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小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 17 「他人の書いたものを読み、解釈し、批判するときの作法」といわゆる「キャンセル・カルチャー」「ハッシュタグ・アクティビズム」について
ここまで、私が小山田さんの問題について考え、判断する際に従っている原則について説明し、その正当化を試みてきました。それは小山田さんのインタビューやHPに発表した文章を読んで、私と異なる見解を持つ人に、自分の読み、解釈を納得していただくためでした。しかし書き進めているうちに、これまで論じてきたことは、それとは別の問題との関連でも意義があるのではないかと思うようになりました。それは、いわゆる「キャンセル・カルチャー」や「ハッシュタグ・アクティビズム」の問題です。 「キャンセル・
小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 16 「他人の書いたものを読み、解釈し、批判するときの作法」、原則②について:小山田さんのケースでの正当化
これまでは、日常的的な倫理観、道徳観、宗教や倫理学の考え方、現代社会のルールに訴えて原則②を正当化しましたが、それとは別に、小山田さんのケースとより密接にかかわるある重大な理由を用いて正当化することもできます。その理由とは、強い力、権力を行使する主体は、その力の強さを自覚的に制約し、制限する必要がある、ということです。 ツイッターのようなSNSで誰かが批判されるときには、多対一の関係になり、批判する側が圧倒的に強く、批判される側が圧倒的に弱いという力関係になります。ツイート
小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 15 「他人の書いたものを読み、解釈し、批判するときの作法」、原則②について:善きことをすることよりも、悪しき行いを避けることを優先すべき
なぜこの原則に従うべきなのか、疑問に思う方も多いでしょう。小山田さんの口から否定される前は、じっさいにそうしたいじめがあったとする根拠もないわけではなかった。ただ確定的ではない、怪しい、ということだったのです。ですから、本当はあったのかもしれなかった。排泄物を食べさせるといういじめが本当はあったとき、それを批判の根拠から外すことは、大きな悪を見逃すことになるでしょう。これを批判の根拠の一つに含めるならば、なされた大きな悪に対して正しい批判が行われることになり、それは一つの善き
小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 14 「他人の書いたものを読み、解釈し、批判するときの作法」、原則②「批判対象とする他者について推測するときは、複数の可能性の中から、その他者にとってもっとも都合の良い可能性を選択せよ」
ここまで、「他者の書いたものを読み、解釈する」ときに従うべき原則について説明してきました。しかしこの原則だけでは、どのように他者を批判するべきかを決めるのに十分ではありません。なぜなら、以上の解釈の原則に従って読んでいったとしても確定しがたい点が残ることがありうるからです。 たとえば小山田さん自身が説明する以前には、排泄物を食べさせるといういじめが本当にあったのか、そして小山田さんがそれに積極的に加担していたのかが判然としませんでした。ROJではそう語られていたわけですが、
小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 13 「他人の書いたものを読み、解釈し、批判するときの作法」、原則①について:なぜこのような手順で解釈するべきなのか
私が①の原則に基づく以上の手順を身につけたのは、現代の英語圏の哲学、特に言語哲学や心の哲学を研究する人たちの間でのやり取りを通じてのことです。これらの分野についてご存知の方は、「意味の全体論」や「命題態度についての解釈主義」といった話題と、以上の手順の共通性に気づかれるのではないでしょうか。「寛容(チャリティ)の原則」を連想されるかもしれません。研究会などで、他人の議論にたいしてまずい批判をする人に対して、私たちの仲間内では「もっとチャリティを働かせて解釈しなきゃ」などと言い
小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 11 2.ROJとQJの両方を読んでいるが、それらの読み方が私とは異なる人について
週刊文春のインタビュー記事や謝罪文を読んでも、それらに納得しないという人の中には、もちろん『ロッキング・オン・ジャパン』(以下ROJと略)や『クイック・ジャパン』(以下QJと略)を読んでいる人もいるでしょう。そうした人と私との違いは、二つの雑誌記事における発言や文春のインタビュー、謝罪文を読むときの読み方が私と異なり、それらから過去のいじめに関して、私が受け取ったのとは異なる状況を思い描いていることにあるのかもしれません。そこで、私がこれらのテキストをどのように読み、どのよう
小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 10. ROJやQJの記事を読んでおらず、新聞やテレビ、ネットニュースなどでのみこの話題に触れている人、そしてメディアの責任について
1. ROJやQJの記事を読んでおらず、新聞やテレビ、ネットニュースなどでのみこの話題に触れた方が、小山田さんのインタビューや謝罪文を読んでも、それらの内容に説得力を感じない可能性があります。 今年の7月に、テレビのワイドショーでどのように報じられていたかは今から確認できないのですが、少なくともネット上で流布していた言説、そして毎日新聞や日刊スポーツ、モーリー・ロバートソンさんによる英語ツイートなどには問題がありました。ネット上では、ROJとQJの記述を無批判に並列し、それ