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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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2021年1月の記事一覧

トンカツとせり、玉子とじが踊る、創意工夫の妙。

トンカツとせり、玉子とじが踊る、創意工夫の妙。

「和食家 駿」2021年1月19日(火)

雪が意思を剥奪する。
しかも、それは激しく鋭い。
地下街を歩いていても、手足の先から震え上がるほどの寒さが突き上げてきた。
それに反して、食欲は止めどもなく歩を進ませた。
暴風雪と食欲の葛藤の末に、ある格言を思い出した。
“危険を冒せ。人生はすべてチャンスだ”
アメリカの作家デール・カーネギーが背中を押した。

最近、札幌駅北口エリアに惹きつけられる自分

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真冬のすすきのに吹き荒ぶ辛麺の熱風。

「札幌らーめん 一門」2021年1月16日(土)

札幌駅から、大通エリアへ。
その人の流れは首を締めつけるように閉ざしてゆく。
そして、夜の完膚なきまでの寒さは街の気配を打ち消し続けた。
この気配は1年も続くと精神の強壮は確実に奪われ、もはや老いたデカダンスの腐臭さえ漂っているようだ。

すすきのの中心を貫く駅前通りの青白い街灯が、閑散とした歩道を虚しく照らす。
静かな断末魔のため息を放つこの街

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中華と店名が錯誤する、小籠包の放熱。

中華と店名が錯誤する、小籠包の放熱。

「餃子・小籠包 富士山」2021年1月16日(土)

音もたてずに降りしきる激しい雪は、札幌市民を否応もなく地下街へと導いてゆく。
賑わいのないすすきのから大通、そして札幌駅へ向かうほどに、どこからともなく徐々に人々が溢れ、交錯し、夕刻の地下街を彩る。
その長い地下通路も、札幌駅北口の最北端にまで辿り着くと、人の影は消えて濡れた靴音の反響が寂しげに谺する。
地上に上がると、再び猛吹雪が立ちはだかっ

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すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

「おでん処 わんらうんど」2021年1月11日(月・祝)

もしも、この寒さに頷くとすれば、
体も心もとろけるような温もりを欲する。
もしも、この空腹が満たされるならば、
染み入るような食と酒を求める。

その願いと期待に反して、街のネオンの数は乏しく闇に支配されつつあった。
歩いても歩いても、シャッターで閉ざされたおどろおどろしい空漠しかなかった。
妥協と諦念の只中に揺れ動く空腹。
そこにどこか

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うどん不毛の地に迸る、讃岐カレーうどんの弾力。

うどん不毛の地に迸る、讃岐カレーうどんの弾力。

「鉄板居酒屋とんぼ食堂」2021年1月12日(火)

連休後の瑣末で陳腐化した手続、形骸化した会議後の沈鬱。
生産性向上とは名ばかりの午前の喪失…

“生きるために食べるべきで、食べるために生きてはならない”
ギリシアの哲人ソクラテスのテーゼに立ち返り、昼の頂きに盲目的に飛び出した。

盲目は、しばしば後悔をもたらす。
地下に潜ってもその寒さは尋常ではなかった。
それを手がかりにして、温もり溢れる

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シベリアからインドネシアへのスープカレー逃避行。

シベリアからインドネシアへのスープカレー逃避行。

「ラマイ 札幌中央店」2021年1月9日(土)

決まって休日の夕刻に訪れる空腹は、身近な旅へといざなう。
その足取りはどこか不確かで、寄る辺なく頼りない。
薄気味の悪い街中の静寂、
足底から下半身、そして全身を覆う冷たさ。
北国の極寒は、シベリア抑留の捕虜の心境を想った。
まさかシベリアへの旅を目指したわけでもなかろうに。

寒さによる麻痺に耐えて歩いても、これといった店に出会えない。
気がつく

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白く染まる世界の中で、北の幸に心踊る。

白く染まる世界の中で、北の幸に心踊る。

「郷土料理 こふじ」2021年1月8日(金)

白い山々の稜線の向こう側に、清透な冬の空が果てしなく広がっていた。

そこに何かを託するように夢を見た。
天と地を分かつ場所へ、風のように、雲のように、幸福を連れ立って旅立つボヘミアンのように。

行き交う車が踏み固める雪は、時折白い砂塵のように宙を舞う。
それは光を浴びると天使のような輝きを放つも、身を切るような冷酷を刻んだ。
何故、外を歩いている

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淫猥としたすすきのの路地裏に潜む、タイ料理への旅路。

淫猥としたすすきのの路地裏に潜む、タイ料理への旅路。

「タイ料理とお酒 タタヤン」2020年1月6日(水)

移動制限はおそらく今後も続くことだろう。
それは数ヶ月かも知れないし、数年かも知れない。
もはや過去に戻ることはないという覚悟を持って、
【外食戦略2021】を構築しなければならない。
でなければ、少なからず近未来に希望を見いだせないのだから。
【外食戦略2021】テーマ1.
近隣の未知なる美味の開拓と既知の深耕。

【外食戦略2021】テー

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すすきのの灯火が猛吹雪で白む、ちゃんぽんの誘引。

すすきのの灯火が猛吹雪で白む、ちゃんぽんの誘引。

「ちゃんぽん一鶴すすきの店」2020年12月19日(土)

この日、すべては成り行き任せになってしまった。
確かに、地方を列車で巡る美味の旅の予期せぬ中止によって、身近な場所で新たな発見ももたらしたのも事実である。
日本酒と寿司を巡る小さな冒険もそろそろ終焉の頃合いであった。
すると、雪が猛然と襲いかかって来た、何かを挑発するように。
腹元にはまだ余裕があった。
問題は、この吹雪下の中で、彷徨うこ

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札幌都心に潜む、角打ちの洞窟。

札幌都心に潜む、角打ちの洞窟。

「鮨角打ち・裏酒商たかの」2020年12月19日(土)

未知なる「澄川」駅から、既知なる「大通」駅へ。
来慣れたエリアへの到着は良しとしても、外は強風で舞う雪が視界を閉ざした。
それは殺意を抱いているとさえ思われる寒さだ。
その中で目指した店は、小樽で堪能した角打ちの支店である。
が、地図上では確実に到着しているのに、店が見当たらない。
しかも来慣れたビルだというのに、その存在すら知悉していない

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