小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 番外 こべにさんの注目すべき文章

ずいぶん投稿が滞ってしまいました。下書きはたまる一方なのですが、アップする前にきちんと推敲しなければ、と思っているうちに8月が終わってしまいました。

 私がぼやぼやしているうちに、ブロガーのこべにさんが、小山田さんの問題について注目すべき文章を発表されました。今回はこの文章について、読んだ感想を書いておきたいと思います。

 こべにさんの文章:「kobeniの日記 小山田圭吾氏いじめ記事に関する検証 その1. 拡散までの経緯、初期報道の問題点」

https://www.kobeniblog.com/entry/2021/08/26/223559

タイトルを踏まえると、この文章の主たる目的は、ROJとQJでの小山田さんが語っていたいじめに関する話がどのような仕方でゆがめられ、どのようなルートで拡散していったのかを跡づけることにあると思われます。そして私には、こべにさんはその目的を見事に達成されているように思えました。
また、文章の中に織り込まれたツイートのスクリーンショットやリンクを辿ることにより、読者みずからこべにさんが依拠したデータを確認できるようにしていることも、批判対象に対する公平さを保証するだけでなく、文章に強い説得力を与えていると言ってよいでしょう。

 私のこの感想が正しいか否かは、みなさん自ら読んで確かめていただくとして、こべにさんの記事を読むときに押さえておくべき論点として、次の二つをあげておきましょう。

 ①この文章の主たる目的はあくまでも「いじめ記事」に関する検証であり、小山田さんがどのようないじめをしたのかという過去の事実に関する検証ではありません。原典記事に依拠して言えることと言えるはずのないことを区別し、言えるはずがないことが拡散されてしまったことを指摘しようとするものです。もちろんそのために必要な作業の一環として、たとえばわたしが前回までのnoteで論じたROJとQJの食い違いなどもこべにさんは指摘します。しかし、「小山田さんはこういういじめをしたと考えられる」と主張することは、少なくとも「その1」という番号が振られた今回の文章の目的ではありません。
 これに関連して、より重要なことは、この記事の中でこべにさんは小山田さんがいじめをしたという事実を否定していないことです。「このようないじめがあった」とする報道やツイートを批判的に検討することは、「いじめがなかった」と主張することとイコールではありません。こべにさんが今回の文章でやっているのは、報道やツイートの批判的検証であって、いじめの事実の否定ではないのです。したがって、たとえば「小山田自身が謝罪文でいじめをした事実を認めているではないか」と主張しても、こべにさんの文章に対する批判にはなりません。

 ②こべにさんは、ROJとQJの記事の中で語られている内容が、どのように歪み、どのように拡散したのかをまとめているのであり、原典記事での小山田さんの語り方や記事のまとめ方についての道徳的評価を行おうとはしていません。これらの記事やその中での小山田さんの語り方に問題がないとか、差別的であるなどの問題はないなどと、こべにさんは主張していないことに注意するべきでしょう。したがって、「ROJやQJでの小山田の発言が差別的であることは、様々な団体や識者によって指摘されていることではないか」と主張しても、こべにさんの文章に対する批判にはなりません。

 小山田さんに対するこべにさんの愛情は隠すべくもなく明らかですが、きわめて慎重に、今のところ正当になすことが可能な事柄に主張は制限されています。モーリー・ロバートソンさんが紹介していた言い方を借用するなら、「エクストリーム擁護」などしていないのです。

 こべにさんは説得力のある文章で重要な問題提起を行っているのですが、残念ながら、文中で取り上げられた人物や組織のうち、こべにさんに何らかの応答をしているのは、「孤立無援のブログ」の執筆者、電八郎さんだけです。

「孤立無援のブログ デマを流したのは誰か? こべに氏に抗議する」
https://koritsumuen.hatenablog.com/entry/2021/08/30/154034

応答しているだけ、毎日新聞やモーリー・ロバートソンさんよりはるかにましだと言えればよいのですが、内容はまるで的外れなことばかりで、正直失望しました。
先に、こべにさんの文章を読むときの注意点を二点あげましたが、それらに留意するなら、「真偽不明の情報源」および「小山田圭吾の謝罪文」と題された節で電八郎さんが述べていることが、こべにさんの文章に対する批判として成立していないことは明白です。
 また、「こべに氏によるフェイクニュース」や「作者の意図」と題された節で述べられていることにも、私はまったく説得力を感じませんでした。電八郎さんは、小山田さんがいじめを「やった」と地の文で書いていないのかもしれません。しかし小山田さんが自分の行為について語っていることを留保ぬきで引用すれば、いじめをした事実があったと読者が思うのは当然です。事実、「孤立無援のブログ」を真に受けて「はるみ」さんがツイートをし、原典記事に依拠してすら小山田さんが「やった」とは言えないいじめをやったと多くの人が信じたのです。この点について、電八郎さんは「そう解釈した人が愚かなのだ」と言って切って捨てるのかもしれませんが、私はちゃんと責任を感じるべきだと思います。
 少なくともきわめて公的性格の強い媒体である毎日新聞には、もっとまともな応答を期待しています。

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