・19のパリーグ優勝をかけたダブルヘッダーの死闘の記憶あの日 球場の外では「入れろ!入れろ!」と入れない客がコールしていた。熱い熱い記憶。今日も漂うケンカに近い血ナマぐさいはっきり、いえば決闘のようなそんなビリビリの空気いつもはガラガラの川崎球場