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詩の辺り

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桜色のトンネルを

桜色のトンネルを

桜の花びらが流れてゆきます
僕の町を、君の町を

明日のことなど思いもしないで
つくしの子は伸び始め
僕らはいま確かに歩いています
桜並木のトンネルを

花びらがこぼれてゆきます
僕と君が手を繋ぐ
指と指のあいだに
ときおり風に揺れる君の髪にも

若い夫婦がベビーカーを押す
赤ちゃんの膝掛けの上にも

桜の花びら
ほろりほろり
落ちてゆきます

スニーカーの少女たちは
はしゃぎなから笑い転げ
とき

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ソロヴェツキーの石

ソロヴェツキーの石

名も無いロシア兵の
写真が壁一面に
貼られた広場では
雪の降るなか、
ひとり、ふたり、三人と
人々はどこからか集まり
それぞれに花を手向ける

広場を取り囲む護送車と
警官はメドゥーサの様な
光る眼で市民を狩り立て
人々が足早にそこを
立ち去ろうとも、

降り積もる雪のなか、
ひとり、
また、
ひとり、ふたりと
花束の行進は続き 

2月16日、

ソロヴェツキーの石
の中へ葬り去られた
男の声無

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今日の面影

今日の面影

今日という日は、その次の秒で
一瞬で壊されるのだと、
あの日の春、
日本中が思い知らされた

ドアを開けると、
そこはもう海だった
お父さん!
と家の中を
振り向くと
そこに
彼の姿は
もう無かった

逃げてください、
高台へ逃げてくださいと
町の人たちへ呼び続けた
役場の天使は
空へ流されていった

もうじき生徒たちに
手渡されるはずだった
卒業証書は金庫に
保管されたまま
海の底へ沈み

総合

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大晦日の星空と干し柿と

大晦日の星空と干し柿と

映画館の帰り道 
お兄ちゃんが
八百屋さんで
干し柿を買ってくれた

粉雪がかかったような
干し柿は甘く噛みごたえがあり
空いたおなかがほんの少し満たされる

冬の夜空の星くずたちを数えながら
干し柿を食べる帰り道
お兄ちゃんが、不意に言った
「今度は喫茶店で昆布茶を飲もう」

昆布茶?
と目を丸くする私に
「おまえは無理するな、
オレンジジュースでいいよ」
と、兄は笑った

ふたりの白い息は

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マントを編む鎖の少女たち

マントを編む鎖の少女たち

凍てつく瞳で
鎖に繋がれた少女たちが
今日もマントを編んでいる
けれどもそれは自分たちの為の
マントではなく遠い異国に住む
人々のためのもので

その異国の
彼らには温かい食事もあり
柔らかな毛布もある
子供らは学校や塾にも行き
ピアノを習いサッカーもする  
けれど、それとて、
幸せとは限らない

愛されていますか
誰かを愛していますか
ちゃんと守られていますか
生きているだけで許される世界が

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フェリーと桜とあの人と

フェリーと桜とあの人と

今日はあの人の旅立ちの日です
晴れたこの高台からは
海がよく見えます

もうすぐ
あの人を乗せたフェリーも
ここを通るでしょう

桜も今日までは咲いています

私の頭の上で
桜の花びらが
あの人に
手を振ってくれるかな

フェリーは
一瞬だけ
高台に近づいて
また、 
遠く離れてゆきます

大好きだった、
あの人の横顔を
この胸に刻んで 
#フェリー #高台の桜 #サヨナラは言わない #自由詩

モノクロの瞳/藤井風さん花のオマージュ

モノクロの瞳/藤井風さん花のオマージュ

ねえ、
ボクが死んだら
キミ、笑ってよ
今日というこの、
おめでたい日にさ

何を生きて
何を夢みて
誰を愛した?

モノクロ写真のキミは
耳に光るピアスをして
ふふっと笑い、
あの日のキミの
耳たぶは
オレンジの光りに透けて
とてもキレイだったよね

黒い車にキミを
乗せて走るよ
後ろの荷台に
溢れるような花束で
キミを抱きしめて
遠い砂漠まで

たったひとつの
キミは光りで
ボクは影だった

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約束の地

約束の地

 街に撃ち捨てられた
    遺体のあいだを、
      ただ、
  ジグザグに歩いてゆきました

もし、
  それらの中にあなたを
     見つけても、
       私の瞳は、きっと
それを信じない

 数秒後には
 バラバラに
さ れる かもしれない
自分の細胞を掻き集め
何度も転びかけては
瓦礫の山を
超えて
ゆく

星の数だけある愛は

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