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エッセイ【トカイナカにて】

 トカイナカに住んで半年が経ちました。

 「トカイナカ」とは、都会と田舎を合わせた造語で、第○の都市などと言われる一方で、自然にも恵まれ、古い街並みや文化と共存している地域というところでしょうか。
 駅前再開発が始まったこの街に初めてやって来た時、街の中心でありながらビルが低く、人もまばらで、ビルを通りすぎて間もなく現れる路地裏の昭和感に驚きを隠せませんでした。
 
 東京に住んでいた頃は、徒歩圏で生活に必要なモノが全て揃いました。話題の店など流行りモノの新情報は、ネットよりも朝の散歩で収集する方が早かったかもしれません。

 
 東京での暮らしは私を満たしてくれていました。

 それは、洗練された新作スイーツや新しくオープンしたカフェ、良心価格のランチや割烹のディナー、流行りの髪型をいち早く施術してくれる美容室。医療も口コミでより納得できるクリニックを選択できるから。しかも車がいらない距離で散歩のついでに立ち寄れる。そんな便利さが生活満足度を上げてくれました。
 
 東京でのシティライフを手放すことはないと信じていました。

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 パートナーの都合で共にトカイナカにやって来ました。突然の出来事でした。


 早急に仕事の引き継ぎをして会社を退職し、友達には引っ越しすることを伝え、有給休暇消化中に東京で行っておくべき場所へ行き尽くしました。東京を遊び尽くして引っ越しの日を迎えました。未練はありません。


 トカイナカでの生活1ヶ月目は、長期滞在の旅行客のように過ごしました。

 休日は久々に運転する車に乗って、海沿いをドライブしてのんびりキャンプを楽しみました。
 周囲のキャンパーは地元民らしく、こだわりのオシャレな車や用品に囲まれて気のおけない仲間と思い思いの時間を過ごしていました。
「余裕のある暮らし。豊かな時間を持ってる。」

 
 幸せなことに、私はもう気付きを与えてもらったようです。

 
 少し車で走れば街へ出ることは可能ですが、近所の店や福祉の選択肢は確かに限られていますし、少し遅れて流行りモノが入ってきます。
 ただし、トカイナカの暮らしは私を満たしてくれそうと思えるようになりました。

 永住は今のところ考えていません。

 しかし、次にどこかの街へ暮らすことになった時、未練はないと思うくらいにこのトカイナカを暮らし尽くしてみようと思います。



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