見出し画像

創作:なべちゃんのハマっているゲーム

 揺れ動く2つのランドセルが夕日をはじいている。

「最近何にハマってる?」
 「ゲーム、かな」
「へー、なべちゃんってゲームするんだ」
 「意外?」
「うん。全然しないタイプだと思ってたよ。で、何やってるの?」
 「ゲームだよ」
「だーかーらー、何のゲームかってこと」
 「ゲームって言ったらゲームだよ」
「いじわる! 教えてくれてもいいじゃん!」
 「いや … … いじわるとかそういうのじゃなくて」
「じゃあ、ジャンルだけでも教えてよ」
 「ジャンル? 何だろう? 考えたことないなあ」
「ああ、“その他・ノンジャンル”みたいなやつだ」
 「うーん。何ていうか、アクションもあるし、シミュレーションでもあるし、ロールプレイングみたいところもあるし、いろいろ」
「そうか、ミニゲーム集? そういう感じなんだ。じゃあ面白いところは?」
 「うーん。面白い? 興味深い? 受け取り方次第かもしれないな」
「そっか。それじゃあ難易度は?」
 「割と難しい、と思う。っていうか、けっこうその設定みたいなのも自由かな。目的だって基本的には自分で決めるし」
「へえ~。面白そう。クリアできない?」
 「そんなことないよ。クリアだけなら誰でもできる。ただ、たいていの人はクリアを目指してやってるわけじゃないと思うな」
「ほー。益々面白そうだ。エンディングとかどんな感じなんだろ」
 「分からない」
「え、ネットに情報とか出てないの?」
 「うさんくさいのばっかり。河とか花畑とか。僕はそういうの無いと思ってる。まあ本当のことは確かめようがないからな。ほら、だって、クリアしちゃった人は『こっち』に戻ってこれない設定になってるから」
「ん!? あ! そのゲームってまさか?」
 「そう、そのまさか、だよ」
「俺もやってる。なるほど確かにな」
 「このゲーム、これからどうなるんだろうな」

 二人は顔を見合わせた。
 曇りがちだったなべちゃんの顔が晴れ渡った。

いつもどうもありがとうございます。