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散文の仲間

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ジブラルタル峻が綴る、理性や科学の外側のテクスト。
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2024年2月の記事一覧

創作:さよなら現代詩

創作:さよなら現代詩

 紅い花が咲くか咲かないかの瀬戸際で、溜息の色だけで束ねたコサージュを作ります。その時、王朝が断絶した音が鳴り響き、ワオキツネザルが急にしおらしくなります。
 無差別なトレンチ予備校のプラズマ先生は、三世紀前の作法で、コヒーレントな錯体を量産していました。そうですね。木登りをするリャマがかなり高い位置で編み物をします。
 そこを横切る北極星はオリオン座からのグリーティングカードを懐郷病の類だとみな

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創作:足りない紫

創作:足りない紫

 胸から取り出した地図を軽く剪定して庭に配置します。
 円盤状の雑音とひな飾りを同象限で眠らせて、分子間力の作用に委ねます。逆さまになった果実はやがて飲み干されると予測でき、ハンマーは少しだけ揺れます。

 岩盤浴に行き、束の間のエーテル体験の後に、ぶっきらぼうなレアチーズケーキをおかわりするのでした。よく焙煎された黒を対置して。

 ビロード戦隊のピンクはブルーに恋焦がれ、最終回の2話前で大博打

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創作:なべちゃんのハマっているゲーム

創作:なべちゃんのハマっているゲーム

 揺れ動く2つのランドセルが夕日をはじいている。

「最近何にハマってる?」
 「ゲーム、かな」
「へー、なべちゃんってゲームするんだ」
 「意外?」
「うん。全然しないタイプだと思ってたよ。で、何やってるの?」
 「ゲームだよ」
「だーかーらー、何のゲームかってこと」
 「ゲームって言ったらゲームだよ」
「いじわる! 教えてくれてもいいじゃん!」
 「いや … … いじわるとかそういうのじゃなく

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創作:フルーツパフェ・ジャンケン・ラプソディー

創作:フルーツパフェ・ジャンケン・ラプソディー

 フルーツパフェを観ました。どのフルーツが、あるいはどのスイーツが好みだろう?
「どれも好き」
 それは素顔の上で響き渡るファンファーレの答えでした。

 イソフラボンの絶対値と生類憐みの令の近似値を算出して、ジャンケンにおける第四の手を繰り出します。
 その手は、グーにもチョキにもそしてパーにも勝つことはありません。なぜなら戦いは発生しなかったのですから。

 第四の手の到来は、真のファンファー

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創作:カゲロウの成虫に口はありません

創作:カゲロウの成虫に口はありません

 カゲロウの成虫に口はありません。そうですね。捕食しないのですね。だから口は要らない。そうやってコヒーレントな波形を老舗デパートの包装紙に包みつつ歌います。
 メロディーは例外なく100パーセント可食部である。そう言っていたあの人はどこか遠くの国へ行ってしまいました。そのことと、人類の起こりをハンガーラックにかけてレオロジーを測定してばかりの日々です。

 常に既に、散らすこととしての記述を通して

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創作:彼の書き物

創作:彼の書き物

 彼は一旦視線を窓外に移した。3秒間静止した後、更に筆を進めていた。

小説:ダンプカーはマシュマロと同一、を含む言葉の塊(433文字)

小説:ダンプカーはマシュマロと同一、を含む言葉の塊(433文字)

 輪投げをして、ベーカリーの香りを手に入れる。それをクリアファイルに収め、ジュラルミンケースに格納する。

 ダンプカーはマシュマロと同一だから、常に既にきりたんぽの内角の和に収束する。指数関数的に昼寝をする。
 ハキリアリの生態と究極ハリキリスタジアムの出荷数を足し合わせ、60進法で微分する。
 その時、祈祷する内容はグルタミン酸ナトリウムのオブジェだった。遠近法とコートジボワールの風をクイック

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小説:ミートソースの待ち伏せ、を含む言葉の塊(321文字)

小説:ミートソースの待ち伏せ、を含む言葉の塊(321文字)

 グルテンフリーの脛当てを餃子の香りに潜らせる。ミートソースの待ち伏せに博覧強記を送り込む。ビート板の歯形にヴォイニッチ手稿を見出す。
 それらは全てカスタードクリーム症候群の営為だった。
 まだ成立しない言説の尻尾を掴み、運転再開後にバックギャモンを施す。
 まだ完成しない完成体の肋骨を優しく撫でて、深緑と淫するのだ。
 情熱的なオーロラの切り外しに、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシを

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