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ひとり旅の記録

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これまで行った、海外でのひとり旅の記録を中心に書きます。
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#エッセイ

旅のおわりと、或る夜の出来事

旅のおわりと、或る夜の出来事

7年前の9月、まだぎりぎり20代だった頃の私は、ロンドンをたった1人で旅をしていた。

何かどうしようもなく行き詰まった時、必ず一人でどこかの国へ旅をするのが好きだった。

私が選ぶ街は、きまって都会ばかりだ。

たった1人で全く違う言語を使う見知らぬ土地にいる私に、都市は寛容だ。

ただひたすら街を歩き、どこかのカフェでコーヒーをのみながらそこに住む人を観察するだけの時間が、私は何よりも好きだ。

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アメリカ、遠い夏の日の記憶

アメリカ、遠い夏の日の記憶

13歳の夏、アメリカへホームステイに行く数ヶ月前に、私はホストファミリー宛に手紙を書いた。

もう20年以上前の出来事だ。

「私はレオナルドディカプリオが好きです。タイタニックも好きですが、ボーイズ・ライフという映画が特に好きです。ロバートデニーロもいいですね。牛乳は大嫌いです。夏に会うのを楽しみにしています。」

学校から、好きなものと嫌いなものをあらかじめ書いておくといいと、言われていたので

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ポートランドという街の記憶 【アメリカ旅日記】

ポートランドという街の記憶 【アメリカ旅日記】

32歳の春、恋人と別れたばかりの私は二度目のポートランドをひとりで旅をしたことがある。

付き合い始めてちょうど2年の記念日に、プロポーズされた。
その時になってはじめて、私には「この人と一緒に暮らすイメージが全くなかった」ということに気がついてしまった。私はその1週間後に、彼に別れを告げた。
彼はありえないというようなことを何度も言って、私を色々な言葉で罵った。当たり前だ。もうすでに、心は別のど

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ニューヨークのほろ苦い思い出

ニューヨークのほろ苦い思い出

2012年の秋。私は1人、上野駅で右往左往していた。
成田空港に向かう途中、数年ぶりに使うことになったスーツケースが、上野駅の改札を下りた瞬間に壊れたからだ。すぐさま兄に電話をし、大急ぎで来てもらった。壊れた原因はわからないが、多分靴と服を入れすぎたせいだ。
私は近くのヨドバシカメラで頑丈そうな新しいスーツケースを購入し、壊れた方の処分を兄に託して、大慌てで成田空港行きの電車に乗った。

こんな風

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20代の最後にロンドンに飛び立ったときのこと

20代の最後にロンドンに飛び立ったときのこと

今から6年前、残り数ヶ月で30歳になろうとしていた29の私は、20代の最後をこのまま平凡に終わらせたくないという衝動に駆られて、一人でロンドンに飛び立った。といっても、大それたことではない。ただの一人旅である。

20代は色々迷走していた。大学を卒業してからすぐに洋服関係の仕事をしたけれど、物足りなくて1年でやめた。それからずっと都内でマーケティングやウェブ関係の仕事をしていたが、社会(というか会

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