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Music × English なエッセイ 【10】

今回の動画


執筆時点から見て、7日前に公開されたばかりの、新曲をピックアップしてみました(珍しく)。

Laugh Track 


バンド名からの連想

バンド名のザ・ナショナルって、なかなか気骨のある感じしますけどね。
曲の中身は、意外な展開でした。

パッと見、国家主義者なのかな、みたいな。
松下幸之助翁、すいません。

一歩引いてみても、コンサバティブ、保守主義者だ(ひいては愛国者?)、といいたいんでしょうかと。

そういう人たちが、例えば、キリスト教原理主義的な立場から、(無条件に)結婚は善いものだぞ、って触れ回るのは、よくある話かと思います。

他方、進歩主義的、左派やリベラルだぞという人たちは、どちらかというと、「伝統が人々を縛っているから、解放するのが進歩だ」と思っているきらいがある。

日本だと昔やりすぎて嫌われましたけども。かといって、日本の保守は、長いこと脳死していて、今や組んでるのが統一教会と創価学会ですからね…。共産主義と組まなくても、ひょっとして売国してませんか?

何が言いたいかというと、恋愛関係や夫婦関係の冷え込みっていうのは、保守主義からすると禁句だと思うんですよ。本来は、ですが。

表に出すな、身内の恥だっていうでしょ。
それを歌にするのだから、確かにタブーの禁を破るという表現の自由を行使してはいる。保守主義も進歩している?

試行錯誤や折衷の果て、左右は融合してしまっている。
政治の高所局所でも、市民生活でも、長らくそうだったはず。

そのはずが、急に劣化して分断主義みたいに左右を鮮明化する連中が現れた…。

原因の一端として、ソーシャルメディアの拡散性が、内面の白さ黒さも、地球の隅々まで可視化したからだ、という話が一定の信憑性を持って語られていますね。

社会の病理に対する解毒剤だと思ったら(例…議論や交流が活発化する触媒になるはず!って期待値)、むしろ格差や不平等、不条理を炙り出して確定した毒薬だったみたいな。

ソーシャルメディア禁止法でも通さないと、古き良き時代の人間関係とやらは、保守主義者の間にも復古しないんでしょうね。この辺から、楽曲への呼び水になります。長い。

歌詞(抜粋)

So turn on the laugh track
Everyone knows you're a wreck
You're never this quiet, your smile is cracking
You just haven’t found what you’re looking for yet

Turn on the laugh track
We'll see if it changes the scene
Maybe this is just the funniest version
Of us that we've ever been

I think our feet are gonna slip
I think our hands are gonna shake
I think our eyes are gonna cry
I think our hearts are gonna break

Maybe we'll never lighten up
Maybe this isn't gonna quit
I think it's never coming back
Maybe we've always been like this

Laugh Track
by The National

試訳

笑いトラッキングをオンにしなよ
君はボロボロだと皆わかってるぜ
君は絶対にこんな静かじゃない、微笑みも壊れてる
君はまだ、探し物を見つけていないんだぜ

笑いトラッキングをオンにしなよ
辿ることで状況が変えられるか確かめようぜ
たぶんこれって、僕ら史上一番のおバカバージョンだよ

僕らは一緒にコケたり
和解したり
共に泣いたり
胸が潰れるような思いをするものだと思う

たぶん僕らの間にともしびは二度と灯らない
でもたぶんこれは諦念でもないんだ
二度と戻らないものだが
ずっとこうやっていくんだろう

テーマの新奇性?

結論から先に言うと、新奇性を感じたのです。その理由は以下です。

けだるさとか、関係性の冷え込みのようなものは、情熱的なラブソングの対極として、いつの時代も需給がマッチすると思います。

この曲も、淡々としている雰囲気は、どこかで聴いたことがあるものです。

どこかで聴いたというと、没個性とか陳腐化ということになりそうです。

でも、人々の愛情関係(のもつれ)がそんだけ似通っているとも言いうる。これだけ個性礼賛の風潮がありながら。

他方、同じどこかで聴いたというのは、普遍性があるとも言えますよね?陳腐なまでに、どの国、どの時代にも当てはまるっていう。だから、新しくはなれない。

ただ、僕がこれまで聴いてきた楽曲(古めな…汗)の中には絶対に出てこない歌詞があって、それは新奇性あるなと。

それは、題名にもなっている、ラフトラックって表現ですね。
一瞬、笑える楽曲かと思ったのです。
動画に出てくる二人みたいに場が冷えているから。

でも、動く絵文字の集合体が出てくるんですよね…。
さながら、パックマンのゴーストたちみたいに。

それで、ああ、なるほど、正解ばっかり探し求めて、情感が全く抜け落ちた関係性なんだなと。

実際、動画の二人はずっと能面みたいです。
口元は延々と動いてるけど(苦笑)。

GPSで食べログなど、グルメサイト(アプリ)の著名店を探すみたいに、日常生活にこれだけ転がっている笑いの種を、感受しなよと。

君のセンサー、今(オンにできるのに)オフじゃないの?

スマホの設定みたいだけど、喩えが新しくて若いなと思ったんですよね。

ああ、その辿れること自体が人権としてのプライバシー侵害で、「大企業や国家による監視社会が到来するかも」という警告を発するディストピア映画よりも先に、ラブソングの題材になってしまうくらい、アメリカでは身近なんだなと。日本もそれを真似てますけど。

このアーテイストの感性は、テクノロジーの難点じゃなく、利点の方を汲み取ったんだなと…。


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締めくくりに


なぜかおもむろに公開1週間の新曲の選択、という珍しいことをしてしまいましたが、歌詞世界が重いのは変わらず(苦笑)。

ただ、アーテイストの感性には、陳腐なクリシェというにとどまらない、希望が見出せる新しさがありました。

これを機縁に、派生して他の楽曲も追ってみようと思います。


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※ 2023年12月21日追記


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