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藤井満
2024年9月2日 15:34
1991年につくられた27分の短編。もとは宗教団体の依頼で撮影したものだという。 ヒマラヤの氷の峰から生まれる1滴の水がすこしずつ集まり、冷たい渓流となり、大河へとそだつ。インドの川では水を浴びて祈り、バリの棚田でも水の女神にたいして祈る。人々は、水の流れを神や仏の化身とかんがえてきたのだ。そんな風景を抑制されたナレーションとともにたんたんとうつす。 でもそのうち、違和感をおぼえてきた。
2023年9月19日 09:20
西国巡礼でたずねた姫路市郊外の書写山圓教寺を、「三大特別公開」にあわせて2023年9月はじめの猛暑の日、再訪した。前回気づかなかったあらたな魅力がみえてきた。松がしげる修験の山 姫路駅から路線バスでふもとまでいき、前回と同様、「東坂」という登山口へ。登山口には丸石がまつられている。山梨の丸石のように道祖神の一種だろうか。 「一丁」からはじまる丁石や地蔵さんをみながら、汗をふきふきのぼっ
2022年10月28日 13:15
「餅つかぬ里」があると聞きいた。旧大塔(おおとう)村(田辺市)の中心部から富田川の支谷を東へ3キロさかのぼった、小川という20軒ほどの集落だ。大塔宮さんへの罪 宮越明治さん(1930年生まれ)が幼いころは、正月に餅を食べず、サトイモの親芋を2日間煮こんで醬油と塩で味をつけた「ぼうり」が膳にならんだ。学校では「小川は餅もつけんくらい貧乏や」とはやされた。「小川だけ餅をつかんの、なんでや?
2022年9月6日 13:01
出雲系だが、自然信仰が色濃くのこる 夕方、下諏訪駅に下車して、諏訪大社下社を参拝した。 諏訪大社は、諏訪湖の南にある上社の本宮と前宮、湖の北側にある下社の春宮と秋宮の2社4宮で構成されている。 祭神は、出雲大社にまつられている大国主命(おおくにぬしのみこと)の子の建御名方神(たけみなかたのかみ)とその妻の八坂刀売神(やさかとめのかみ)とされ、大国主命が天照大神へ国をゆずることに反対した建御
2022年9月3日 18:49
熊野の森にころがるこけ蒸した「大地の卵」熊野古道中辺路の「雲取越え」(和歌山県)は、那智の滝のある那智大社から2日間かけて山の尾根をたどって本宮大社にむかう山道だ。江戸時代には、伊勢参りのあとに西国三十三所を歩く巡礼が、那智大社の隣の西国一番札所、青岸渡寺(せいがんとじ)からこの道をたどり、二番札所の紀三井寺(和歌山市)をめざした。 2015年秋、小雨にけぶる青岸渡寺を参拝してこの道にはいっ
2022年8月31日 23:20
「薬草」「しし鍋」……イベント列車の樽見鉄道 谷汲山華厳寺は西国三十三所最後の満願の寺である。西国の札所では最東端の岐阜県揖斐川町にある。 自動車でいくと楽だけど、最寄り駅からあるくという原則にのっとり、大阪から早朝の快速電車にのった。 大垣で気動車1両の樽見鉄道にのりかえる。 高校2年のとき、国鉄樽見線だったころにきたことがある。翌年の1984年には第3セクターになったが、住友大阪セメ
2022年8月21日 23:56
竹生島には長浜と今津と彦根から観光船がでている。 便数が多い長浜からわたることにした(往復3200円)。 9時半の船にのり、えり(小型定置網)とよばれる小型定置網の網をながめながら30分ほどで、こんもりした緑の島に近づいた。周囲は急斜面で浜はない。寺のあるところだけ船着き場ができている。 上陸して、すぐに拝観料600円を徴収される。 ちょっとのぼった右側に国宝の「唐門」がある。漆塗りの
2022年8月21日 21:49
28番成相寺は天橋立とセットだけど、できるだけふもとからあるきたい。 丹後国分寺の遺跡に府立丹後郷土資料館があるからここを出発点とした。 内海をへだてて天橋立の松林が横たわるのがのぞめる。風光明媚で、しかも人里からちかいところに国分寺はつくられたのだという。 資料館(300円)にはいくつか興味深い展示があった。 たとえば「藤織」。奈良時代からつくられ、江戸時代に木綿が普及して衰退したが
2022年8月21日 13:48
JR小浜線松尾寺駅(舞鶴市)から山に分け入る。 緑が濃くて、カナカナとうらがなしいヒグラシの声がひびき、なつかしさにいてもたってもいられなくなって、車をおりて歩くことにする。ヒグラシは愛媛の川内町の山の集落をおもいだす。谷間の廃校に星の観察にでかけてすっかり気に入ったのだ。「青葉山」という案内板がある。標高693メートル。「頂上からは高浜湾の展望」と書いてあり、2014年をおもいだした。
2022年6月17日 21:57
地域と連携しアイデアこらし3セク鉄道活性化 神戸の新開地から神戸電鉄に乗った。六甲山の北にでて、長い長い緑のトンネルを抜けると広大な盆地が広がった。終着の粟生(小野市)でおりて北条鉄道に乗り換える。 1両の気動車に、路線バスのように後ろから回数券をとって乗車する。 エンジンが起動するとブルルルと床が細かく振動する。 この響き、熊本の豊肥本線でも、のと鉄道でも、四万十川沿いの予土線でも体感
2022年6月16日 16:14
醍醐寺を守護する女神のお宮 上醍醐寺から東への山道をくだると、杉の森のなかに大規模な石垣が残っている。いったいなにがあったのだろう。 くだりきると西笠取だ。京都の市街地からひと山越えただけなのに、獣害対策の柵に囲まれた田畑が谷間に折り重なる。岩間山と上醍醐をむすぶハイカーのための案内板が要所要所にあるのがありがたい。 車道をたどって標高300メートルの峠にのぼると「清瀧宮」という広々とし
2022年6月14日 17:04
「最上の食べもの」は乳製品醍醐寺の「醍醐」は古代の乳製品のことだ。仏教の経典「大般涅槃経」では「五味の最上なるもの」として以下のように記している。「牛より乳を出し、乳より酪(らく)を出し、酪より生蘇(しょうそ)を出し、生蘇より熟酥(じゅくそ)を出し、熟酥より醍醐を出す、醍醐は最上なり。もし服する者あらば、衆病皆除く」 修行により少しずつ高度な教義を習得し「大涅槃経」という最上の境地に達す
2022年5月29日 22:49
京都駅から山陰本線の普通列車に乗った。嵯峨嵐山駅で大半の乗客がおり、トンネルとトンネルの合間に保津峡の急流を眺めていたら広々とした盆地に出た。サンガスタジアムと隣接する亀岡駅に降りた。愛敬の馬の木造の走田神社 21番の穴太寺までは3キロちょっとだ。市役所まではまちなかを歩き、京都縦貫自動車道をくぐると水田が広がった。車が通らない農道は、ウグイスやカエルの声が耳にとびこんでくる。 走田神社
2022年5月28日 08:26
西国三十三所には清水寺がふたつある。有名な京都の清水寺(16番)と、兵庫県加東市にある25番の清水寺だ。「もうひとつの清水寺」を訪ねるため里山に囲まれたJR福知山線の相野駅に降りた。5月末、黄金色の麦畑が風で波打っている。寺までは10キロほどらしい。 近くのコンビニでお茶とミニアンパンを買い、9時半に出発した。自然木と巨石、鯨の骨の鳥居 名物の黒豆や丹波焼の看板を横目に30分ほどで山に