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読後感を保証するコラム

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ハッピーエンド至上主義者による、絶対上向きにおわる話。後味だいじ。いちばんだいじ。
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#読書好きな人と繋がりたい

へこんだときにおすすめの本。スパダリにしか見えない空海のイケメンっぷり。夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。

へこんだときにおすすめの本。スパダリにしか見えない空海のイケメンっぷり。夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。

大学のころに作った、「おちこんだときに読む本リスト」が、発掘された。
しかも、せっせとコピーをとっていた。
殊勝なことに、コピー用紙をまとめて、手とじ本にしてあった。
失敗したホチキスの穴があいている。
手折りしたところに、手あかがにじんでいる。
いじましい。
しんみりきて、思わず手にとった。

会話文からはじまっている。
空海と、橘逸勢が話している。
ときは、平安時代、ところは、唐。
当時、世界

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口紅ひとつ

口紅ひとつ

うちは自営業なので、おそうじのおばちゃんがいた。
高校生のころだったか、あたらしくきたおばちゃんは、ほぼ初対面で、「離婚したの。熟年離婚。いま流行りの」という。
それまで専業主婦で、子はなく、自分の葬式費用くらいはためたくて、きたらしい。
 
自分の葬式費用!
十六やそこらの高校生には、なかなかパンチのあるひとことだった。
 
はじめての給料日らしかった。
おばちゃんは、給料袋からさっと千円札を二

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あたしメリーさん。すこし足が悪いの。リアルにあった怖い話。引越したいです。

あたしメリーさん。すこし足が悪いの。リアルにあった怖い話。引越したいです。

みなさまにご相談があります。

こないだ、夜23時ごろ、いい感じにほろ酔い加減で帰路についておりました。
まだまだ客引きのいる最寄り駅で降りて、若いミニスカ女性も余裕であるいているにぎやかな大通りを北上して、一本、奥に入ります。
そこからはぐっと人通りが減るけれど、おかげで窓を全開にしていても車の音ひとつしないすばらしい立地の我が家へ向かっておりました。

そこでなにげなく電信柱へ目をやると、酔い

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取引先が夜逃げをした、という実話に、この平成末期にふつうに遭遇した。

取引先が夜逃げをした、という実話に、この平成末期にふつうに遭遇した。

どうやら逃げたらしい、と、電話口がいった。
びっくりして聞き返した。
逃げたって?
2日に1回、うちの会社にきていた取引先さんが、行方不明になった。どの電話にかけても「現在使われておりません」になる。同業他社さんに聞くと、どうやら破綻したらしい。

いまから思えば、予兆はあった。
ここ2週間くらい、連絡なくこないことがあった。そんなことは、いままで一度だってなかった。かならず、つぎに来る日をつたえ

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謎は謎のままでずっとずっと魅力的だった。切り裂きジャックとアナスタシアとカスパー・ハウザー。

謎は謎のままでずっとずっと魅力的だった。切り裂きジャックとアナスタシアとカスパー・ハウザー。

切り裂きジャックが判明したと、メディア記事がでていた。
(ただし信憑性は不明)

ときは、19世紀、蒸気と石炭のロンドン。
既存の富はかたむき、あらたに成金があふれ、クジャクのように社交界になだれこんでいた。
ねずみのように貧しい孤児たちは、煤だらけで炭砿にたむろする。
世紀末ロンドンの貧民街に、連続殺人がおこる。
その身を散らしていくのは、街角にたつ売春婦たち。
えぐられた内臓、のこされた血文字

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新時代にいきる女性たちへ。智恵子抄、高村智恵子の悲劇のあとにも残り続けるもの。

新時代にいきる女性たちへ。智恵子抄、高村智恵子の悲劇のあとにも残り続けるもの。

みどりの黒板いっぱいに、まるっこい字で、先生が書いている。
その日が、4月のはじめての授業だった。
中学2年生相手に、先生は好きなことばを書いている。
20代後半くらいにみえた。
よく通る声の、華奢な国語教師だった。
黒いショートカットに、くっきり二重の眼は、くろぐろとしていた。

文豪のことを、略して呼んだ。
鴎外、太宰、漱石、賢治。
中学2年生には衝撃だった。
ともだちのように、見知らぬ人を呼

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