見出し画像

創作:カゲロウの成虫に口はありません

 カゲロウの成虫に口はありません。そうですね。捕食しないのですね。だから口は要らない。そうやってコヒーレントな波形を老舗デパートの包装紙に包みつつ歌います。
 メロディーは例外なく100パーセント可食部である。そう言っていたあの人はどこか遠くの国へ行ってしまいました。そのことと、人類の起こりをハンガーラックにかけてレオロジーを測定してばかりの日々です。

 常に既に、散らすこととしての記述を通してやっているのは動物を動物園の外へ解き放つという営みなんですよ。朝の光という誘惑の首飾りは水平線と親交を深めます。複屈折はこの場合ガラスケースに収まらない助け方で、怒りの小舟の物量は変曲点を通り越していました。

 ヘーゲル的な考え方ですが、動物が動物園の外に出ることで、動物が本来の野生に帰ります。
 それを経て、再び捕まえるのです。そうですね。動物園に戻す、という調子です。

 つまり、一旦退けて、そのあとで引き戻す。
 アウトからのイン。アウト経由のイン。アウトあってのインです。あるところのものでなくあらぬところのもの、がまた背中を押します。そういう営為をやっているだけなんですね。涙で描いたまだ見ぬ美人画。

 そこまで編んだ後、彼はコンビニエンスストアで意味のないものを買った。

いつもどうもありがとうございます。