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ささやかな夕方①

第一話

(ユリ)

空が向かう華やかな緑。

美しい木々を働き出す風。

相乗効果が雅なこの世界でヒロを初めて見たのは
日が沈みかけたある夏の日だった。

先輩に誘われウクレレの体験に来た小さなスタジオ。
そのすぐ隣にあるカフェで君は働いていた。

とてもカフェの店員とは思えない無愛想な出立なのに、なぜだかここの空気感に溶け込んでる。お客さんは君の愛想の無さに慣れているのか、気にしていない様子だった。

たったそれだけの印象。

ビビッとくる感覚もうっとりする美しさも惹かれてしまう憧れもない。ただこぼれ落ちるように過ぎ去っていく私の日常の一部に、君はひっそりと存在していただけ。


あの時、恋に落ちるような事象は何もなかったのに。


いつの間にか、私は君に心を奪われていくことになる。


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