見出し画像

淫猥としたすすきのの路地裏に潜む、タイ料理への旅路。

「タイ料理とお酒 タタヤン」2020年1月6日(水)

移動制限はおそらく今後も続くことだろう。
それは数ヶ月かも知れないし、数年かも知れない。
もはや過去に戻ることはないという覚悟を持って、
【外食戦略2021】を構築しなければならない。
でなければ、少なからず近未来に希望を見いだせないのだから。
【外食戦略2021】テーマ1.
近隣の未知なる美味の開拓と既知の深耕。

【外食戦略2021】テーマ2.
足の届く場における日本国内や海外の料理の攻略。

そうしてこの夜、【外食戦略2021】テーマ2を攻略すべく戦友とともに、タイ料理店を目指した。

すすきのの中でも淫猥な空気を放つ路地裏で、妖艶としたネオンの煌めきが雪に反射したその通りに足を踏み入れることに戸惑いを覚えた。
しかも、全くと言っていいほど無人で、ネオンの虚しさが心を陰鬱とさせた。
その妖艶な空気と相俟ってタイの国旗と青ざめたネオンに、この店の存在を確認した。
急な階段を慎重に昇る。


扉の中にタイの熱狂の不在は、あらかじめ想像はしていたものの、悲しいほどに客はいない。
いかんせん寒過ぎるのだが、ビールともに【外食戦略2021】テーマ2の攻略を企てた。
次々とタイ料理の定番やこの店のおすすめ料理を探り、注文してゆく。
すると、パクチーの載った玉子料理がお通しとして運ばれてきた。


パクチーの香りが残る口元にタイの空気を感じた。
どうやらスタッフ1名による運営らしく、それはもはや定番化してゆくほどの虚しい孤独感を想像させる。

ともあれ、程よいタイミングで次々と注文した料理が運ばれて来る。
「空芯菜炒め」の濃厚な味付けは、シンハービールを呼び寄せた。


そこに「カノムパンナークン」というエスニックな香りを纏った海老トースト、それを追うように「トムヤムクン」が訪れた。


その熱量は凍えた体を温めるけれど、本場のそれよりはどこか温厚に思われた。
食べ進めるごとに、足元から冷気を感じた。
極寒の中での換気は、店にとっても客にとっても、見えぬ敵との持久戦と言える。
「ピックガイトート」というスパイシーチキンは、肉付きがさほどなく、辛味より旨味が先行していて、どこか日本人好みに工夫された感があるようだ。


タイ焼酎のロックによって凍えそう体を温め、「春巻き」を食した。
その味わいは至って優しげでシンプルであった。

そのどれもが品位に満ちた美味で、おそらく辛さに弱い者にとっては程よいのだろう。
だが望んでいたものは、あのタイで体感した、汗の滴り落ちるような狂おしいほどの灼熱なのだ。
会計を済ませ、外に出ようとすると、
『階段に気をつけてください』
スタッフが外まで出て、律儀に見送りをしてくれた。
【外食戦略2021】テーマ2の攻略は、まだ始まったばかりだ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?