暗黒の未来スコープ②
恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第三十ニ話】
(ヒロ)
柔らかな風景が
窓から滲み出て
空にかかる雲は
心なしか微笑んでいるように見える。
そんな希望に満ちた季節が来ても。
俺は何も変わらない。
ただ目の前の問題をこなしていくだけの毎日。
課題、バイト、あとは家のこと諸々。
放課後に遊んだりすることもしないし、密接に誰かと関わることもしない。
幸せな青春なんてものを望んではいけないから。
ガラガラガラ…
チャイムが鳴り、新しい担任が入ってくる。
少々厳ついけど、割と正義感が強く、まぁまあ生徒からの信頼も厚いでお馴染みの先生だった。
ただ正義感が強いと聞くと体育会系を想像してしまうが、文化系タイプの正義感。でもそんな細かなことに関係なく、俺からしたらどのみち厄介でしかない。
「よろしくな。今年は受験もあるし大変だと思うけど、皆んなのことしっかりサポートしていくから、安心しろ」
な、と同意を求めるかのように目で挨拶をするあの人を、俺はふいっと窓に目線を移して無視をする。
あーあ。
ふと目線をやった窓の奥では
優雅に羽を広げた鳥が大きな空を駆けていた。
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